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拍手小話ログ 10

◆ルーのかっこいい基準



陽も暮れ、夕暮れから夜へと空色が変わっていく頃、バンエルティア号にある食堂では夕食をとる仲間達で賑わっていた。

その食堂の一角にわいわいと楽しく食事を取る一つのグループがあった。
その中心にはルーがいて、ルーを取り囲むようにこのアドリビトムの中でも歳の若いマオやルカ達の姿があり、美味しい料理に舌鼓をうちつつ、会話に花を咲かせていた。

「ルーって結構身長とか体格気にしているよね。なんで?」
「だって大きい方がかっこいいだろ?俺はかっこよくなりたいんだ!」

マオからの突拍子もない質問を振られたルーは拳をぐっと作り熱弁する。
それに対してマオはといえば、え~と声を上げる。

「えー、ルーが?それ無理じゃない?」
「なっ!?なんでだよっ!」
「だって想像つかないし。ルーって童顔だし、雰囲気もどっちかというとかっこいいより可愛い系じゃん?」
「ま、マオ、それは言い過ぎだよ…例え本当のことでも…あ」

思わず口を滑らせたルカは、はっとして口を紡ぐ。
だが、ルーの耳にはしっかりと届いていて、ガーンとショックを受けていた。

「ルーがかっこよくねぇ…。じゃあ身長伸ばすためにも牛乳飲まないとだね」
「う゛っ…」

ジーニアスから差し出されたコップには、ルーが手を付けられなかった牛乳がなみなみ入っていて、思わず怯む。
とりあえず渋々それを手にしたルーだったが、恐る恐る鼻を近づけくんくんと匂いを嗅ぐとそのまま顔を歪めたまま、ぷいっと顔を背けると僅かに遠ざけるようにちょんとテーブルの端の方に置いた。

多分そういう仕草(ところ)からどうにかしないと、可愛いから抜け出せないんじゃないかな。

そうその場にいた皆が思う。
一方で全く気付いていないルーは、大きくなるために何かいい方法はないだろうかと考えていた。

「じゃあさ、ルーはどんな感じにかっこよくなりたいの?」

カイルの素朴な問いかけに、ルーは待ってましたと言わんばかりにぐっと手を握りしめる。

「俺はユージーンみたいに大きくてむきむきマッチョになりたいんだ!」

それは絶対無理だと思う。

皆が一斉に心の中でツッコミをいれる。
だが、本人はキラキラと目を輝かせており、それを口に出すことはできなかった。

その後その話をマオ達から聞いたユーリとルークは、今のままでも充分かっこいいとルーを必死に説得していた。






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