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拍手小話ログ 9

◆ユリルク+アニス&ティア


「うーん」

その日、バンエルティア号内を練り歩きながらルーは一人悩んでいた。
腕を組み眉を寄せながらうんうんと唸り声を上げるが、効果はない。

全然浮かばない…困ったなぁ…。

「あれ?ルーどうしたの?」

突然声を掛けられたルーはハタとそちらの方を見ると、そこにはアニスとティアがいた。

「アニス、ティア」
「何か悩み事?」
「あ、うん、ちょっとな」

ティアの問いにそう素直に答えると、アニスはそれなら!と続ける。

「アニスちゃん達に話してみなよ!相談乗るよ~!」
「私たちで良かったら協力するわ」

二人の言葉を受けたルーはきょとりとしたが、確かに今悩んでいることは自分1人で考えるよりも2人の意見を聞いた方がいいかもしれないと思い立つ。

「実はさ、ユーリにいつも色々してもらってるからお礼がしたいんだけど…何がいいのかなって。プレゼントって思ったんだけど、ユーリが欲しがるものってケーキとかクレープとか甘いものくらいだし、それだとなんつーか、サプライズ感がないというか…」

話を聞いたアニスとティアはああなるほどと納得しつつ、お互いの顔を見合わせる。
ユーリの欲しいものなんて考える必要もなくこのルーで充分だろう。
とはいえ、日頃から二人はよく一緒にいるので、そのままルーを差し出したところで、プレゼントとかルーの言う“サプライズ感”というものは感じないのも確かで。
それなら、少しだけ捻ればいいのだ。

「ルーがユーリに思いっきり甘えればいいんじゃないかな?」
「え?俺がユーリに甘える?」
「そうね、それがいいと思うわ」

思いがけないアニスの提案とティアの同意にルーは思わず首を傾げる。

「え、で、でも、お礼がしたいのに俺が甘えるのか…?普通逆じゃねぇ?」
「好きな人に甘えてもらうことをとても喜ぶ人も世の中にはいるわ。きっとユーリはその部類だと思うの」
「そうそう!」

好きな人という単語にルーは顔を赤らめつつ、そうなのか…と呟き考え始める。
甘える…と一言で言っても、一体何をすればいいのだろうか。
いつもユーリに甘えてばかりいると思っているルーにとって、今以上に甘えるというのはなかなかの難題だ。
再びうーんと腕を組み眉を寄せながら悩み始めるルーに、ピンと閃いたアニスが手を上げる。

「じゃあさ、こういうのはどう~?」
「ん?」



***


ルーの姿が見えないな、どこ行ったんだ?

ユーリは姿が見えなくなったルーを探しに廊下を歩いていた。
今日はクエストや当番もないと言っていたルー。
普段ならルークやクレス達と剣の稽古か、ルークと勉強か、マオ達とよくいることが多いのだが。

…坊ちゃん率高いな。

そのことにイラッとしつつ、先程焼き上げたばかりのクッキーが入った袋をぽんぽんと手元で遊ばせながら辺りを見回す。
もしかして部屋に戻ったのだろうか、そう考え始めた時だった。

「ユーリ!」
「!」

突然声が掛かったのと同時に背後にどんと衝撃を感じたユーリは、バッと背後に振り向くと、そこには先程から探していたルーがいて、ユーリに抱き着いていた。
全く想定外の事にユーリは目を瞬かせる。

「ルー?」
「へへ、びっくりしたか?」

ルーは僅かに頬を赤らめつつも笑顔を見せ、ぎゅっと抱き着き体を密着させながら、ぐりぐりと甘えるように頭を押し当てる。

…こんなんで本当に喜ぶのだろうか?

アニスとティアから教わった“甘え方”を実践してみたルーだったが、正直恥ずかしい。
それでもユーリの為だと言い聞かせていたのだが、そのユーリからは特に反応がない。

もしかして間違えたのか?いや、もしかしたらやり過ぎてうざかったのかもしれない…。

ルーは心細くなり、ちらりとユーリを見ると、ユーリは真顔で穴が開くんじゃないかという程じっとルーを見ていた。それに本能的にビクリとする。
な、なんだ?
ルーはいろいろ不安になり、抱き着いていた腕を解きつつ、声を掛けようとした。が。

「…うわっ?!」

突然ルーを横抱きの状態で抱き上げたユーリは無言のまますたすたと歩き始める。
ルーはえっえっ!?と困惑しながら、ユーリの顔を覗き込む。
すると今度は突然キスをされ、ルーは思わず驚きびくりとしながら固まる。
そしてルーは顔中にキスを贈られながら、ユーリと自室の方へと消えていった。

「・・・・・・・ごめん、ルー・・・」

物陰から様子を見ていたアニスは、お持ち帰りされてしまったルーと自分の隣で悶絶してはぁはぁしているティアを見ながら、ルーの破壊力甘く見てたと反省した。





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