金曜日にキスするひいあい
⑨ベッドルーム
「ヒロくんおかえりィ」
撮影の仕事を終え寮の部屋に入ると、何故か部屋着姿の藍良がいた。
同室の椎名さんやひなたくんの姿はない。困惑している間に、藍良が僕のベッドから立ち上がり甘えるように抱きついてきた。
「な、なんで藍良がこの部屋に?」
「まずはただいまでしょォ」
「ただいま……」
まさか部屋に藍良がいるとは思っておらず、さらに二人きりという突然の展開に気持ちが追いつかない。心臓は勝手に跳ね上がっているけれど。
「ぎゅってして」
待ちくたびれたのか藍良はすでに甘い雰囲気を帯びていて、肩に頬ずりし、首元をくすぐって誘ってくる。求められたそれを躊躇する理由がなくて、僕は言われるまま藍良のことを抱きしめ返した。
「ひなた先輩がね、今日は部屋にヒロくんしかいないよって教えてくれたの」
僕の腕の中で、藍良は楽しそうにしている。
ひなたくんが出かけるのと入れ替わりで藍良は部屋に入れてもらえたらしい。
「そ、そうなんだ」
「椎名先輩にも、ひなた先輩から連絡してくれるって」
「それでどうして僕にはなんの連絡も来ていないのかな」
「びっくりさせたかったの」
ふふ、と藍良が嬉しそうに笑って、僕の頬を両手で挟む。藍良に自覚があるかは分からないけれど、挑発的に笑う顔に僕は弱い。
「びっくりした?」
「びっくりしたよ」
笑おうとした口元を塞がれて、平常心を取り繕えなかった。
自分の部屋に帰ってきたことで完全に気が抜けていたし、先手をとられてペースを奪われた。藍良の隠す気のない罠にまんまとかかってしまう。
されるがままなのは悔しいから、藍良のキスに応えながら体重を藍良のほうに傾ける。身長差で押し返されないように首に腕を絡めて甘えてくる藍良に、思考を溶かされる覚えがした。
唇をはなすとお互いに熱っぽい吐息が漏れる。余裕のなさが伝わってしまったのか、藍良がまた勝ち誇ったように笑った。
「ねェ、いつまで突っ立ってるの?」
「え」
「久しぶりに二人きりなんだし、いちゃいちゃしよォ」
藍良が僕を誘導しながらベッドに腰掛ける。
シャツのボタンを外しながらそのまま襟を引っ張られ、仰向けに倒れた藍良に覆いかぶさる体勢にされる。紅潮した頬に蕩けた視線、ボタンを外そうとする指の動きがくすぐったくて、力が抜けそうになる。
「藍良、ごはんは?」
「後でいいじゃん」
「お風呂に入らないと……」
「後で一緒に入ろ」
思わず笑ってしまう。こうなると僕はもう藍良には勝てない。
週末の夜に二人きり。思いがけず与えられた時間を、僕は甘んじて受け入れることにした。
寝るにはまだ早すぎるけれど、僕たちは部屋の明かりを消した。
おわり
「ヒロくんおかえりィ」
撮影の仕事を終え寮の部屋に入ると、何故か部屋着姿の藍良がいた。
同室の椎名さんやひなたくんの姿はない。困惑している間に、藍良が僕のベッドから立ち上がり甘えるように抱きついてきた。
「な、なんで藍良がこの部屋に?」
「まずはただいまでしょォ」
「ただいま……」
まさか部屋に藍良がいるとは思っておらず、さらに二人きりという突然の展開に気持ちが追いつかない。心臓は勝手に跳ね上がっているけれど。
「ぎゅってして」
待ちくたびれたのか藍良はすでに甘い雰囲気を帯びていて、肩に頬ずりし、首元をくすぐって誘ってくる。求められたそれを躊躇する理由がなくて、僕は言われるまま藍良のことを抱きしめ返した。
「ひなた先輩がね、今日は部屋にヒロくんしかいないよって教えてくれたの」
僕の腕の中で、藍良は楽しそうにしている。
ひなたくんが出かけるのと入れ替わりで藍良は部屋に入れてもらえたらしい。
「そ、そうなんだ」
「椎名先輩にも、ひなた先輩から連絡してくれるって」
「それでどうして僕にはなんの連絡も来ていないのかな」
「びっくりさせたかったの」
ふふ、と藍良が嬉しそうに笑って、僕の頬を両手で挟む。藍良に自覚があるかは分からないけれど、挑発的に笑う顔に僕は弱い。
「びっくりした?」
「びっくりしたよ」
笑おうとした口元を塞がれて、平常心を取り繕えなかった。
自分の部屋に帰ってきたことで完全に気が抜けていたし、先手をとられてペースを奪われた。藍良の隠す気のない罠にまんまとかかってしまう。
されるがままなのは悔しいから、藍良のキスに応えながら体重を藍良のほうに傾ける。身長差で押し返されないように首に腕を絡めて甘えてくる藍良に、思考を溶かされる覚えがした。
唇をはなすとお互いに熱っぽい吐息が漏れる。余裕のなさが伝わってしまったのか、藍良がまた勝ち誇ったように笑った。
「ねェ、いつまで突っ立ってるの?」
「え」
「久しぶりに二人きりなんだし、いちゃいちゃしよォ」
藍良が僕を誘導しながらベッドに腰掛ける。
シャツのボタンを外しながらそのまま襟を引っ張られ、仰向けに倒れた藍良に覆いかぶさる体勢にされる。紅潮した頬に蕩けた視線、ボタンを外そうとする指の動きがくすぐったくて、力が抜けそうになる。
「藍良、ごはんは?」
「後でいいじゃん」
「お風呂に入らないと……」
「後で一緒に入ろ」
思わず笑ってしまう。こうなると僕はもう藍良には勝てない。
週末の夜に二人きり。思いがけず与えられた時間を、僕は甘んじて受け入れることにした。
寝るにはまだ早すぎるけれど、僕たちは部屋の明かりを消した。
おわり