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拍手小話ログ 8

◆ルーとジェイド



その日、ジェイドは科学室にいた。

普段ここで様々な研究や開発をする場所として専ら使われるのだが、今ジェイドが取り組んでいるのは自国から持ってきた書類仕事だ。
自室でも作業が出来るのだが、自室はルークとアッシュの喧嘩…もとい、じゃれ合いが反響し騒がしく、こちらの方が人の気配もあまりなく静かで集中できる。
更に今日に限っては科学室を使用する者達が珍しく出払っていて丁度良かったのだ。

静かな部屋でカリカリとペンを滑らせる音だけ響いていたが、その静寂を打ち破るように小さなノック音が聞こえ、ジェイドの手がピクリと反応する。
ここにくるのはリタかハロルド等限られた人しか来ない。
だが、あの二人はノックというものをしないので、ロックス辺りか。

「どうぞ」

手を止めずに声を掛けると、キィっと音を立てて扉が開く。

「よかったいた!」

扉の隙間からひょっこりと顔を出したのはルーで、ジェイドの姿を見るなりパッと笑顔を見せた。
その思いがけない訪問者にジェイドは手を止め、ルーの方を見る。
ルーは部屋に入るなり中をきょろきょろと見渡すと、ジェイドの方へ歩み寄る。

「どうしたんですか?」
「さっきロックスに会ったんだけど、ジェイドが食事に来ないって心配してたからさ。様子見に来たんだ」
「ああ、そういうことですか」

時計を見れば確かに深夜ともいえる時間になっていて、食事の時間は大幅に過ぎていた。
とはいえ、一食くらい食べなくとも軍人のジェイドにとってはなんてことないのだが。
ルーはと言えば、しきりにジェイドの顔色を窺っていた。

「大丈夫か?具合悪いのか?」
「大丈夫ですよ、少し仕事に没頭してただけです」
「そっか、ならよかった!」

ジェイドの言葉に安堵しにこにこと笑顔を見せるルーに、別の世界とはいえ、この子があのルークのもう一つの姿なのかと思うと感慨深い。
そんなことを考えているジェイドを他所に、ルーはピンと閃いたようにあ!と声を上げる。

「あ、じゃあちょっと待っててくれ!」

そう言うなりルーは突然駆け出しバタバタと部屋を出ていく。
なんという猪突猛進。
まるで嵐の様ですねと内心呟き、また仕事を再開する。
が、その数十分後、また部屋のノックが響いた。
それにもしやと思ったジェイドは手を止め、立ち上がり、扉を開ける。
扉を開けた先には案の定ルーがいて、手にはお盆を持っていた。

「はい、これ!」

ルーは笑顔でお盆を差し出すと、その上にはいびつな形をしたおにぎりが3つあった。

「これは…おにぎり、ですかね?」
「なんで疑問形なんだよ!」

結構うまくできたのに!!とルーは頬を膨らましぽこぽこと怒る。
それを見てジェイドは軽く目を瞠り、おやと零す。

「あなたが作ったんですか?」
「そうだよ!もう夜遅いし、ロックス達に作ってもらうの悪いだろ。」

そう当たり前のように話すルーは、部屋に入りそのお盆をテーブルの上に置く。

「念のため伺いますが、それは私に…ということでしょうか?」
「?うん、だって腹減ってるだろ?…あ!味は大丈夫だぞ!?」

味の心配をされたのかと思ったルーは、俺だっておにぎりくらい作れるんだからなと主張する。
ジェイドとしては疑問に思った所はそこではなかったのだが、勘違いして熱弁しているルーを見て笑みを零す。

「ではあなたもご一緒にどうですか?どくみ…ああ、いえ味見役として」
「いま毒見って言ったな!!?」

ジェイドの発言にルーは憤慨しながら、絶対美味いから!と椅子に座ると、おにぎりを手にする。
その姿を見て、ジェイドはふっと僅かに張っていた気を解れるのを感じた。

少し休憩でもしますか。

そう思いながらジェイドは二人分のお茶の準備を始めた。







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こちらは以前リクエストいただいた「ジェイドがルーク(短髪)に癒される」でした!
意に添えているか不安ではありますが…。
兎にも角にもリクエストありがとうございました!




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