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第26話


***


それはルー達がガルバンゾへ向かうことが決まった、その日のこと。
各自解散となった後、ジェイドは不貞腐れているルークを研究室に連れて行った。

「なんであの黒ロン毛が行けて俺は行けねぇんだよ!!仕事っつったって大した量ねぇじゃん!!」
「大した量でないのならさっさと終わらせれば良かったのではないですか?」
「あ~くっそ、あいつばっか!」

イライラ全開のルークに、ジェイドは胡散臭い笑みを浮かべる。

「本当にあなたはルーが好きですねぇ。」

突然の直球を受けたルークはすぐにボッと顔を真っ赤にし、狼狽する。

「!!!?ばっ!!なななななに言い出しやがる!!!」
「いや~青いですねぇ、あのルーク様も恋には奥手ですか」
「!てめぇっ馬鹿にしてんじゃぬぇ!!!そんなんじゃねぇし!!!」
「おや?そうですか?いつも誰よりもあの子を気にかけているじゃないですか。ナタリアが泣きますよ?」

ナタリアという単語が出たルークはぴたりと一瞬止まったが、すぐにムスッとした表情を浮かべる。

「あいつが泣くかよ。…つーか、ナタリアは俺じゃなくてあいつだろ」
「おや、嫉妬ですか?」
「はぁ!?誰が嫉妬なんかするかよ!こっちからしたらいい加減さっさとしろって…」
「あの子にキスの一つもできないあなたが言いますか」
「うっせーよ!!!!」

顔を真っ赤にして憤慨するルークに、おやおやとジェイドは面白そうに笑みを浮かべる。

「まぁいいです。そんなことよりも確認したいことがあるんですよ」
「…お前が言い出したんだろ、この鬼畜眼鏡…」

ぼそりと呟くルークを無視して、ジェイドは透明の四角いケースのような物を取り出し、それをルークの前に置く。

「あ?なんだそれ」
「あなたにはこの中身を確認してほしいんです」
「はぁ?何もねぇじゃん」

馬鹿にしてんのか?とルークがジェイドをじとりと睨むが、ジェイドは真面目な顔でルークを見る。

「何もないかどうか、あなたに確認してもらいたいんです。実は、つい最近までこの中にルーの髪の毛が入っていたんです。」
「ルーの?」
「ええ、以前ローレライがルーの体を借りた際に、突然伸びたあの髪…その一部です。あなたが頭痛で寝込んでいる間にルーから切った髪を貰っていたんですよ」
「ふーん。…で?」
「その髪が忽然と姿を消したんですよ」
「誰かが捨てたんじゃねぇの?」
「このケースには鍵がかかっていて、私しか開けられません。ですが、無くなっているんですよ。」
「はぁ?」

ジェイドの話にルークは眉を寄せる。
ルークからしたら、だからなんだという気分だ。だが、至極真面目な顔をしているジェイドに、ルークは口を閉じる。
その姿を見て、ジェイドはケースを見ながら口を開く。

「ルークも見た通り、この中は空っぽのように見えます。ですが…そう見えるだけ、そんな気がしています。なのでそれをあなたに確認してもらいたいんですよ」
「ああ??だから、さっきから意味わかんねーんだよ。」

徐々にイライラし始めたルークに、そうですねとジェイドは呟く。

「では実際に試してみましょう。ルーク、準備はいいですか?」
「さっさとしろよ」

ルークの返答を受けたジェイドは、持っていた鍵を取り出し、ケースの鍵穴に差し込む。
そして、それをゆっくりと開いた。
その時だった。

「っ!!?」

ルークは突然酷い頭痛を感じ、その場にしゃがみ込む。
頭を両手で押さえながらその痛みに耐えている姿を見て、ジェイドは直ぐに持っていたケースの蓋を閉じる。
すると、徐々に頭痛が和らいでいき、ルークはぐったりとその場に座り込む。

「大丈夫ですか?ルーク」
「ってぇ…。つーかいきなり何なんだよ!!何の嫌がらせだ!!」
「音素です」
「あ…?」
「恐らくルーの髪が、音素になったんだと思います。…まずいですね」

そうぽつりと呟いたジェイドの方を見ると僅かに険しい顔をしていて、ルークは眉を寄せる。

「あ…?何がだよ」
「音素はこの世界になかった。ですが、ルーを通して作ることが出来てしまう。あなたは目の当たりにしているはずです、音素のエネルギー力を。」

そこまで聞いたルークは目を見開く。
ジェイドが何を言おうとしているのかを理解したのだ。
そして、ふらりと立ち上がったルークの顔は、先程とは違っていた。



***







「オールドラントでは音素に還っても元々音素の世界、問題はありません。ですが、この世界に音素はない、音素へ還るのに時間が掛かったのかもしれません。ですが、その音素自体の還る場所がなく、その場に留まってしまった。私はそう考えていますが、それが問題なんです。…この世界は次の資源を探している。もし、この事実が他の…例えば為政者等の存在に知られてしまったら、どうなるか、想像できませんか?」

話を聞いていたルーは勿論、ユーリとアッシュもその事実に思わず口を閉ざす。
静かになったその場で、ジェイドはルーを見据えながら、口を開く。

「このままでは、あなたは生きる資源…燃料にされてしまう恐れがあるんです」
「!!」

あまりの話にルーは思わず言葉を失ってしまう。
すると、スッとユーリはルーの前に出ると鋭い視線をジェイドへ向けた。

「…けど、そんな音素事態を知らないこの世界で、しかも普通に目に見えないものが、他に知られるとは思えねぇけどな。」
「そうですね、私もそう思っていました。…ですが、それは甘い考えだった可能性は否定できません。」
「…どういうことだ?」

訝し気に問うと、ジェイドは険しい表情を見せる。

「…今回のクーデターの首謀者…その者が音素の存在に気付いている可能性が極めて高いんですよ。」

















続く

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