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「もうコレでいいって…」
「ダメだ」
「デイダラ、もうお店の予約が…」
⚫︎⚫︎は焦りながら壁に掛けられた時計を見る。
もう何度目の確認か分からない。
「芸術家ってのはこだわりなんだよ」
「こだわりって言うか…」
(優柔不断とも言えるんだけど…)
そんな事を言えば火に油を注ぐから黙っている。
今夜はデイダラとデートの約束をしていた。
⚫︎⚫︎は久しぶりの休暇なら、自分の回復に使いたい性分だ。
ギリギリでデートの準備をすればいいかと思っていたら、デイダラが一時間も早く迎えに来たので⚫︎⚫︎は驚いた。
慌てて化粧をする間、デイダラは⚫︎⚫︎の背中越しに待つ。
鏡越しに視線を交えながら順調に会話は弾んでいた。
そこまでは良かったのに、余計な一言を私が言った事が悔やまれる。
「ねぇデイダラ、どっちが良いかな?」
化粧が終わると、デートに着ていこうと悩んでいた二着を見せた。
「どっちも似合うけどな…こっちだな、うん」
片手を顎に置き、もう片方の手で指した。
「こっちね」
⚫︎⚫︎は選ばれなかった一着をしまいにクローゼットを開けた。
服を掛けて扉を閉めようとした手に、デイダラの手が重なった。
「待て待て」
「え……?」
「こっちの方が良いだろ」
クローゼットから違う一着を引っ張り出した。
そこからだ。
あーでもない、こーでもないと始まったのは…。
「もう良いよデイダラ…コレにするから!ね⁉︎」
「芸術に妥協はないんだよ」
「………」
今はアクセサリーの組み合わせに首を捻っている。
「もう……お願いだから、行こう?」
時計の針は止まらない。
「⚫︎⚫︎は芸術を分かってないな、うん」
⚫︎⚫︎は苛立ちを隠せなくなっていた。
「ねぇデイダラ、久しぶりのデートで美味しいお店も予約してあるのっ」
楽しみにしてたのに…と語気を荒げて言えば、デイダラはムッとする。
「⚫︎⚫︎が可愛いのが悪いんだろう」
「へ……?」
どうしてその台詞が出てきたのか分からない。
「一番引き立てる服じゃなきゃダメだ。オイラの⚫︎⚫︎なんだから」
「………」
⚫︎⚫︎はみるみる顔が赤くなる。
サラッと言ってのけるデイダラの一言は、⚫︎⚫︎の動きを止めるには充分だった。
「⚫︎⚫︎、引っ越さないのか?」
「なんで?」
「もってでっかいクローゼットが置ける部屋にしろよ」
「いらないよ?」
「いや、ダメだ。オイラが用意する」
即座に却下しても、デイダラの話は勝手に進んでいく。
これ以上口論するのは後にして、やっと決まった服と装飾品で玄関に向かう。
「…これで良いかな?」
恐る恐る靴の確認をする。
「あぁ、いい選択だな」
⚫︎⚫︎はほっと胸を撫で下ろす。
ヒールに爪先を入れながら、今まで思っていた疑問を言った。
「デイダラってヒール履いても嫌がらないよね?」
女性の平均より私の背は高い。
ヒールを履けばデイダラの身長を僅かに越えてしまう。
「ん?別に構わないな、それも芸術だろ」
「ふーん…」
変なプライドがあったり無かったり…
そういう所は面白いなと思う。
「そうだ。オイラと一緒住めばいいんだな、うん」
「え……ヤダ…」
「あ?」
「あ……」
つい本音が漏れてしまった。
(だって…まだこの関係が楽しいから…)
まだ甘い時間を噛み締めていたい。
また口論をしながら二人は歩く。
デイダラは彼女が上手に肩の力を抜く事は知っていた。
でも、朝も昼も夜も全て。
⚫︎⚫︎との一瞬を流させやしない。
いつも始点で終点でありたいのだ。
(通過させてなんかやんねぇ)
全てが最高傑作になるように、何時も特別にこだわり続ける。
ーーーーーーfinーーーーーー
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