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拍手小話ログ 19

◆ユリルク+ゼロス
◆「やさしさで溢れるように」設定


日が沈み夜が訪れた頃、バンエルティア号にある一室にひと際賑やかな笑い声が溢れていた。
そこはゼロスやロイド達の部屋で、その部屋の中心にあるテーブルには食べ物や飲み物が広げられていて、それを囲うようにゼロス・ロイド・ジーニアス・ルーがいた。
これらの食べ物達はゼロスが本日のクエスト先でナンパした際に貰った戦利品。
そしてたまたま別のクエスト帰りだったルーとばったり会ったゼロスはルーを部屋に誘い軽い打ち上げのようなものを始めたのだ。
最初は皆で和やかな食事会のような状態だったのだが、調子に乗ったゼロスはどこからともなく取り出したお酒を飲み始める。
以前お酒で痛い目を見ているゼロスはルーやロイド達に飲ませようとしなかったが、その分久しぶりの飲酒とお気に入りのルーとロイドがいる環境に気を良くし、一人でお酒をガンガン飲み進めていった。
その結果…。

「…これ、見られたらまずいんじゃない?」

ジュースを片手に呆れた顔を見せるジーニアス。
その視線の先には、べろべろに酔ってしまったゼロスがルーの肩に腕を回し絡んでいる姿。
あまりにもぐでんぐでんの様子にルーは心配そうにしているが、はたから見たら完全にセクハラを受けている図だ。

ここでユーリが来たら…

少し考えただけでゾッとしたロイドとジーニアスはぶるりと体を震わせ、お互いの顔を見合わせる。
これは早くルーを助けないと。
そう考えていた矢先の事だった。

「わっ!?」

突然大きな声をあげたルーは体をびくりと体を震わせる。
見ればゼロスの手がルーのお尻の辺りにあり、ジーニアスは驚くと同時に素早くルーをゼロスから取り上げる。

「あ!ちょ、何すんだよガキんちょ!!」
「それはこっちのセリフだよ!!ルーになんてことしてるんだよ!」

あんなに堂々とセクハラして!と堪忍袋の緒が切れたジーニアスがゼロスに対して抗議を始める。

「も~!!ゼロスはなんでそんなに見境ないわけ!?」
「はあ!?俺様にだって見境くらいあるっつーの!!」
「どこがだよ!!ここの中でも手当たり次第声かけまくってるじゃないか!」
「そりゃあ可愛い女の子や綺麗な女性が沢山いるからに決まってるでしょーが!」
「だからその範囲が広すぎるんだよ!!それにルーは男だから!!!」

突如始まった2人の口論。
その激しさはその場にいたロイドも呆然とするほどで、被害者であったルーは困惑した様子で、どう止めに入るか考えていた。
そんな中、普段なら口が上手いゼロスも酒の影響からか、徐々に押され始める。
痛いところをグイグイ問い詰めてくるジーニアスに、ゼロスは思わず大きな声を上げる。

「~大体、野郎なんて浮気する生き物だから仕方ないっしょ!!」
「はあ!?」
「そこに魅力的な人がいれば、男なら反応するし、甘い蜜を吸いたいと思ったりするもんでしょうよ!」

全然反省の色が見えない、というかあまりの酷い話にジーニアスが目を吊り上げた。
が。

「…そう、なんだ…」

ぽつりと呟かれた言葉に、ピクリとジーニアスとロイドが反応し見れば、ずうんと暗い顔をしているルーがいた。

あ…これって…

2人の頭の中で警報が鳴る。
静かになったその場の空気を吸ったゼロスはふと我に返り、あーと続ける。

「まーでも例外の奴もたまに…」
「ごめん、そろそろ部屋に戻るな…」

ルーは小さい声でそう言い残すと俯きながら部屋を出ていく。
ぱたんと扉がしまり、しん…と妙な静けさが広がる。

「…俺様ヤバイ…?」

ドアの方を見つめながら冷や汗をだらだら掻きながら呟かれたゼロスに、二人は無言のまま頷いた。















その頃、クエストから無事帰還したユーリは報告を済ませ、廊下を歩いていた。
早朝から丸一日かかったクエストだっただけあってか、大分疲労が溜まっていたユーリはぼんやりとしながら自室へと向かっていると、突然背後に衝撃を受ける。

「!」

驚きバッと背後を振り返ると、そこにいたのは自分の背中にぎゅっと抱き着いているルーの姿で、ユーリは目を瞬かせる。

「ルー?」

呼びかけるとルーはそれに返答すうようにぎゅっと抱きしめる手に力を籠める。
だが、その表情は暗く、眉を下げ、不安でいっぱいだと言わんばかりのもの。
ユーリは抱きしめてくる手の上に自分の片手を当てる。

「どうした?何かあったのか?」

優しく問いかけるユーリにルーはぎゅっと目を瞑る。
明らかに何かあったルーを見て、ユーリは首を傾げているとそれまで無言だったルーが口を開く。

「…ユーリ…」
「ん?」
「……ユーリも…、…浮気するのか…?」
「・・・・・・・・は?」

とんでもない爆弾が投げられたユーリは一瞬思考が停止してしまった。

今なんつった?浮気?は?
つーか…
ユーリ“も”?

「…ルー、それ誰に」
「ハニー!!さっきのはってゲッ!!!」

猛ダッシュで駆け込んできたゼロスだったが、思わず急ブレーキを踏む。
その視線の先ににあったのは、おどろおどろしい黒いオーラを身に纏うユーリ。
ゆっくりと振り向いたユーリの目は極寒の如く鋭く、“てめぇか、ルーに何してくれてんだ、ぁ゛あ゛?”と語っていて、その数秒後、船内に悲痛な悲鳴が響き渡った。

その後、ルーの証言からセクハラの事実を知ったユーリによって、再び容赦のない制裁が加えられた。



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