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拍手小話ログ 12

◆赤毛3兄弟



「…で、今度は何だよ」

ルークはテーブルに頬杖を突きながら、目の前の席に座っているルーに問う。
ここはライマのメンバーがよく集まる場所で、ルーとルーク、そしてアッシュがテーブルを囲う様に席に座っていた。
アッシュは我関せずといった様子でテーブルの端の方で紅茶を飲みながら本を読んでおり、
一方でルーはと言えばしゅんと肩を落とし俯いていて、明らかに落ち込んでいるのが分かる。
ルーは普段は元気よく笑顔を絶やさないが、元々卑屈気味なところもあり悪い方へ悪い方へと考えこみ過ぎる癖がある。
これまで歩んできたルーの経験がそうさせるのだろうが、だからと言ってこのまま放置するととんでもない方向で勘違いして卑屈モードに入っていくので、ルークはその予兆が起こる度こうして話を聞いていた。
とはいえ、その大概がほぼしょうもない話ばかりなので、ツッコミのスキルがどんどん上がっていっている気がする。
ルーは最初こそ言うのを躊躇していたが、観念したのか俯きながら話し始めた。

「…実は…」

ここアドリビトムで日々の料理や掃除、洗濯をロックスやクレアに助けてもらいつつ、持ち回り制の当番でこなすのが鉄則で、勿論ギルドメンバーのルーも同様だ。
掃除については特に問題なくこなすことが出来るが、料理と洗濯が問題だった。
ルーは元々器用な方ではない。
どちらかと不器用で、料理をすれば誰が見ても悲鳴を上げてしまう包丁さばきと前衛的で豪快な料理を披露する。
また洗濯も洗って干すまではいいものの、その後の折りたたむのが苦手でぐちゃぐちゃになってしまう。
それでも一生懸命にやる姿を見て、最初は皆も口出しはせず、さりげないフォロー程度で手を貸していたのだ。
が、ここにいるメンバーはお人好しであり世話焼き好きばかりで。
そしてルーを見ているとどうしても甘やかしたくなってしまうこともあり、その結果、なんやかんや言い訳をつけてはルーの仕事を先回りして済ませてしまうことが間々あった。

今回も、ルーが当番だったはずのジャガイモやニンジン等の皮むきの仕事をファラがやってしまったり、洗濯物の折り畳み当番もヴェイグがさっさとやってしまったり、挙句の果てには唯一無難に出来る窓ふきでさえリヒターにやられてしまい、ルーが担当できたのは食堂の机拭きくらいだった。

そこまで聞いて、あいつらどんだけ過保護なんだよとか俺よりすげー待遇いいじゃねぇかとルークは思った。
それはルークだけではなく、本を読んでいたはずのアッシュさえも顔を上げ眉をしかめながらルーの方を見ていた。


「…俺、もっと皆の手伝いしたいと思って、ユーリにどうすればいいか相談したんだ。そうしたら、なんかユーリの機嫌が段々悪くなっていって『あいつらにはあんまりルーの仕事取んなって言っといてやるよ。それと当番は俺と一緒に組むようにすればいい。お前の仕事は確保するし、俺がフォローしてやるから』って言われて…。」
「・・・・・・・で?」
「…俺ってそんなに頼りないのかな…。」
「「だからなんでそうなる(んだよ)」」

ルークとアッシュは思わずツッコミを入れる。
なぜその流れでそう思うのか。意味がわからない。
それはあからさまなあいつの嫉妬かなんかだろ。
つーかあいつもあいつでどんだけ嫉妬深いんだよ。
いつも冷静だの頼りになる兄貴分といわれるユーリも、ルーが関わると途端豹変する。
ルークはイライラを通り越してただただ呆れ顔を浮かべるが、ルーはと言えばよくわかっていないようで困り顔で首を傾げていた。
その姿を見て、ルークはハァっとため息つく。

「…つーか、んなアホみたいなことばっか気にし過ぎてっと、お前…」
「…?」
「その内ハゲるぞ」
「えっ!!?」
「俺を見るんじゃねぇ!!!~っおい!てめぇも笑ってんじゃねぇ!!」

ルークの言葉に即座に反応したルーはバッと頭を押さえアッシュを反射的に見る。
アッシュはそれに憤慨したが、それ以上にツボに入り震えながら必死に笑いをこらえているルークが目に入り思わず怒鳴りつけた。
だが、ルークは笑いをこらえることが出来なかったようで、机をバンバンと叩きながらひーひーと息を切らしながら笑い始める。
そうなれば後の祭り。
爆笑しているルークの姿にピキッとアッシュがキレ出し、途端にその場が乱闘の如く騒がしくなる。

そんな赤毛3人組を少し離れた所から笑顔で見ているガイ、ティア、ナタリアがいて、その光景を呆れた顔を浮かべながら遠目から見ていたアニスは、同じく傍観しながらコーヒーを飲んでいるジェイドに問う。

「…で、ガイ達は何してるんですか?」
「癒しタイムなんだそうですよ」
「…ああそう…」







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