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拍手小話ログ 11

◆モテ要素


ど、どうしよう…

ルーは眉を下げ、至極困り果てていた。
その視線の先にはキッと眉をあげながらじっと見つめてくるアニス。
真剣で気迫の入った姿を前に、ルーは思わずたじろぐ。

なんでこうなったのだろうと改めて考えてみる。

今日は定期的に回ってくる掃除当番の日で、ルーはホウキを使って割り当てられた場所である廊下を掃除していた。
料理と違って掃除は単純明快な作業で、ルーは特に気負うことなく黙々とゴミを掃いていたのだが、突如大声で名を呼ばれ、驚いてそちらの方を見ると仁王立ちしているアニスがいた。
ルーは目を瞬かせながらも一体何事かと首を傾げ問いかけると、アニスはぷくっと頬を膨らませながら相談があると言われたのだ。
それにルーは何かあったのかなと思いつつも自分で良ければと快く頷いた。
が、もしかするとこれがよくなかったのかもしれない。
何故ならルーが頷いた瞬間、アニスの堰を切ったようなマシンガントークが始まったのだ。

内容はアニスの恋話というなの、失敗談…もとい愚痴だった。
アニスはこの世界でも金銭に目がないらしく、お金持ちや出世頭などある程度地位のある男性に媚びを売り、そして自分を売り込んでいくのだが、如何せんその下心が見え見えということと、まだ幼いということも相まってことごとく玉砕してきた。
それに対して持ち前の強靭の精神力で復活を成し遂げてきたが、ついに堪忍の緒が切れたのだと言う。
なんでこんなに可愛くて料理もできて家庭的なのにここまで相手にされないのかと。
一体何が欠けているのか、そしてモテるための要素を教えて欲しいのだと問い詰められたのだ。

それを俺に言われてもとルーは内心思いつつも口に出せなかった。
なぜなら、アニスの目がマジだったからだ。怖い。

「どう思うっ!?何かない!?どうすればいい!!?」
「え、えっと…」

身を乗り出してくるアニスにたじろぎながら、目を泳がす。
正直、一体何と返せばいいのか、さっぱりわからない。
元々自分自身、ルークやユーリから鈍すぎると常々言われるくらい恋愛の類については特に疎いらしい。
そんな自分が恋やモテるためのアドバイスなんてできやしないのだ。
頑張って色々と考えてみるが、全く浮かばない。
というかそれこそモテる人に聞けばいいのに…。

「そもそも俺に聞いたところでなんの役にも立たないと思うけど…」
「えー!?だってあんなに…」

おずおずというルーにアニスが嚙みつき気味に声を上げた時だった。

「ルー」
「ルーク!」

突如ルーは背後から抱きしめられ、振り返るとそこにはルークがいた。
ルーはそれに驚きつつも笑顔を見せると、ルークははぁっと息をつきつつ、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。

「?どうしたんだ?」
「んー…充電中」
「へ?充電??」

まったりとしているルークからの回答にルーは目を瞬かせ首を傾げる。
充電ってなんだ?
たまにルークは難しい単語を使うんだよな。
ユーリにでも聞いてみようかなと考えている中、ふとルーの視界に入ってきたのはそのユーリだった。

「あ、ユーリ!」
「げっ!」

ルークが現れた別の方向から姿を見せたユーリにルーが声を掛けると、ユーリはルーに気付くなり笑顔を見せた。
が、そのルーに抱き着いているルークを認識するなり、ピクリと反応するとすぐに向かってくる。
それに対してルークは凄く嫌そうな顔させたが、すぐに見せつけるようにルーをぎゅっと抱きしめる力を強くする。
それを見たユーリは先ほどとは打って変わって剣吞な空気を纏う。
見る者が見たら思わずたじろぐ程だが、ルークには全く効果はなく逆にキッと睨みつける。

「んでお前がここにいんだよ!」
「それはこっちのセリフだっつの。…毎回毎回、いい加減にルーから離れたらどうだ坊ちゃん」
「てめぇの指図なんか受けるかよ!つーかなんでいつもいつも邪魔してくんだよ!!どっかいけよ!!」
「お前がルーから離れたらな」
「はっ!ぜってーいやだね!」

そしてそれを皮切りに始まったのはいつもの睨み合いと口喧嘩。
口ではユーリの方が圧倒的に優勢ではあるが、ルークはルークでそれに全くへこたれずにぎゃんぎゃんと言い返すのでいつまでも平行線のままだ。

いつの間にか二人の間から抜け出したルーは、一体何にそこまで怒っているのだろうかと不思議そうに思いながらも二人を見守る。
同じく様子を見ていたアニスが呆れた様子で呟く。

「…なんだろう…この物凄い敗北感…。」

なんでここに女の子がいるのに、男と男が男を取り合っているのだろうか。
一癖二癖あるこの二人だが、両者ともにイケメンだし、ルークは王子様で権力もあって金持ちで、ユーリは下町の出ではあるが器用でなんでも出来るしこのギルドの稼ぎ頭の一人だ。
そんな二人の愛情を一身に受けるルーはルーで凄い気がするが、一方でまぁルーだし…とも思うので、複雑な心境だ。
はぁっと小さくため息をつき肩を落とすアニスを、ルーはじっと見るなり、んー…っと考える。
それに気づいたアニスは首を傾げる。

「?何?」
「あ、うん、確かにアニスは料理も上手いし、裁縫もできるし、掃除もできるし、可愛いから…良いお嫁さんになりそうだよな~って思ってさ」

すると、それまで喧嘩していたはずのルークとユーリがぴたりと止まる。
一方で思ってもみなかったルーの発言にアニスはきょとりとしていたが、にこにこと優しい笑みを浮かべているルーを前に徐々に顔を赤く染める。

「~~~~~っ!!」
「え、どうし…」
「「!ルーっ!!」」
「え!?」



その後、なんでお前は誰彼構わずとルークとユーリから説教を受ける羽目になったルーは訳が分からず、ただただ困惑していた。






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