非常口
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「えっ?我愛羅…君?」
手には大輪の秋桜が握られていた。
静かに差し出す。
「え…あの…貰っていいの?」
「あぁ…。好きな花だろう」
「嬉しい…覚えててくれたの?あ、ありがとう」
受け取りながら、綺麗…と微笑んだ。
「あの…その…みっともない所見せちゃってごめんね…」
病衣のうえに髪はボサボサだ。
任務の失敗も耳に入っているだろう。
「⚫︎⚫︎、大丈夫か?」
「私は…大丈夫…」
「強がるな。大丈夫じゃないだろ」
「………」
「何を怖がっている?」
その一言で、波のように感情が押し寄せてきた。
「ごめん…嘘…。もう怖いよ…忍やめようかな…」
「何故そんな事を言う」
「だって…私、センスもないし…皆に迷惑かけちゃうから…」
任務の道中感じた違和感に、自信を持てなかった事が悔やまれる。
「迷惑を掛けてもいいだろう」
「そんなっ…それじゃ嫌われちゃう…」
「誰に?」
「み、皆に…」
「オレは嫌いじゃない」
「………」
「皆もそうだ。⚫︎⚫︎に頼られて嫌な奴はいない」
「嘘…」
「もっと皆を頼れ。…本当はオレだけと言いたいが、いつも居られる訳じゃないからな」
真剣な眼差しを向ける我愛羅からは、冗談の色は感じられない。
⚫︎⚫︎は静かに微笑んだ。
「…我愛羅君って、前も私の背中を押してくれたよね」
「前?」
「私が修行で悩んでた時」
「………」
「我愛羅君がいなきゃ、きっとテマリちゃんの前に飛び込めなかった」
「それは良かったのか…?」
⚫︎⚫︎が今怪我をしているのは、そのせいなのかもしれない。
「良いに決まってる。テマリちゃんに何かあったら…私……」
⚫︎⚫︎は眉間に皺を寄せて視線を交えた。
「そうか…それなら良かったようだな」
「我愛羅君ってさ…私が困ってるとタイミング良く現れてくれるよね」
(それは…道を歩きながら⚫︎⚫︎が通りかからないかと期待する程だからだ)
不思議そうな⚫︎⚫︎に我愛羅は隠さず言う。
「好きだからな」
「え……?」
ポカンと口を開けた⚫︎⚫︎の表情が面白く、つい笑いながら言った。
「まぁ、⚫︎⚫︎は何とも思ってないだろうが」
「そ、そんな事ないっ…!」
真剣に伝えてくれたのなら、私も今しかない。
もう機会を逃すのは懲り懲りだ。
「わ!私も……好き…だよ」
「………あぁ」
我愛羅が顔を綻ばせる。
「あ…我愛羅君…また笑った…」
「⚫︎⚫︎といると笑いやすいな」
⚫︎⚫︎もつられて笑った。
オレはきっと⚫︎⚫︎がどこにいても、近くにいる景色を探すんだろう。
非常口には二人がお互い立っている。
残酷な世の中に引き返しても、美しくなるように。
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