拍手小話ログ 5
◆ユリルク
※ユーリさん若干暴走。ご注意ください。
その日、食堂には沢山の女子達が集まっていた。
そこは女子特有の賑やかさに加え、部屋中が甘いチョコレートの香りに包まれている。
そして机の上を見れば、沢山の調理器具と可愛らしいお菓子が彩っていた。
普段とは程遠いその光景には訳があった。
明日はバレンタインデー。
女性から好きな異性へチョコレートを通じ想いを贈るという女子にとっても、男子にとっても大きなイベントだ。
また、そうでなくとも日頃お世話になっている相手への友チョコや義理チョコなどを渡すイベントでもある。
それはアドリビトムでも例外ではなく、今はそのチョコレート作りの真っ最中で、各々の想い人用に作っている人もいれば、仲間の為に作っている人もいる。
そんな女の園のような中になぜか一人、男であるはずのルーもいた。
そもそもバレンタインデーというものを知らなかったルーを何とか言いくるめて、この場に連れてきたのはエステルで、食堂に連れ込まれたルーはそこで初めてバレンタインデーというものを知らされた。
そんなイベントがあるんだと感心していたルーだったが、同時に自分の置かれた状況にただただ疑問符を浮かべる。
そんなルーにエステル達女子は日頃お世話になってる人にお礼を作るようなものだからとか、ルーから貰えるだけで喜ぶ人がいるからなどあの手この手で言い訳し、ルーの逃げ道を遮断する。
その結果、根負けしたルーは皆のお手伝いという名目でお菓子作りに参加していた。
ルーはチョコレートを溶かしやすくする為に包丁を使って細かく切る作業を行っていたのだが、元々料理が上手いわけではないルーにとっては切るだけでも一苦労だ。
意外と固いチョコレート相手に徐々に疲労を感じ始めた時だった。
「っ!」
ピリッとした痛みに手が止まり、その指先を見ると血が出ていた。
どうやら包丁で指先を切ってしまったようだ。
「あー…やっちゃった」
はぁっとため息をつき、どれだけ不器用なんだろうと地味に落ち込む。
見た所そこまで傷は深くはないようで、とりあえず絆創膏でも貰いに行くかとルーは食堂を出ようと扉を開ける。
すると…。
「!?」
途端ドンッと何かにぶつかり、思いがけないその衝撃に不意を突かれ、そのまま後ろに倒れそうになる。
だが、すぐにぐいっと腕を引かれ今度は前のめりになり、ぽふっと何かに包まれる。
突然のことに頭がついていかず目をぱちぱちさせるルーだったが、おもむろに顔を上げるとそこにはユーリがいた。
「!ユーリ!」
「ルー?大丈夫か?」
思いがけない人の登場にルーは驚いたが、それはユーリも同じようで、珍しく驚いた表情を浮かべていた。
「ご、ごごごごめん!!」
ハッとして目にもとまらぬ速さでばっと離れるルーに、ユーリは目を瞬かせたが、少し残念そうに肩を落とす。
そんなユーリに気付かないルーは、落ち着かせるように軽く深呼吸をする。
そして、ん?と首を傾げる。
「ユーリ、こんなところでどうしたんだ?食事か?」
「ん?ああいや、たまたま近く通りかかったら、なんかすげー甘い香りがしたから。…それよりも、これどうした?」
ユーリはルーの手を掴み、血の滲んでいる指を見る。
目ざとくそれを見つけたユーリに、ルーはあー…と続ける。
「ちょっと包丁で切っちゃったんだ。でもこれくらいだいじょう…」
大丈夫と言いかけたルーだったが、それが叶うことはなかった。
なぜなら、その指の先をユーリが何の前触れもなく口に近づけ舐めたからだ。
ユーリは何かに気付くなり、固まったまま動かなくなったルーをいいことに
他の指も舐めだす。
突然のことに頭が真っ白の状態だったが、その感触が徐々に脳に伝わり、それと同時に顔を熱が集まっていく。
「~~~~~~~っっ!!!??!?」
ルーは声にならない悲鳴を上げていると、ユーリはちゅっと音を立てて口を離す。
「甘いな、チョコか?」
「っ!!?っ!!!っ!???!」
ぺろりと自分の唇を舐め、真面目な顔呟いたユーリに、今度こそルーはパニック状態になる。
ユーリはといえば、そんなルーの反応に思わず吹き出し笑い始める。
「!!!~~~っユーリーーーっ!!!!」
ルーは馬鹿にされたと思い込み、ユーリに対してぷんすか怒り出す。
だが、真っ赤にしながら怒るルーもユーリにとってはただただ可愛いだけで、悪い悪いと口では言いつつも笑顔を浮かべていた。
そんな二人の一部始終を見させられていた食堂にいた女子達(一部ノックアウトしている者もいたが)は、大半は皆同じ気持ちだった。
他所でやれ!!!!このバカップル!!!
