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第2話




「え、これからクエストなの?」

既に陽も落ち、辺りが暗くなり始めた頃、一日で一番の賑いを見せるバンエルティア号の食堂の一画に、ルー、マオ、ルカ、ジーニアス、カイルがいた。
その中談笑していたマオはハンバーグを頬張っていたが、珍しい話に思わず問いかけた。
問いかけられた方、ルーは美味しそうにオムライスを食べながら、こくんと頷く。
ギルドの仕事であるクエストはいろんなものがあるが、ほとんどは日中に行われる。
これからということは、夜中のクエストということになり、なかなかレアだった。

「珍しいね、夜中にクエストって。一体どんなクエストなの?」

首を傾げながらルカが問うと、ルーは張り切った様子で答える。

「採掘クエストで、夜にしか咲かない花の採取なんだ。なんでも昼間に行っても見分けがつきにくいらしくてさ。」
「へ~!夜にしか咲かないって珍しいね!」
「うん!」

カイルが目を輝かせながら食いつくと、ルーも笑顔で同意する。
夜にしか咲かない花、はじめその話を聞いた時、セレニアの花を思い出した。
セレニアはルーにとって、とても思い出深い特別な花。
もう戻ることは出来ない、故郷のオールドラントで自分の犯した過ちを二度と起こさないと、自分を変えたいと切に願って髪を切ったあの日、その美しい花が見守ってくれていた。
あの花を連想させる花とはどんなものなのか。
クエストの内容は夜ということもあり、難易度も普段より高くなるが、どうしても見てみたくて自ら志願したのだ。

「確かねえさんも一緒に行くんだよね。あとリタも」
「うん。俺花とか詳しくないからさ。」

ジーニアスの姉であるリフィルは先生をしているだけあって知識は豊富で、リタもいろんな本を読み漁っているからなのかいろいろと詳しい。
このギルドの頭脳でもある二人が参加するのはルーにとって心強い。
そして今回は更に…。

「あとユーリも一緒なんだ」
「えっユーリも?そんなに難易度高かったの?」

ユーリの事は聞いていなかったようでジーニアスが驚く。
ユーリはルーと同様にギルドの中でも上位の実力。
二人はとても仲良いパートナーであることは皆の共通認識であるが、基本的に複数のクエストが同時並行で行われていることもあり、力に偏りが出ないようにとクエストとなると別々にされることが多かった。

「あ、いや…難易度が高いわけじゃないんだけど…その…」
「「「「???」」」」
「花の生息地が………その…大きな屋敷の廃墟の近くで…」
「「「「ああ…」」」」

そこまで聞いてマオ達はすぐに察する。
ルー暗い所や怪談の類は滅法弱い。以前クレスの怪談話を聞いてから数日、ユーリにべったりだった時があったほどだ。
恐らく今回も同様の理由なんだろうと思い、生暖かい目で見ているとハッとしたルーは首をぶんぶんと振り、違うと否定する。

「べ、別に怖い訳じゃなくて!!その…なんつーか、苦手なだけで…!!ち、ちょっと不安になって今回のクエストの話をしたら、ユーリが心配して来てくれるって…。俺は嬉しいけど、流石に悪いと思って大丈夫って言ったんだけど、集中散漫して怪我したらどうするとか…あと、誰かに何かされたらどうするって」
「「「「あ、そっちか」」」」
「ん?そっち?」
「ルーって強いのに抜けてるからね。いろいろ心配なんじゃない?」
「ユーリって独占欲凄いし、そもそもルーに激甘だしね〜」
「うう…」

ジーニアスとマオが茶化すようにニヤニヤとしながら言われ、ルーは身を縮こませる。
ユーリの独占欲はよくわからないが、自分への過保護っぷりは周囲に比べて群を抜いていることは知っていたため、すぐに納得した。
ただ、内心はユーリがいてくれるというのはルーにとって心強い以外何物でもない。
それに一緒に出掛けられるのは素直に嬉しく、楽しみでもある。
これからのことを考えると自然と頬が緩んでしまう。そんなルーを前に、マオ達は顔を見合わせつつ、つられて笑ってしまう。
暖かな空気の中、食事を終えたルーはみんなに気をつけていってらっしゃいと暖かい言葉で見送られた。





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