追い風に乗って
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「カカシっ…私も払うから待って」
財布を片手に駆け寄る。
「いらないよ」
「…そんな事言わないで。ただでさえ付き合ってもらってるんだし」
「じゃあ次の店はお願いしようかな」
「うん…必ずよ」
⚫︎⚫︎は頷きながら隣に並んだ。
二件目の店は入り口に小さな明かりが灯り、看板を静かに照らしている。
ガードの固い彼女に似た重いドアを開けた。
静かで穏やかな音楽が店内を包んでいる。
「お待ちしていました」
店主に促された部屋は、予約しておいた半個室だ。
「…こんなお店あるんだね、知らなかった」
華美な装飾品を見て、私には不釣り合いかも…と自信なさそうに言った。
「そんな事ないでしょ。ほら、何飲む?」
さっきまでと打って変わって緊張気味な彼女にメニューを差し出す。
気になるカクテルを⚫︎⚫︎は選び、運ばれてきたグラスを手にして二人で重ねた。
「「乾杯」」
何度目かの乾杯を交わす。
「あ…ウォッカベースだった…」
想像と違ったようで眉根を寄せている。
オレはそんな彼女が可愛くて微笑んだ。
「違うの頼みなよ」
⚫︎⚫︎のグラスを掴むと飲み干した。
「あ…!ごめんカカシ」
「いーよ」
「なんか…時々格好いいよね、カカシって」
「時々なの?」
「うん、たまーに」
⚫︎⚫︎は笑った。
「このお店も口説く時に使ってるんでしょ?」
「………」
冗談混じりに言う⚫︎⚫︎の言葉は当たらずとも遠からずで、カウンターで一晩の相手を探した事もあった。
だが、誰かと来たのは⚫︎⚫︎が初めてだ。
「⚫︎⚫︎の事も口説いていいの?」
「それはダメでしょ」
ケラケラと笑う⚫︎⚫︎に屈せずに言った。
「ねぇ⚫︎⚫︎、オレと結婚しようよ」
⚫︎⚫︎は一瞬言葉に詰まったが、すぐにオレを嗜める。
「カカシ…。そのノリでする会話やめてって言ってるでしょ」
⚫︎⚫︎が呆れながらメニューに視線を落とした。
このままじゃまたはぐらかされる。
「…オレのウィスキーも美味しいよ」
「え?うーん…そこまで大人になれないのよね」
⚫︎⚫︎がオレのグラスを見つめた。
「そんな事言わずに味見してみてよ」
ウィスキーを口に含むと頬に手を添える。
そのまま唇を重ねて流し込んだ。
「んっ………!」
口内におさまらずに唇の端から伝う酒を舐め上げる。
「っ……カカシっ!」
唇が離れた⚫︎⚫︎は真っ赤だ。
「もう一押しかな」
オレは笑った。
