独占欲
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「…お邪魔します」
「どーぞ」
ゲンマの家に上がるのはいつぶりだろうか。
たまたま皆の非番が重なって、年始に初詣に行った帰りに集まった気がする。
もう何年も前か。
「テキトーに座ってください」
「ありがと」
ソファに掛けるが落ち着かない。
ゲンマは紅茶を淹れにキッチンへ歩いて行く。
私も手伝おうかと思ったが、珍しい紅茶というだけあって淹れ方にもこだわりがあるかもしれない。
いいかげんな性格の私が手出しするより、ゲンマにお任せすることにした。
背中越しに部屋の中を見れば、お揃いの雑貨や女物の日用品がちらほら目に入る。
別れた彼女との詳細は聞いていなかったが、あまり日が経っていないのだろう。
「どーぞ」
カタッとテーブルに紅茶と小さなクッキーが置かれた。
「ありがとう」
ゲンマが動く度に空気が動き、バニラの良い香りがふわりと広がった。
そっと器を手に取り口にした。
「…これ美味しい」
誇張したわけではなく今まで飲んだ紅茶の中で1番美味しかった。
「おお、よかった」
温かな温度が喉から胸へと伝わり、じーんと温まる。
ゲンマも一人になった時は淋しかったんだろうか…
自分に重ねて考えていると、いつの間にかポロポロと涙が頬を伝っていた。
「…ごめんっ」
手で拭ってみるが涙が止まらない。
情緒が安定しないことに参ったなと冷静に考えている自分がいた。
「謝らなくていいですよ」
ゲンマが優しく言う。
「こんな仕事してる以上いつでも泣けねーし、今はいいんじゃないですか」
「…意外と男前だね、ゲンマ」
涙目のまま笑って言う⚫︎⚫︎に、ゲンマはやりきれない思いになる。
「意外とは余計です。それに、さっきの話だけどカカシさんとのことはいいんですか」
「…いいよ。私には隣を歩く覚悟もないし、カカシに期待するのも辛くなる」
この関係がちょうどいいんだよね、と苦しそうに⚫︎⚫︎は言った。
「…試してみませんか」
「え?」
「オレと」
「何を?」
「だから、付き合ってみませんか」
「え…ムリかも」
「なんでですか」
「だって、ゲンマは大切な後輩だもの」
苦笑して⚫︎⚫︎はゲンマの方を見る。
「…テキトーにはぐらかさないでくださいよ。オレだって同じ男です」
目と目が至近距離で合う。
「出会ったときから気になってた」
声のトーンから、冗談ではないことがわかった。
「…ねぇ、やめて」
「ずっと好きだったんだ」
「ゲンマもモテるじゃない…。私、ゲンマの隣にいる自信もないよ」
「オレがよけりゃいいだろ。誰にも文句言わせねぇよ」
「…ゲンマってそんなに自信家だったっけ」
「前から気になってた女が傷心なら、ズルくてもつけこみたいんすよ」
「ゲンマと付き合いたい子、沢山知ってるから紹介するよ」
「…おい」
話を逸らそうと必死になれば、ゲンマの声が低くなる。
「真剣に考えてください」
「…急すぎて困るよ」
言葉を濁すが余計に気まずい。
「試してみましょうよ」
ゲンマはずっと⚫︎⚫︎から視線を逸らさず話す。
「惚れさせてやります」
自信満々に言うゲンマに、不謹慎にも少し笑ってしまった。
「ふふっ…」
「あっ!なんで笑うんすか」
「ごめんごめん」
笑いを堪えながら、ゲンマとの未来を少し考えてみた。
もしかしたら良い関係を築けるかもしれない。
(このままでいるよりは、私も希望を抱いてみようかな…)
「…じゃあお試しで」
「おう、骨抜きにしてやりますよ」
優しく唇が重なった。
