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第25話









全てが崩壊していく音と多くの人々からの悲鳴。
それが鳴りやんだ後に広がるのは真っ暗な海と空。
辺りには瘴気が漂い、居心地の悪く地獄のような世界。
その中に一つ一際朱く綺麗な髪をした一人の少年がいた。
少年は必死にその底なしの海に沈んでいく子どもを助けようとしていた。
だが、それも叶わず沈んでいくその一つの命を前に、絶望の色に顔を染める。
そして彼に向けられる憎悪と失意の視線。
一人暗闇に取り残されたその少年は――――。



「っ!」


ハッと目を覚ましたルークは、天に伸ばした手と天井が目に入る。
暫しぼんやりとそれを見つめていたが、スッと意識がはっきりとするなりガバリと起き上がる。
周囲を見渡せばそれはバンエルティア号のルークの自室で、横のベッドにはガイが眠っているのが見えた。
ルークはゆっくり息をつき、そして己の掌に視線を落とす。

「…またか」













早朝。
ルーとユーリ、ミュウはバンエルティア号にある自室にいた。
ルーは目を閉じ、自らの中を巡る音素の流れに意識を集中させる。
オールドラントの頃、旅を出てティアから教えてもらった音素の訓練、己の犯した罪と向こうのジェイドからの言葉もあり、この訓練がいかに大切かを理解した上でこの世界に着てからも時間を見つけては行ってきた。
深い集中の中にいるルーを、ユーリは壁にもたれながら見守っていた。
音素の訓練内容について以前ルーに軽く教えてもらったが、そもそもユーリにはない音素。なかなか理解することができなかった。
リタ曰くその感覚は魔法が使えるとか使えないとかと同じようなモノだそうだ。
確かにその通りと言えばその通りなのだが、それがルーにとって必要不可欠なものであるという知識しかないこと、そしてそれを感じ取ることができないことになんともいえないもどかしさを覚えたこともあった。

そういえば、坊ちゃんは反応してたよな…。

ローレライが現れたあの時、ルークは頭痛に苦しんでいたのを実際に目の当たりにした。
ローレライは第七音素の集合体だとルーは言っていた。
それは音素の塊にルークが反応したということなのだろう。
ルーも前の世界では度々頭痛に苦しんでいたという。
その点を考えると、ルークとルーが世界は違えど同じ“ルーク”という存在だから、なのだろうか。
時折感じる共通点。ただ、やはり二人は全くの別人で、それは本人たちは勿論、周囲の人間も同じ印象だった。

まぁ当たり前っちゃあ当たり前か。

そんなことをぼんやりと考えていると、フッと目を開き集中を解いたルーが目に入る。
するとルーは何度か目を瞬かせ、自分の両手に視線を落とした。

「どうした?」
「あ、うん…。…なんつーか…、…?」

ルーは何か考えて首を僅かに傾げる。
それを見たユーリは眉を寄せた。

「大丈夫なのか?」

真剣みを帯びたユーリに、ルーは笑顔で返す。

「大丈夫だよ。なんかやばいとかじゃなくてさ。ローレライの鍵もちゃんとあるし、音素も感じるから。なんつーか、ちょっと、いつもとなんか違うような…って思っただけ。それにもしかしたら昨日のクエストで疲れが残ってるだけかもしれないし。」
「…ならいいんだが」
「ご主人様、ご飯食べに行くですの!ご飯を食べると元気になるですの!」
「そうだな」

元気なミュウを肩に乗せると腹減ったーとルーは呑気な声をあげながら歩き出す。
その後ろ姿を見ながらユーリも後を追う様に歩き出した。


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