【本編】今夜もウサギの夢をみる
どういうわけか、僕はその後も『あいら』のことを忘れられずにいた。勉強や論文に集中している時はいいのだけれど、ふと気を抜いた瞬間、脳裏に『あいら』の顔が浮かぶ。
財布にしまっておいた、『あいら』の名刺を取り出す。かわいらしいウサギのコスプレをした写真と、SNSにアクセスするためのQRコードが載っていた。
スマホのカメラでそれを読み取り、アクセスしてみる。一般的に広く使われているSNSのプラットフォームに、ハートマークのアイコンが現われた。
『あいら』はそのアカウントで、お店の出勤情報やその日の衣装、日常生活についてなど色々な発信をしていた。写真は顔が写らないよううまく撮影され、写ってしまっているものには加工がされているが、それが『あいら』だとすぐに分かる。一日に最低でも3回は更新しているようだった。アカウントは開設されてから2週間程しか経っていない。店に入ったばかりというのは本当のことのようだ。
僕が彼に初めて会った日の投稿を見る。その日の夜の投稿で「今日、初めて指名のお客さんが来てくれたよォ~! 大学生のイケメンだった!」と呟かれていた。リップサービスなのだろうけれど、悪い気はしなかった。
しかしその日からの投稿を日付順に辿っていくと、最近はコンスタントに指名をもらえていることが分かった。初指名から勢いがついて、自信もついたようだった。
そこまでスクロールして、ふと我に返る。
店員と客という関係なのに、僕はたくさんいる客のうちの一人なのに。本来もう二度と会うことのない相手のはずなのに、妙に気にしてしまっていることに気づいた。
『新しいピアスしてみたんだァ』
彼の、こめかみと耳の写る写真にどきりとした。僕がこうしている間にも、『あいら』は次々に新しいお客さんの隣に座って、一緒にお酒を飲むのだろう。どうしようもないことなのに、嫉妬した。あぁ、僕は彼にまた会いたいと思ってしまっているのか。
こんなはずじゃなかったのに。
そしてその日の夜。
「また来てくれて嬉しいよォ、ありがとねェ!」
顔を上げると、ふわっと花の香りがした。僕を惑わす紫色の照明に浮かぶ『あいら』の笑顔。
僕は『あいら』に会いに、一人で店を訪れていた。
つづく
財布にしまっておいた、『あいら』の名刺を取り出す。かわいらしいウサギのコスプレをした写真と、SNSにアクセスするためのQRコードが載っていた。
スマホのカメラでそれを読み取り、アクセスしてみる。一般的に広く使われているSNSのプラットフォームに、ハートマークのアイコンが現われた。
『あいら』はそのアカウントで、お店の出勤情報やその日の衣装、日常生活についてなど色々な発信をしていた。写真は顔が写らないよううまく撮影され、写ってしまっているものには加工がされているが、それが『あいら』だとすぐに分かる。一日に最低でも3回は更新しているようだった。アカウントは開設されてから2週間程しか経っていない。店に入ったばかりというのは本当のことのようだ。
僕が彼に初めて会った日の投稿を見る。その日の夜の投稿で「今日、初めて指名のお客さんが来てくれたよォ~! 大学生のイケメンだった!」と呟かれていた。リップサービスなのだろうけれど、悪い気はしなかった。
しかしその日からの投稿を日付順に辿っていくと、最近はコンスタントに指名をもらえていることが分かった。初指名から勢いがついて、自信もついたようだった。
そこまでスクロールして、ふと我に返る。
店員と客という関係なのに、僕はたくさんいる客のうちの一人なのに。本来もう二度と会うことのない相手のはずなのに、妙に気にしてしまっていることに気づいた。
『新しいピアスしてみたんだァ』
彼の、こめかみと耳の写る写真にどきりとした。僕がこうしている間にも、『あいら』は次々に新しいお客さんの隣に座って、一緒にお酒を飲むのだろう。どうしようもないことなのに、嫉妬した。あぁ、僕は彼にまた会いたいと思ってしまっているのか。
こんなはずじゃなかったのに。
そしてその日の夜。
「また来てくれて嬉しいよォ、ありがとねェ!」
顔を上げると、ふわっと花の香りがした。僕を惑わす紫色の照明に浮かぶ『あいら』の笑顔。
僕は『あいら』に会いに、一人で店を訪れていた。
つづく