【ログ】Xで公開したひいあい短編
溶き卵をフライパンに入れて、ジュッって音が鳴ったら手早くかき混ぜて、フライパンを傾けて焼けて固まり始めた卵でとろとろ部分を包む。綺麗な楕円形になったそれをお皿に乗せる。ちょっとだけ焼きすぎちゃったけど、ケチャップでハートを描いて、ちぎったレタスとプチトマトで飾れば見栄えは誤魔化せる。
それを二人分完成させた時、寝室のほうから布団がごそごそ動く音がした。ヒロくんが起きてきたみたい。
おれは食パンにハート型に切ったアルミホイルを乗せてトースターにセットする。電源を入れようとしたところで、聞こえるはずの声が聞こえて来ないことに気づいた。おれはコンロの火やトースターの電源が消えていることを確認して、寝室へ向かう。ダブルベッドの真ん中で、布団がまあるく盛り上がっていた。珍しい、ヒロくんが寝坊なんて。
「おーいヒロくん、朝だぞォ」
山になっている布団をぽんぽんと叩くと、はみ出しているヒロくんの赤い髪がもぞもぞと動いた。いつもならおれより先に起きるか、おれが起きるときに一緒に起きてくれるのに、今日は珍しく深く眠っている。おれがヒロくんを避けてベッドから出ても、ヒロくんの側で着替えても、料理を始めても起きなかった。
「ヒロくーん?」
もう一度声をかけると、ううんと声が聞こえたので布団をめくってみた。薄目を開けてぱちぱちと瞬きをしているヒロくんがいた。めったに見れないヒロくんの寝ぼけた顔がかわいい。スマホ、キッチンに置いてきちゃった。
「いま何時……?」
「もうすぐ八時」
今日の仕事は二人とも午後から。だから時間はあるけれど、おれのあったかい朝ごはんが出来たてのうちに起きてくれないと困る。
「……僕はそんなに眠っていたんだね」
ふぁ、とヒロくんがあくびをする。いつもならこのあたりでちゃんと起きてくれるのに、今日はまだ布団から出ようとしない。昨日、ヒロくんはお兄さんである燐音先輩と、故郷の武術? みたいなやつの鍛錬? をしていたらしく、へとへとになるまで扱かれたみたい。体力お化けのヒロくんをへとへとに出来るのは燐音先輩くらいだ。今日は寝坊させてほしいと昨日の夜のうちから言われていたから、おれが朝ごはんを作ることにしたんだけど。
「起きてよヒロくん、朝ごはんにオムレツ作ったよォ」
二人でゆっくり朝ごはんを食べられる日はめったに無い。だから早く起きてよ。おれがヒロくんの肩をゆすろうと手を伸ばしたら、布団から出てきたヒロくんの手に掴まった。布団の中で温まった手に包まれて、一瞬ドキッとしちゃった。
「……あいら」
眠たそうな甘えた声で名前を呼ばれる。
「起きるから、キスして欲しいよ」
「はァ?」
さっきまで寝ぼけていたくせに、今はちゃっかり甘えようとしてる。……ったく、珍しいからって好きにさせすぎた。
「もォ、しょうがないなァ」
おれは笑って見せて、ベッドに仰向けになって腑抜けているヒロくんの上に俯き、顔を近づけて、もう一度目を閉じるヒロくんの顔を……。
ぺちん、と両手で挟んだ。
「えっ」
「だらだらしてないで起きろォ」
拍子抜けした声を出すヒロくんを放っておいて、おれはキッチンに戻ろうと背を向ける。背後でどさっと布団の落ちる音がして、背中に重たいものが乗っかってきた。
「あーいらっ」
くすくすと笑いながらヒロくんがおれに抱き着いてくる。おれが咄嗟に振りほどこうとして振り向くと、ヒロくんに唇を塞がれた。たっぷり唇を押し付けられて、ぎゅっと抱きしめられて、それが緩むとごきげんなヒロくんと目が合った。
