第25話
***
朝食を取り終えるなり、ルーはルークの部屋へと向かった。
今日はルーク、ロイド、クレスと一緒に採掘クエストに行くことになっていた。
ロイドとクレスには食堂で会うことが出来たが、ルークの姿がなかったので迎えに行くことにしたのだ。
ルークの部屋に近づくと、よくライマの人間が集まる場所から賑やかな話し声が聞こえる。
何だろうとルーがそちらの方に顔を覗かせると、アニス、ティア、ガイが集まって何か作業をしていた。
すると、ルーの存在に気付いたガイが笑顔を見せ手招きをしたので、ルーはそれに誘われるように近づく。
「あ、ルーじゃん。おはよー」
「おはよう。何してんだ?」
「ルーク様達の誕生日が近いんだけど、その誕生日会の準備。こうパーッと派手な社交界みたいなやつをやるからさ!その招待客に着けてもらうコサージュとブートニアを作ってるんだ~」
「へ~」
アニスは丁度作っていたコサージュ達をほらと見せる。
それは特殊な加工がされているセレニアのような白い花で造られていて、とても綺麗だった。
よくよく見るとどうやら作り始めたばかりの様で、数個しかできていなかったが、材料の山を見る限り恐らく沢山作らないといけないように感じた。
それだけの人数が来ると言うことだろう。
「社交界か~ルーク達ってやっぱり凄いんだな」
感心しきっているルーに、アニスは思わず首を傾げる。
「ほえ?ルーだって元々王族なんでしょ?やってもらってたんじゃないの?」
「んー…誕生日って言っても俺はそういうのやらなかったから」
「そうなの?」
「うん、俺屋敷に軟禁状態だったから、あんまり社交界みたいなのに出たことないんだ。それに俺の誕生日を祝ってくれたのは、母上とガイとナタリア、ペール…くらいだったから。」
誕生日の記憶を辿っても、ルーにとって誕生日は退屈な毎日の1日でしかなかった。
ただ、唯一、母上やガイ達、そしてヴァン師匠からおめでとうと言ってもらえたのは覚えている。
誕生日を迎えたからどこかに出かけられるわけでもなかったけれど。
「それでもなんか嬉しかったんだ。…ナタリアのケーキから逃げるのは大変だったけど…」
「私がどうかしましたの?」
「えっ!?」
突然背後から現れたナタリアにルーは思わずぎょっとなり、ざっと身を引いた。
どうやらケーキのくだりは聞こえなかったようだが、あまりに機敏な反応を見せたルーに不審な視線を送るナタリア。
「一体何ですの?」
「あぁ、えぇっと…」
こういう時にはぐらかすのが苦手なルーは一生懸命にこの場を切り抜けようと頑張って目を泳がせる。
すると、ふと目に入ったのはルークの姿。
「あ、ルーク!!」
助かった!とルークの元に駆けよると、ルークは眠たげな表情でルーの方を見る。
「ルークおはよう!」
「はよ。…お前ら何やってんだ?」
「あなたやアッシュの誕生会準備よ」
「ふーん」
ティアの返答を受けたルークは興味なさそうにそう呟くと、それを見たナタリアが腰に手を当てながら眉を吊り上げる。
「ルーク、もうすぐあなたも一つ大人になるのですから、もう少ししゃんとなさってください。」
「へーへー」
ルークは出たよ面倒くさいのがと顔を歪ませつつも、手をひらひらさせすぐにその場から逃げるように離れた。
その姿にもう!とプンプンさせるナタリアとため息をつくティア。
そんな二人を見て、アニスはルーの方を見る。
「やっぱりルーとルーク様って全然違うよね~。」
「本当ですわ。ルーを見習って欲しいです」
怒っているナタリアにルーは困った表情を浮かべて首を振る。
「俺なんか見習うものなんて何もないよ。ルークの方が凄いじゃん」
「例えばどんなところですの?」
「ん?んー…そうだな、いろいろあるけど…ルーク頭いいじゃん、俺ルークに勉強いっぱい教えてもらって、文字も沢山読めるようになったんだ。」
「王族として当然ですわ。」
ナタリアに言われたそれにルーは言葉を詰まらせた。
確かに王族ならある程度の知識はあるのが普通なのかもしれない。
けれど自分は屋敷にいたときはロクに勉強をしてこなかった。
それでいろんな人を困らせてきたのを知っていたから、無知だったから大罪を犯したのを知ったから。
ルークから文字を通していろいろ教えてもらう度に、ますます思った。
本当に俺は馬鹿なんだな…。
黙り込んでしまったルーに、ティア達が顔を見合わせる。
「そうだな、ルーの言う通りにルークにもいい所は沢山あるわけだし…」
「ガイ、あなたはルークを甘やかしすぎですわ」
「まぁまぁ!ルーク様には当日頑張ってもらいましょ!ちゃんと正装したルーク様す~ごく綺麗なんだから!これぞ王子様!!って感じ!」
「そりゃあ正真正銘の王子様だからな」
目を輝かせながら熱弁するアニスにガイが苦笑いを浮かべる。
それに対してナタリアは小さくため息をつきながら、そうですけどと呟きつつも困った表情を浮かべる。
「ですが、このまま当日私のエスコートが出来るかどうかは不安が残りますわ…。」
「エスコート?」
「ルークはナタリアの婚約者だからな。社交界の場ではそれを示さないといけないんだ」
「そっか」
ガイの話を聞いて、そういえばそうだったと思い出し納得する。
ルーはちらりとアッシュの方を見ると、アッシュはこちらの会話が耳に入っていないのか、なにやら難しい顔で書面を読んでいた。
