花嫁の悲劇
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「少し締める」
「うん」
ギュッと帯が締まる。
「…苦しくないか?」
「大丈夫」
日が沈み、蝋燭の明かりだけが灯された部屋にカカシと⚫︎⚫︎の姿があった。
「花嫁衣装も着せられるなんて、カカシって凄いね」
「まぁね」
複雑な帯結びを手際良く仕上げていく。
「よし、完璧」
「ありがとう」
鏡を見るとキレイな花嫁姿が出来上がっていた。
「⚫︎⚫︎」
名前を呼ばれて振り向けば、唇が重なる。
口移しで御神酒が流し込まれた。
「んっ…」
ゴクンと喉が鳴る。
「お清め」
口の端から溢れたお酒を拭きながらカカシが穏やかに言う。
「行ってらっしゃい」
「…行ってきます」
暗がりの中、家を出る。
衣装は重たく、介添が欲しい所だが1人で抱えて歩いた。
ここは漁業で栄えた村だった。
最近、男たちが漁に出るときを狙って、村の娘たちが夜な夜な襲われだした。
しかし、帰宅した娘たちに聞いても何も覚えていないと言う。
娘が怖がれば漁も思うようにいかない。
このまま漁業が衰退していっては困ると、村から依頼が入った。
カカシとの調査で予想はついている。
山道をゆっくり進み、真っ暗な洞窟へと入る。
冬でなくて良かった。
ヒンヤリとした洞窟を進む。
手入れをしているのであろう、山道よりは幾分歩きやすい。
道が開け、薄明かりが灯っていた。
「参りました」
「…待っていた」
静寂の中、男女の声が響く。
ゆっくりと男が振り向いた。
⚫︎⚫︎を見て静かに言う。
「…美しいな」
「嬉しいお言葉ですね」
ニコリと微笑みながら目を凝らせば、火傷の傷なのだろうか。
半身がただれた男が立っていた。
年齢は分かりづらいが、30か40か…
「醜くて驚いたろう」
「いえ、整っていらっしゃいます」
嘘ではなかった。
無事だった方の半身からは色男が窺える。
「…昔の話だろう」
「さぞ、人気があったことでしょう」
「その反動で余計に卑屈になってしまった」
「脅して嫁を娶らずとも、あなた様なら大丈夫かと思います」
男の側までゆっくり歩いて隣に立つ。
「こんな薬を作っていても、何もせずお返しになるのだから」
男の近くの小瓶を手に取る。
壁には液体の入った瓶が沢山並んでいた。
娘たちの記憶が薬で消されたことは分かっていた。
「この場所で私と夫婦ごっこもいいですが、あなたの腕ならばもっと役立てる場所があります」
ご紹介しますよ、と言って優しく手を握る。
男は真っ直ぐ⚫︎⚫︎の目を見つめ、しばし思案していた。
「…なぜそこまでしてくれる」
「あなたが娘たちを傷物にしなかったからです」
「…怖気付いてしまっただけさ」
「性根がお優しいんですね」
少しの間の後、深いため息をつき男は言った。
「…頼まれてくれるか」
「もちろん」
笑顔で返せば、男も不器用だが僅かに微笑んだ気がした。
「…名も聞いていなかったな」
「⚫︎⚫︎と申します」
「⚫︎⚫︎か…世話になる」
「はい」
「…あと、これは礼だ。持って行ってくれ」
そう言って手渡された2つの小瓶。
「記憶を消すものですか?」
「あぁ、それがこの小さい方だ」
「じゃあこちらは?」
「男を喜ばせる薬だ」
「…いりません」
「なぜだ?これが1番売れた薬だ」
「っ…!」
そう言って顔を赤らめれば、男が近づき唇があっさりと重なる。
舌が自然に絡まり、深い口付けに吐息が漏れた。
顔が離れると苦笑して男が言った。
「キレイな花嫁だ。…オレの気が変わらないうちに、出ていってくれ」
「…わかりました。また後日伺いますのでご準備を」
そう言い残し洞窟を後にした。
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