「おはよ、藍良」
「……おはよォ、お寝坊さん」
おれは仕返しに、ヒロくんの頬に触れるだけのキスをしてあげた。
朝ごはんできてるから、さっさと目を覚ましてよねェ。
おわり
それを二人分完成させた時、寝室のほうから布団がごそごそ動く音がした。ヒロくんが起きてきたみたい。
おれは食パンにハート型に切ったアルミホイルを乗せてトースターにセットする。電源を入れようとしたところで、聞こえるはずの声が聞こえて来ないことに気づいた。おれはコンロの火やトースターの電源が消えていることを確認して、寝室へ向かう。ダブルベッドの真ん中で、布団がまあるく盛り上がっていた。珍しい、ヒロくんが寝坊なんて。
「おーいヒロくん、朝だぞォ」
山になっている布団をぽんぽんと叩くと、はみ出しているヒロくんの赤い髪がもぞもぞと動いた。いつもならおれより先に起きるか、おれが起きるときに一緒に起きてくれるのに、今日は珍しく深く眠っている。おれがヒロくんを避けてベッドから出ても、ヒロくんの側で着替えても、料理を始めても起きなかった。
「ヒロくーん?」
もう一度声をかけると、ううんと声が聞こえたので布団をめくってみた。薄目を開けてぱちぱちと瞬きをしているヒロくんがいた。めったに見れないヒロくんの寝ぼけた顔がかわいい。スマホ、キッチンに置いてきちゃった。
「いま何時……?」
「もうすぐ八時」
今日の仕事は二人とも午後から。だから時間はあるけれど、おれのあったかい朝ごはんが出来たてのうちに起きてくれないと困る。
「……僕はそんなに眠っていたんだね」
ふぁ、とヒロくんがあくびをする。いつもならこのあたりでちゃんと起きてくれるのに、今日はまだ布団から出ようとしない。昨日、ヒロくんはお兄さんである燐音先輩と、故郷の武術? みたいなやつの鍛錬? をしていたらしく、へとへとになるまで扱かれたみたい。体力お化けのヒロくんをへとへとに出来るのは燐音先輩くらいだ。今日は寝坊させてほしいと昨日の夜のうちから言われていたから、おれが朝ごはんを作ることにしたんだけど。
「起きてよヒロくん、朝ごはんにオムレツ作ったよォ」
二人でゆっくり朝ごはんを食べられる日はめったに無い。だから早く起きてよ。おれがヒロくんの肩をゆすろうと手を伸ばしたら、布団から出てきたヒロくんの手に掴まった。布団の中で温まった手に包まれて、一瞬ドキッとしちゃった。
「……あいら」
眠たそうな甘えた声で名前を呼ばれる。
「起きるから、キスして欲しいよ」
「はァ?」
さっきまで寝ぼけていたくせに、今はちゃっかり甘えようとしてる。……ったく、珍しいからって好きにさせすぎた。
「もォ、しょうがないなァ」
おれは笑って見せて、ベッドに仰向けになって腑抜けているヒロくんの上に俯き、顔を近づけて、もう一度目を閉じるヒロくんの顔を……。
ぺちん、と両手で挟んだ。
「えっ」
「だらだらしてないで起きろォ」
拍子抜けした声を出すヒロくんを放っておいて、おれはキッチンに戻ろうと背を向ける。背後でどさっと布団の落ちる音がして、背中に重たいものが乗っかってきた。
「あーいらっ」
くすくすと笑いながらヒロくんがおれに抱き着いてくる。おれが咄嗟に振りほどこうとして振り向くと、ヒロくんに唇を塞がれた。たっぷり唇を押し付けられて、ぎゅっと抱きしめられて、それが緩むとごきげんなヒロくんと目が合った。
「おはよ、藍良」
「……おはよォ、お寝坊さん」
おれは仕返しに、ヒロくんの頬に触れるだけのキスをしてあげた。
朝ごはんできてるから、さっさと目を覚ましてよねェ。
おわり