朝食を取り終えるなり、ルーはルークの部屋へと向かった。
今日はルーク、ロイド、クレスと一緒に採掘クエストに行くことになっていた。
ロイドとクレスには食堂で会うことが出来たが、ルークの姿がなかったので迎えに行くことにしたのだ。
ルークの部屋に近づくと、よくライマの人間が集まる場所から賑やかな話し声が聞こえる。
何だろうとルーがそちらの方に顔を覗かせると、アニス、ティア、ガイが集まって何か作業をしていた。
すると、ルーの存在に気付いたガイが笑顔を見せ手招きをしたので、ルーはそれに誘われるように近づく。
「あ、ルーじゃん。おはよー」
「おはよう。何してんだ?」
「ルーク様達の誕生日が近いんだけど、その誕生日会の準備。こうパーッと派手な社交界みたいなやつをやるからさ!その招待客に着けてもらうコサージュとブートニアを作ってるんだ~」
「へ~」
アニスは丁度作っていたコサージュ達をほらと見せる。
それは特殊な加工がされているセレニアのような白い花で造られていて、とても綺麗だった。
よくよく見るとどうやら作り始めたばかりの様で、数個しかできていなかったが、材料の山を見る限り恐らく沢山作らないといけないように感じた。
それだけの人数が来ると言うことだろう。
「社交界か~ルーク達ってやっぱり凄いんだな」
感心しきっているルーに、アニスは思わず首を傾げる。
「ほえ?ルーだって元々王族なんでしょ?やってもらってたんじゃないの?」
「んー…誕生日って言っても俺はそういうのやらなかったから」
「そうなの?」
「うん、俺屋敷に軟禁状態だったから、あんまり社交界みたいなのに出たことないんだ。それに俺の誕生日を祝ってくれたのは、母上とガイとナタリア、ペール…くらいだったから。」
誕生日の記憶を辿っても、ルーにとって誕生日は退屈な毎日の1日でしかなかった。
ただ、唯一、母上やガイ達、そしてヴァン師匠からおめでとうと言ってもらえたのは覚えている。
誕生日を迎えたからどこかに出かけられるわけでもなかったけれど。
「それでもなんか嬉しかったんだ。…ナタリアのケーキから逃げるのは大変だったけど…」
「私がどうかしましたの?」
「えっ!?」
突然背後から現れたナタリアにルーは思わずぎょっとなり、ざっと身を引いた。
どうやらケーキのくだりは聞こえなかったようだが、あまりに機敏な反応を見せたルーに不審な視線を送るナタリア。
「一体何ですの?」
「あぁ、えぇっと…」
こういう時にはぐらかすのが苦手なルーは一生懸命にこの場を切り抜けようと頑張って目を泳がせる。
すると、ふと目に入ったのはルークの姿。
「あ、ルーク!!」
助かった!とルークの元に駆けよると、ルークは眠たげな表情でルーの方を見る。
「ルークおはよう!」
「はよ。…お前ら何やってんだ?」
「あなたやアッシュの誕生会準備よ」
「ふーん」
ティアの返答を受けたルークは興味なさそうにそう呟くと、それを見たナタリアが腰に手を当てながら眉を吊り上げる。
「ルーク、もうすぐあなたも一つ大人になるのですから、もう少ししゃんとなさってください。」
「へーへー」
ルークは出たよ面倒くさいのがと顔を歪ませつつも、手をひらひらさせすぐにその場から逃げるように離れた。
その姿にもう!とプンプンさせるナタリアとため息をつくティア。
そんな二人を見て、アニスはルーの方を見る。
「やっぱりルーとルーク様って全然違うよね~。」
「本当ですわ。ルーを見習って欲しいです」
怒っているナタリアにルーは困った表情を浮かべて首を振る。
「俺なんか見習うものなんて何もないよ。ルークの方が凄いじゃん」
「例えばどんなところですの?」
「ん?んー…そうだな、いろいろあるけど…ルーク頭いいじゃん、俺ルークに勉強いっぱい教えてもらって、文字も沢山読めるようになったんだ。」
「王族として当然ですわ。」
ナタリアに言われたそれにルーは言葉を詰まらせた。
確かに王族ならある程度の知識はあるのが普通なのかもしれない。
けれど自分は屋敷にいたときはロクに勉強をしてこなかった。
それでいろんな人を困らせてきたのを知っていたから、無知だったから大罪を犯したのを知ったから。
ルークから文字を通していろいろ教えてもらう度に、ますます思った。
本当に俺は馬鹿なんだな…。
黙り込んでしまったルーに、ティア達が顔を見合わせる。
「そうだな、ルーの言う通りにルークにもいい所は沢山あるわけだし…」
「ガイ、あなたはルークを甘やかしすぎですわ」
「まぁまぁ!ルーク様には当日頑張ってもらいましょ!ちゃんと正装したルーク様す~ごく綺麗なんだから!これぞ王子様!!って感じ!」
「そりゃあ正真正銘の王子様だからな」
目を輝かせながら熱弁するアニスにガイが苦笑いを浮かべる。
それに対してナタリアは小さくため息をつきながら、そうですけどと呟きつつも困った表情を浮かべる。
「ですが、このまま当日私のエスコートが出来るかどうかは不安が残りますわ…。」
「エスコート?」
「ルークはナタリアの婚約者だからな。社交界の場ではそれを示さないといけないんだ」
「そっか」
ガイの話を聞いて、そういえばそうだったと思い出し納得する。
ルーはちらりとアッシュの方を見ると、アッシュはこちらの会話が耳に入っていないのか、なにやら難しい顔で書面を読んでいた。