追い風に乗って
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「待ってよカカシっ」
最後に慌てて飲み干した酒がまわっているようだった。
浮つく足取りで慎重に駆け寄る。
追い付いた⚫︎⚫︎が握る財布を見て、オレは首を振った。
「あぁ、いらないよ」
「…そんな事言わないで。ただでさえ付き合ってもらってるんだし」
「じゃあ次の店でね」
オレが片目を瞑れば、怒っていないのだと確信して安堵の表情を見せる。
幼稚な感情で彼女を振り回している事に、少しだけ心が痛んだ。
「うん、任せて」
明るく⚫︎⚫︎はそう言うと隣に並んだ。
二軒目の店にはあっという間に着いた。
ドアの横に小さなライトが灯っているが、夕方の陽射しに負けていた。
⚫︎⚫︎は看板の洒落た字体を横目に、カカシに促されて店内へ入る。
オレは重厚感のあるドアを押さえている間、ガードの固い誰かに似てるなと心の中で苦笑した。
店内に入ってすぐ、一枚板のカウンターが目に入る。
夜も更けきらないからか、客足はまばらだった。
「お待ちしていました、どうぞ」
カウンター越しの店主に促されたのは、奥の個室だ。
「…こんなお店あったんだね、知らなかった」
ソファに掛けると、⚫︎⚫︎は店内の装飾品をキョロキョロと見る。
私じゃ不釣り合いだよ…と店の雰囲気に呑まれて緊張気味に言った。
「そんな事ないでしょ。何にする?」
オレは笑いながらメニューを差し出す。
⚫︎⚫︎が気になるカクテルを選んだ。
ほどなくして運ばれてきたグラスを二人で重ねる。
「「乾杯」」
何度目か分からない乾杯を交わす。
「うーん…美味しいんだけど…。思ってたのと違ったな」
⚫︎⚫︎は眉を下げて、カクテル名って覚えられないんだよね…と肩を落とす。
「それなら違うの頼みなよ」
オレは⚫︎⚫︎のグラスを手にして飲み干した。
「え…!ごめんカカシ」
「いいよ、美味しかったし。次は何にする?」
メニューを差し出しながら言う。
「…時々格好いいよね、カカシって」
「いつもじゃないの?」
「うん、時々」
⚫︎⚫︎は笑った。
「ここってさ…カカシが口説く時に使ってるお店でしょ」
「………」
冗談混じりに言う⚫︎⚫︎の言葉は、当たらずとも遠からずで…
カウンターで一夜の相手を探す事も多かった。
しかし、連れ立って訪れたのは⚫︎⚫︎が初めてだ。
「妬いちゃう?」
「まさか」
「じゃあ⚫︎⚫︎の事も口説いてみようかな」
「だめだめ」
ケラケラと笑う⚫︎⚫︎に屈せずに言った。
「ねぇ⚫︎⚫︎、オレと結婚しようよ」
⚫︎⚫︎は直球すぎる言葉に一瞬詰まり、すぐにオレを嗜める。
「カカシ…?そのノリでする会話やめてよ」
⚫︎⚫︎が呆れながらメニューに視線を落とした。
このままじゃまたはぐらかされる。
「…オレのウィスキーも美味しいよ?飲んでみる?」
「ウィスキー?…うーん、まだそこまで大人になれないのよね」
⚫︎⚫︎がオレのグラスを見つめた。
「そんな事言わずに。飲んでみなきゃ分からないじゃない」
ウィスキーを口に含むと頬に手を添える。
そのまま唇を重ねて流し込んだ。
「んっ………!」
急に流し込まれたウィスキーは口内におさまらず唇の端から伝う。
オレはわざと舐め上げた。
「っ……カカシっ!」
唇が離れた⚫︎⚫︎は真っ赤だ。
「悪くないでしょ」
オレは笑った。