end
※ユーリさん若干暴走。ご注意ください。
その日、食堂には沢山の女子達が集まっていた。
そこは女子特有の賑やかさに加え、部屋中が甘いチョコレートの香りに包まれている。
そして机の上を見れば、沢山の調理器具と可愛らしいお菓子が彩っていた。
普段とは程遠いその光景には訳があった。
明日はバレンタインデー。
女性から好きな異性へチョコレートを通じ想いを贈るという女子にとっても、男子にとっても大きなイベントだ。
また、そうでなくとも日頃お世話になっている相手への友チョコや義理チョコなどを渡すイベントでもある。
それはアドリビトムでも例外ではなく、今はそのチョコレート作りの真っ最中で、各々の想い人用に作っている人もいれば、仲間の為に作っている人もいる。
そんな女の園のような中になぜか一人、男であるはずのルーもいた。
そもそもバレンタインデーというものを知らなかったルーを何とか言いくるめて、この場に連れてきたのはエステルで、食堂に連れ込まれたルーはそこで初めてバレンタインデーというものを知らされた。
そんなイベントがあるんだと感心していたルーだったが、同時に自分の置かれた状況にただただ疑問符を浮かべる。
そんなルーにエステル達女子は日頃お世話になってる人にお礼を作るようなものだからとか、ルーから貰えるだけで喜ぶ人がいるからなどあの手この手で言い訳し、ルーの逃げ道を遮断する。
その結果、根負けしたルーは皆のお手伝いという名目でお菓子作りに参加していた。
ルーはチョコレートを溶かしやすくする為に包丁を使って細かく切る作業を行っていたのだが、元々料理が上手いわけではないルーにとっては切るだけでも一苦労だ。
意外と固いチョコレート相手に徐々に疲労を感じ始めた時だった。
「っ!」
ピリッとした痛みに手が止まり、その指先を見ると血が出ていた。
どうやら包丁で指先を切ってしまったようだ。
「あー…やっちゃった」
はぁっとため息をつき、どれだけ不器用なんだろうと地味に落ち込む。
見た所そこまで傷は深くはないようで、とりあえず絆創膏でも貰いに行くかとルーは食堂を出ようと扉を開ける。
すると…。
「!?」
途端ドンッと何かにぶつかり、思いがけないその衝撃に不意を突かれ、そのまま後ろに倒れそうになる。
だが、すぐにぐいっと腕を引かれ今度は前のめりになり、ぽふっと何かに包まれる。
突然のことに頭がついていかず目をぱちぱちさせるルーだったが、おもむろに顔を上げるとそこにはユーリがいた。
「!ユーリ!」
「ルー?大丈夫か?」
思いがけない人の登場にルーは驚いたが、それはユーリも同じようで、珍しく驚いた表情を浮かべていた。
「ご、ごごごごめん!!」
ハッとして目にもとまらぬ速さでばっと離れるルーに、ユーリは目を瞬かせたが、少し残念そうに肩を落とす。
そんなユーリに気付かないルーは、落ち着かせるように軽く深呼吸をする。
そして、ん?と首を傾げる。
「ユーリ、こんなところでどうしたんだ?食事か?」
「ん?ああいや、たまたま近く通りかかったら、なんかすげー甘い香りがしたから。…それよりも、これどうした?」
ユーリはルーの手を掴み、血の滲んでいる指を見る。
目ざとくそれを見つけたユーリに、ルーはあー…と続ける。
「ちょっと包丁で切っちゃったんだ。でもこれくらいだいじょう…」
大丈夫と言いかけたルーだったが、それが叶うことはなかった。
なぜなら、その指の先をユーリが何の前触れもなく口に近づけ舐めたからだ。
ユーリは何かに気付くなり、固まったまま動かなくなったルーをいいことに
他の指も舐めだす。
突然のことに頭が真っ白の状態だったが、その感触が徐々に脳に伝わり、それと同時に顔を熱が集まっていく。
「~~~~~~~っっ!!!??!?」
ルーは声にならない悲鳴を上げていると、ユーリはちゅっと音を立てて口を離す。
「甘いな、チョコか?」
「っ!!?っ!!!っ!???!」
ぺろりと自分の唇を舐め、真面目な顔呟いたユーリに、今度こそルーはパニック状態になる。
ユーリはといえば、そんなルーの反応に思わず吹き出し笑い始める。
「!!!~~~っユーリーーーっ!!!!」
ルーは馬鹿にされたと思い込み、ユーリに対してぷんすか怒り出す。
だが、真っ赤にしながら怒るルーもユーリにとってはただただ可愛いだけで、悪い悪いと口では言いつつも笑顔を浮かべていた。
そんな二人の一部始終を見させられていた食堂にいた女子達(一部ノックアウトしている者もいたが)は、大半は皆同じ気持ちだった。
他所でやれ!!!!このバカップル!!!
end