恋蛍
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「ねぇ飛段、自分で歩くから離して」
「………」
「ハァ………」
⚫︎⚫︎はため息をついた。
普段は饒舌な飛段だが、時々⚫︎⚫︎の前では無口になる。
それが気恥ずかしさから来るものだと、飛段が自覚するのはずっとずっと先の話だ。
「痛いよ……」
相変わらず服を引かれながら、足元を見る。
合わない歩幅に脚も疲れてきた。
聞く耳を持たない飛段に諦めかけていると、その手が一瞬離れた。
(あれ、離してくれるんだ……)
意外な展開に心の中で驚いていると、今度は手に繋ぎ変えて歩き出す。
先程より歩くペースも穏やかだ。
飛段なりの不器用な優しさだった。
⚫︎⚫︎は気付かれないように微笑んだ。
小川のせせらぎが聞こえ出した頃、飛段が足を止める。
⚫︎⚫︎の編笠を無理矢理取った。
「ほら、見ろ」
「………」
いつの間にか雨は上がり、雲の切れ目から覗いた月が照らす。
その月よりも暖かく輝く光があった。
「………」
何も言わずに蛍の群れを見つめる⚫︎⚫︎を、飛段は横目に盗み見る。
点滅し続ける絶えない光を、そのキレイな目に灯していた。
「なァ……」
「え?あぁ…ごめん飛段、すごくキレイだね…」
我に返った⚫︎⚫︎は、連れてきてくれてありがとう、と嬉しそうに笑う。
その笑顔に思わず抱き寄せていた。
⚫︎⚫︎といると、言葉より思考よりも先に身体が動く。
「…私も好きだよ」
「…オイ、オレは何も言ってねーぞ」
「うん、知ってる」
⚫︎⚫︎はまた笑い、蛍を眺めた。
私達は正しく生きていないのかもしれない。
しかし歳を重ねるに連れて、正当化する術を知りすぎてしまった。
優しい夜風が頬を掠める。
鬼灯のピアスが二人の噂話をするように揺れた。
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