時をこえた願いを(後編)
翌日、朝早く目を覚ますことができた僕だったが、余程珍しかったのか皆驚かれてしまった。
中でもラムダ姉妹からはどこか具合でも悪いんじゃないかと本気心配されてしまい、僕はちょっとショックを受けつつも今度からなるべく早く起きるようにしようと思った。
一つ気になったとすれば、カミュのことだ。
一言でいうと視線が痛い。
いつも見守ってくれているような視線は感じるのだが、今日は穴が開いてしまうのではないかと思うほど、強い視線を感じる。
何かあったのかなと思ったのだが、何度か声をかけても特にいつもと変わらない様子なのでどうやら違うらしい。
「ねぇねぇイレブンちゃん。…カミュちゃんと何かあったの?」
こそこそっとシルビアが僕に声にかけてきた。
どうやらカミュの変化には僕だけではなく、仲間たちも気づいているようで僕に視線を送ってくる。
「特に何もないはずなんだけど…」
もしかして知らず知らずのうちに何かカミュの気に障ることでもしてしまったのだろうか。
可能性は拭えきれず、不安が広がるのを感じる。
シルビアはちらっとカミュを見て、ふぅっと息をつくと僕の方を見る。
「変なこと聞いてごめんなさい。どうやら気のせいみたい。そんな悲しそうな顔をしないで。」
「う、うん」
そんな顔をしてたのかなと自分の頬に手を当てていると、ベロニカが声をかけてきた。
「ねぇ、今日はどうするの?ネルセン様の試練を受けに行くの?」
「あ、もしできたら今日はヨッチ村へ行きたいんだ。ヨッチ達も困ってるみたいだし…」
邪神が誕生してそれ所ではないかもしれないが、ヨッチ族もヨッチ族できっと困っているのだろう。
ロトゼタシア中を探して見つけ出した合言葉を教えてくれるヨッチ達のお願いを聞くたびになんとかしてあげたいと思うのだ。
ここ最近はほとんどネルセン様の試練に行っていたので、尚更少しでも手助けしてあげたい。
その気持ちが伝わったのか、ベロニカは納得したように頷く。
「そういえばあんたここ最近よく一人でブツブツ何かと話してたもんね。」
「では、今日はヨッチ村へまいりましょう」
そうセーニャが笑顔で言うと、他の仲間達も一様に頷く。
僕の我儘に付き合ってくれる仲間達に感謝しつつ、ルーラを使いヨッチ村へと向かった。
ヨッチ村へつき、冒険の書が置かれている部屋へと足を踏み入れる。
冒険の書は教えてもらった合言葉に反応しているのか僅かに光を帯びていた。
複数の光がある中、「ルドマンの屋敷」と書かれているものを選んだ。
…のだが、その後に起こることで僕はとんでもない窮地に立たされてしまった。
書の中に入るとそこは立派な屋敷の中で、その大きな部屋にルドマンという男性が沢山いる異様な光景に僕達は困惑した。話を聞いていく内にどうやら魔物の仕業だということが分かり、教えてもらった情報を手掛かりに、きっとあそこだろうと別の冒険の書へと向かい、その魔物を退治した。
退治した後、再びルドマンの屋敷に向かうと、沢山いたルドマンさんは一人だけになっていて、代わりに綺麗な三人の女性たちがいた。
どうやら呪いが解けたようで、一件落着した。そのことにホッとし、よかったと心から思った。
…のだが…。