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拍手小話ログ 7

◆ルーとルークとガイ


その日、ルーはルークの部屋でいつものようにルークに勉強を教えてもらっていた。
元々出来が悪いわけではないルーは日々の努力も相まって以前よりも大分文字の読み書きが出来るようになっていた。
この短期間での成長にリフィル達からは驚かれたが、それでもまだまだだと思う。
そんなルーにルークも付き合ってはいるのだが、根を詰め込み過ぎる癖のあるルーの歯止めをかける為にも強制的に休憩を取るようにしていた。
今は丁度その休憩時間で、ロックスが用意してくれたクッキーと紅茶で一息をつく。

「そういや、お前んとこのガイ凄かったな」
「え?何が?」
「なんつーか…親バカ感が凄まじかった」

映像で見たもう一つの世界であるオールドラントのティア達を見て、皆個性が強い、というか強すぎる印象を受けた。
まぁこちらの面々も似たようなものなのだが、その中でもガイは大分違う印象を受けた。
オールドラントのガイはひたすら「ルークルーク」と呟いていて、その親バカっぷりに若干ルークは引いていた。
確かにあちらの世界のルークはこのルーで、ルーと一緒にいればいるほど過保護になってもおかしくないのは解るのだが、それにしてもあれは…と思う。
だが、当のルーはと言えばキョトンとした様子で首を傾げている。マジかよ。

「うーん、俺が生まれてからずっと一緒にいてくれたのはガイだからな…」

ルーにとって生まれて間もない時から一緒にいてくれたのはガイで、言葉を始めとする生活する術を教えてくれたのはガイだ。
親友でもあり育ての親のような存在で、いつも頼りにそして甘えていたのも事実だ。

「確かにちょっと過保護だな~って思うことはあったけど」
「ふーん、例えばどんなんだよ」
「俺がグミとかの買い物を頼まれて出かけようとするといつもついてくるんだ。一人で行けるって言っても心配だからとか誘拐されたらどうするって言い出してさ。どんだけ近い店でもダメだっていうんだ。すぐ隣の店だっていってもついてくる。」
「…へえ…」

それでちょっとか。スゲーな。
ルーの天然っぷりには偶に驚かされるが、天然で片していいのか疑問に思ったりもする。

「あ、でも、1月くらいだったんだけどガイと離れたことがあってさ。」
「その状態でよく離れられたな。」
「あの時はジェイドと陛下が…。大変だったってジェイドは言ってたけど」

あのジェイドが…。全く想像できねぇ。
よほど大変だったんだろうということはそれだけでわかるルークはますます渋い顔をする。

「再会した時のガイは凄かった。「ルークがしゃべる!」ってわけわからんねぇこと言い出して、なんかスゲー撫でまわされた。その後は食事の時なんかは食べさせようとしてくるし、風呂入るときも一緒に入ろうとしてくるし。体拭いたり髪乾かす時もタオルもってスタンバってるし。あと…」
「・・・・・」

まだまだ続くガイ伝説にルークは顔を引きつらせる。
過保護云々のレベルじゃねぇ。
溺愛し過ぎだろ。つーかルーもよく受け入れたな。ぜってーうぜぇだろ。ツッコミが追いつかねえよ。
可愛がりたくなる気持ちも分からないでもないが、それでも度が過ぎているとルークは呆れかえっていると部屋にノックの音が響く。
ルー達はその音に反応するようにドアの方を見ると、ガイが部屋に入ってきた。
丁度話題の中心にいたガイの登場に二人とも思わず見入ってしまう。

「ん?どうしたんだ、二人とも」
「あー…いや…、今ルーんとこのガイの話してたんだよ」
「へー、それは俺も気になるな」
「…聞かねぇ方がいいと思うぞ。」
「そう言われるとますます気になるな」

興味を示すガイにルークは優しさでそう言ったのだが、逆にガイの興味をそそらせてしまったらしい。
ガイは近くの椅子に座り、聞く体制に入る。
それを見たルーは先ほどルークに話したオールドラントのガイについて話す。
もう一度同じ話を聞きながらルークはクッキーをもぐもぐ食べる。
そして思う。何度聞いてもやべえな。
ガイはといえば相槌を打ちつつ、時折苦笑いを浮かべていた。
その様子を見たルークはだよなと思いつつ、こっちのガイはまともでよかったと内心安堵しつつ、ルークは立ち上がる。

「ん?どうしたルーク」
「トイレ」

そう言い残しルークが部屋を出ていく。

その後ルーはそのまま話を続け、ガイは途中から神妙な面持ちで聞いていた。


「そうか…。ルークと離れ離れか…。」

ルーの話を聞き終えたガイは声のトーンが落ち、考え込み始めるその様子にルーはクッキーを頬張りながら首を傾げる。

「…1月とはいえ、ルークの世話ができないのは辛いな。」
「ん?」
「でも俺はルークの使用人で付き人だし、そんな心配はいらないな」
「え、あ、う、うん」

にっこりと笑みを浮かべ、なんとなく同意を求められたような気がしてルーはこくこくと頷く。

「あ、ルー」
「ん?」

ガイは何かに気付くといつものように人の良さそうな笑みを浮かべながら、さも当たり前の様にルーの口元をハンカチで拭う。

「口元にクッキーの食べ残りがついてるぞ?」
「あ、ありがとう」
「ん?ポットのお湯もなくなりそうだな」
「あ、俺貰いにー…」
「大丈夫だよ、熱くて重いだろうし、火傷でもしたら大変だろ?ルークの様子見に行きながら貰ってくるさ」

そう言いながらポットを手に笑顔で出ていくガイ。

クッキーの食べかすだって言ってくれれば自分でとるし…とか。
熱くて重いっていってもたかが知れているだろうし、しかも火傷って…とか。
ルークはただトイレ行っただけなのに一体何の様子を見にいったんだろう…とか。

いろいろ思うところはあったが、あんなに嬉しそうな笑顔向けられると何も言えない。
それはオールドラントの頃も同じで。

やっぱりガイはガイだとルーは思った。

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