隣の座
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「仙蔵、まだ時間じゃないよ」
歩みを止めない背中に話す。
「…易々と隣に座らせるな」
振り返りもせず言う声には棘があった。
「…別に相席くらい良いでしょ」
私も負けじと言い返した。
「ハァ……」
仙蔵がため息をつけば、心の奥が痛む。
呆れられてるのは分かっていた。
「………」
言いたいことはあるけれど、きっと私の言葉じゃ伝わらない…
火に油を注ぐくらいならばと押し黙った。
仙蔵が振り返り、こちらを見る。
「⚫︎⚫︎、今日の授業は分かっているな?」
目を合わせたまま無言で頷いた。
「どの村人が情報を持っていると思う」
「…若い女性でしょ」
「あぁ、だから声を掛ける層を絞った」
それで妬かれては困るよ…と肩を落とす。
そんな事は知っている。
でも、私以外の女性に仙蔵が気を持たせるような声で話すのが嫌だった。
「妬くわけないでしょ」
精一杯強がる。
素直じゃないとは自分で思う。
でも、そうでもしなければ情けなくて涙が溢れそうだった。
「…⚫︎⚫︎は相変わらず下手な嘘をつくな」
口元を緩ませ、そこが可愛いのだが…と言う。
⚫︎⚫︎を抱き寄せると、優しく腕の中に包み込む。
「今日は早く終わらせて、一緒に茶屋に行く時間を作りたかった」
「………」
「それなのに、あんな見ず知らずの男と話しているのだから腹も立つさ」
「それは……ごめん…」
「手間取ってしまった事は私の不甲斐なさだ。でも⚫︎⚫︎の隣に座っていいのは私だけだろう?」
親しげに男を座らせないでくれ、と言った。
「でも、仙蔵に私は似つかわしくない…」
「⚫︎⚫︎は魅力的だよ」
「誰も恋人とは見てなかった…」
「声を掛ける層が違えば、皆言う事も違うものさ」
悔しいが、あの男も可愛いと言っていたじゃないか…と視線を外して言った。
「⚫︎⚫︎の魅力を知っているのは私だけで十分だ」
頬に優しく触れる。
私の心が解けていく。
「仙蔵、あのね……」
先程の茶屋で聞いた情報を伝えた。
みるみる仙蔵の顔が喜びに満ちる。
「⚫︎⚫︎、流石私の恋人だ!」
いつの間に夜が訪れたのだろう。
仙蔵の髪が月の道でサラサラと輝いた。
「さぁ、まだやっている茶屋を見つけよう」
再び手を取り歩き出す。
辺りは春の風の匂いがした。
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