心の痛み
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「キレイだねー」
桜の花に顔を寄せ、可憐な花を愛おしむ。
「………」
鬼鮫は何も言わずに木の根に座り、そんな彼女を見ていた。
風がそよそよと吹けば、⚫︎⚫︎の髪が揺れる。
片側だけ長く切り揃えられた髪が頬から離れそうになると、⚫︎⚫︎はそっと手で押さえた。
それはいつもの癖だった。
そんな様子を見て鬼鮫が言う。
「まだ気にしているのですか」
「んー?まぁね。だってこんなに可愛いのに、似合わないでしょ」
桜を見つめたまま冗談めかして笑う。
⚫︎⚫︎の髪で隠れている頬には、任務でついた傷が深く刻まれていた。
「…私はその傷も好きですよ」
⚫︎⚫︎がゆっくりと鬼鮫の方を見た。
「…ありがとう。似たもの同士だもんね、私たち」
「私に傷はありません」
言い切る鬼鮫に微笑んで、近付く。
「鬼鮫はココが傷だらけでしょ?」
正面にしゃがみ込むと、鬼鮫の胸の中心をトントンと優しく叩いた。
「痛かったよね」
言の葉を乗せて、春風が踊るように吹き抜けた。
⚫︎⚫︎はもう傷跡を隠しはしなかった。
鬼鮫は⚫︎⚫︎から視線を逸らさず、自分に暗示を掛ける。
(大丈夫…きっと私は⚫︎⚫︎を殺せる)
自分の手に掛かれば、仲間殺しなど顔色一つ変えずに出来る事だ。
いつかその任務が下ったとしても、躊躇いなどしないはず…
恋人という特別な契りを交わし、共に過ごした時間はいつか私を苦しめるかもしれない。
でも、今はまだ触れずにいよう。
「…⚫︎⚫︎、今度はこの花を見に行きますか」
⚫︎⚫︎の耳で揺れる紫陽花の飾りに触れた。
「うん…嬉しい」
⚫︎⚫︎はキレイに笑う。
前向きな彼女の誰も知らない弱さ。
いつか来るその日まで私も隣で背負いたい。
今日も傷だらけの日々を認め合いながら。
ーーーーーーfinーーーーー
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