金曜日にキスするひいあい
⑦シャワールーム
レッスンのあと、おれとヒロくんはシャワールームで汗を流した。
鏡の前で髪を乾かしていると、後ろでずっと鳴っていたシャワーの音が止む。
ドアが開く音がしたので振り返ると、ヒロくんがシャワーブースの扉を少し開けて、ドアの外に用意してあるタオルと肌着の入ったカゴを中に引っ張り入れていた。
しばらくして、肌着のシャツとハーフパンツ姿のヒロくんが頭にタオルをかけたまま出て来る。
「おれたちしかいないんだから、普通に出てくればいいのに」
「いつ、他の人が入ってくるか分からないからね」
ヒロくんはシャワーブースから出て来る時すでに肌着を身に着けている。人前で肌を晒すのが苦手だというヒロくんはめったにESビルのシャワー室を使わずに寮室まで帰るんだけど、今日はレッスンがハードだったからさっぱりしてから帰りたかった。おれがシャワー室に寄ると言ったらヒロくんも付き合ってくれた。
「まァ、アイドル同士とはいえガードが堅くて悪いことは無いよねェ」
座って、と言っておれはヒロくんを鏡台の前に座らせ、頭をタオルでわしわしと拭いてあげる。
濡れてクセのとれた髪も、タオルで少し水気をとるだけですぐにくるくるが戻ってくる。ヒロくんのくせ毛、かわいい。
ドライヤーのスイッチを入れて、頭を撫でながら風をあててあげると、ヒロくんが気持ちよさそうに目を細める。風の音で会話はできないけれど、ドライヤーの音しかしない中でヒロくんに触れている時間も悪くない。
髪が短いヒロくんの髪は、あまり時間がかからずにすぐ乾いた。
軽く保湿用のヘアオイルをつけてあげると、ヒロくんが嬉しそうに振り向いた。
「ありがとう藍良! 気持ち良かったよ」
それからはロッカーの前に並んで立って、いつもの私服を着る。
今日はもうレッスンも仕事もなく、この後はまっすぐ寮まで帰ることになる。
「藍良からいつもと違う香りがするね」
「気づいたァ? 化粧水を新調したのォ。お肌がすごくモチモチになるんだよ」
「触ってもいい?」
ヒロくんがちゃっかりそんな風に聞いてきた。いきなり触るなって何度か怒ってから触る前に聞いてくれるようになったのはいいけど、これはこれで恥ずかしい。
「い、いいけど……」
許すや否や、ヒロくんがおれのほっぺをつついた。嬉しそうにぱっと表情が明るくなる。
「本当だ、モチモチだね」
いつまでも楽しそうに触っているから、悔しくておれもヒロくんのほっぺを触り返す。
そのまま顔を手のひらで挟んで引き寄せ、さっきまで無邪気に緩んでいた口元にキスをしてやった。
「藍良?」
自分からしたくせに恥ずかしくて顔を見れなくて、おれはヒロくんの肩に頭を押し付けた。さっきヒロくんに付けてあげたヘアオイルの香りと、ヒロくんのシャツの柔軟剤の香りがする。
ヒロくんの両手がおれの肩と背中を抱き寄せてきた。ヒロくんの吐息の感じで、笑っているのが分かった。
「……なに」
「ふふ、藍良がかわいくて」
さっきまでおれがヒロくんのお世話をしてあげていたのに、いつの間にか形勢逆転って感じ。
「もう一回、キスしてもいい?」
ヒロくんが物足りなさそうに言うから、おれは素直に目を閉じてあげた。
「……ん」
おれからも、スマートにキスできたらいいのに。いつも助走つけてジャンプするような気持ちじゃないとできない。
いつかヒロくんを焦らせてみたいなァ。
おわり
レッスンのあと、おれとヒロくんはシャワールームで汗を流した。
鏡の前で髪を乾かしていると、後ろでずっと鳴っていたシャワーの音が止む。
ドアが開く音がしたので振り返ると、ヒロくんがシャワーブースの扉を少し開けて、ドアの外に用意してあるタオルと肌着の入ったカゴを中に引っ張り入れていた。
しばらくして、肌着のシャツとハーフパンツ姿のヒロくんが頭にタオルをかけたまま出て来る。
「おれたちしかいないんだから、普通に出てくればいいのに」
「いつ、他の人が入ってくるか分からないからね」
ヒロくんはシャワーブースから出て来る時すでに肌着を身に着けている。人前で肌を晒すのが苦手だというヒロくんはめったにESビルのシャワー室を使わずに寮室まで帰るんだけど、今日はレッスンがハードだったからさっぱりしてから帰りたかった。おれがシャワー室に寄ると言ったらヒロくんも付き合ってくれた。
「まァ、アイドル同士とはいえガードが堅くて悪いことは無いよねェ」
座って、と言っておれはヒロくんを鏡台の前に座らせ、頭をタオルでわしわしと拭いてあげる。
濡れてクセのとれた髪も、タオルで少し水気をとるだけですぐにくるくるが戻ってくる。ヒロくんのくせ毛、かわいい。
ドライヤーのスイッチを入れて、頭を撫でながら風をあててあげると、ヒロくんが気持ちよさそうに目を細める。風の音で会話はできないけれど、ドライヤーの音しかしない中でヒロくんに触れている時間も悪くない。
髪が短いヒロくんの髪は、あまり時間がかからずにすぐ乾いた。
軽く保湿用のヘアオイルをつけてあげると、ヒロくんが嬉しそうに振り向いた。
「ありがとう藍良! 気持ち良かったよ」
それからはロッカーの前に並んで立って、いつもの私服を着る。
今日はもうレッスンも仕事もなく、この後はまっすぐ寮まで帰ることになる。
「藍良からいつもと違う香りがするね」
「気づいたァ? 化粧水を新調したのォ。お肌がすごくモチモチになるんだよ」
「触ってもいい?」
ヒロくんがちゃっかりそんな風に聞いてきた。いきなり触るなって何度か怒ってから触る前に聞いてくれるようになったのはいいけど、これはこれで恥ずかしい。
「い、いいけど……」
許すや否や、ヒロくんがおれのほっぺをつついた。嬉しそうにぱっと表情が明るくなる。
「本当だ、モチモチだね」
いつまでも楽しそうに触っているから、悔しくておれもヒロくんのほっぺを触り返す。
そのまま顔を手のひらで挟んで引き寄せ、さっきまで無邪気に緩んでいた口元にキスをしてやった。
「藍良?」
自分からしたくせに恥ずかしくて顔を見れなくて、おれはヒロくんの肩に頭を押し付けた。さっきヒロくんに付けてあげたヘアオイルの香りと、ヒロくんのシャツの柔軟剤の香りがする。
ヒロくんの両手がおれの肩と背中を抱き寄せてきた。ヒロくんの吐息の感じで、笑っているのが分かった。
「……なに」
「ふふ、藍良がかわいくて」
さっきまでおれがヒロくんのお世話をしてあげていたのに、いつの間にか形勢逆転って感じ。
「もう一回、キスしてもいい?」
ヒロくんが物足りなさそうに言うから、おれは素直に目を閉じてあげた。
「……ん」
おれからも、スマートにキスできたらいいのに。いつも助走つけてジャンプするような気持ちじゃないとできない。
いつかヒロくんを焦らせてみたいなァ。
おわり