非常口
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その日は朝から走りっぱなしで⚫︎⚫︎はクタクタだった。
「あのっ…テマリちゃん…」
上がる息を必死で抑える。
「なんだ?⚫︎⚫︎」
「…本当にこっちで合ってるのかな?」
「大丈夫だろ、アイツが言ってるし」
そう言って前を行く同期を顎で指す。
「うん…そうだよね…」
味方がこっちだと言っているのだから信じなきゃいけないのに、何故だろう心がざわつくのは…。
(久しぶりのテマリちゃんとの任務…頑張らなきゃ…!)
頬を伝う汗を手で拭い、そのまま進んだ。
数分後、⚫︎⚫︎の勘は最悪の状況で的中する。
(ど、どうしよう…囲まれてる…)
「まずいな…」
テマリが弱音を吐く時は勝機はない。
(この数は無理だ…やり合えないっ…)
「体勢を立て直すぞ」
「うっうん…!」
近距離で背後を取られないように慎重に散る。
⚫︎⚫︎は視界の端にテマリを捉えながら走った。
敵はテマリから確実に仕留めようとしているらしい。
半数ほどが集中している。
(ど、どうしよう…テマリちゃん!)
テマリは近距離の敵を撒くことに必死で遠距離の敵まで気付いていない。
(あっ…ダメだ……間に合えっ…‼︎)
テマリの前に身体を滑り込ませる事しか出来なかった。
周りから言わせれば馬鹿な判断だろうけど、⚫︎⚫︎には大真面目だった。
その後の記憶はない。
目が覚めるとそこは病室のベッドの上で、まるで時が止まったようだった。
「⚫︎⚫︎っ…!良かった…」
声のする方を見ればテマリが目に涙を溜めている。
「テマリちゃん…無事で良かった…」
⚫︎⚫︎が微笑めば、テマリはベッドに顔を埋める。
「⚫︎⚫︎…悪かった…」
「謝らないで?また会えて良かった」
テマリの鼻をすする音が病室に響く。
「…テマリちゃん、ずっといてくれたの?」
「当たり前だろ…心配したんだからな…」
「心配かけてごめんね…」
「バカっ、⚫︎⚫︎が謝るな」
「うんうん、ごめん」
そう言って二人で笑い合う。
まだ話しをしていたかったが、テマリはドアの方へ一瞬視線を送る。
(そろそろアイツにも譲らなきゃな…)
テマリは名残惜しそうに言った。
「また来るよ」
「うん…ありがとうテマリちゃん…」
「お大事にな」
ドアが閉まる音が耳に届く。
病室の安心感と、自由のない不安感が押し寄せてきた。
(早く帰りたいな…)
繋がれた点滴をぼーっと見つめた。
