幸せにならないで
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⚫︎⚫︎が見慣れた家具を一新した。
オレの恋人は暖色を嫌う。
買い替えたとはいえ、依然としてモノトーンを愛する部屋に大きく変わりはなかった。
違う点を挙げるならば、今回は差し色に深緑のソファを選んでいる所か。
隣で腕まくりをして部屋を見渡す⚫︎⚫︎が、満足そうに言った。
「迷ったけど、この色にして良かった」
「あぁ、良い部屋になったな」
オレも同意見だと頷く。
「柱間は?好きな物置いてよかったのに」
「うーん、ここは⚫︎⚫︎の部屋だしな…」
「遠慮しなくていいのに」
⚫︎⚫︎は不思議そうに片眉を上げた。
「また何か良い物があったら置いてよ」
「あぁ、分かった」
これから店に行く度に楽しみが増えそうだ。
オレは心の中で微笑んだ。
ただの模様替えだったが、心機一転だと言って⚫︎⚫︎が蕎麦を茹でだした。
かけ蕎麦で十分なのに、私がイヤなのと言って手早く天ぷらを揚げる所に⚫︎⚫︎の真面目さがある。
蕎麦をすすりながら話す。
「美味いな、流石ぞ」
「へへッ、そうでしょー?」
はにかんで笑う⚫︎⚫︎の笑顔は、小さな頃から変わらない。
気心が知れたまま交際に至っているオレたちの仲に最早遠慮はないし、恋人であり家族のような心地良さがオレの寄り所だった。
「「ご馳走様でした」」
二人で洗い物をした後はソファで一息つく。
新品と思えないほど座り心地が良く、身体が深く沈んでいく。
⚫︎⚫︎が大きな欠伸をした。
数秒後にオレも欠伸する。
「「…うつったね(な)」」
二人で顔を見合わせ笑った。
欠伸が自然にうつるくらい、オレたちはずっと近くにいた。
突然、玄関のドアを力強く叩く音がした。
「⚫︎⚫︎ー?兄者?いるかー」
再び⚫︎⚫︎と顔を見合わせる。
紛れもなくその声は弟のものだった。
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