第18話
その後、ルーはユーリとカロル、そしてエステル達とも合流すると皆で散策を再開する。
皆でワイワイしながらの散策はとても楽しく、自然と笑みが零れた。
楽しいひと時であったが、沢山歩いたこともあり日が暮れ始めた頃にはクタクタな状態で、一行は体を休ませるために宿屋に戻ると、各自の部屋へと向かう。
ルーは部屋に入るなり、思わずベッドにダイブする。
「は~疲れた…けど楽しかったな!」
じんわり広がる疲労感を感じながらも、今日のことを思い返し笑顔を見せる。
そんなルーを見てユーリは笑みを浮かべる。
「ルー」
「ん?」
呼びかけられ、ルーはユーリの方を見ると、ユーリはソファーに腰をかけた状態で手招きをしていた。
ルーは首を傾げながら、体を起こしユーリの元に歩み寄る。
「ん?なんだ?」
「手、出してみ」
「?」
首を傾げつつも、言われた通り手を出すと、ユーリはその掌の上にぽとりとある物を落とす。
「!これ…!」
それは昼頃ルーがたまたま立ち寄ったあの石の装飾品店にあった、沢山の石たちの中で一番綺麗だと手にした翡翠色を含んだあの石のネックレス。
バッと顔を上げ、ユーリの方を見る。
「今日、お前が見てた店にあったやつ」
「え、な、なんで…」
「買った。それが一番綺麗だったからな」
ルーは目をまん丸にしながら驚く。
「で、でも、これ…」
戸惑いながら言葉を探しているルーにユーリは首を傾げたが、すぐにああと察する。
「大層な宝石の偽物、なんだろ?」
「!なんで知って…」
「お前が行った後、それが目に入って、手に取ったときに言われたんだよ。本物だとか偽物だとか。まぁ、俺にとっては別にどっちでもいい話だったからな。」
「え?」
「あの中でそれが一番綺麗だと思った。それが何だろうが、良いと思ったんなら関係ねぇだろ」
そう、ごく自然に言うユーリにルーは口を半開きにした状態でぽかんとした表情を浮かべる。
ユーリはそんなルーを見て、なんて顔してんだよと軽く笑う。
「それはルーに俺からの旅土産だ。…その色、光に当てるとお前の目の色に似てるからな」
愛おしいものを見る目で優しく微笑むユーリに、呆然としていたルーは見る見るうちに顔を赤らめる。
そして同時に昼間に感じていた冷たく暗かったものが晴れ、温かく感じ始める。
「い、いいのか…?」
「ああ、それはお前の為に買ったんだ」
ルーは手の中にある石を改めて見ると、窓から注ぐ夕日の光を浴びて煌きを見せるそれに嬉しそうに微笑んだ。
「…ありがとう、ユーリ!」
とびっきりの笑顔を見せたルーに、ユーリは笑顔で返した。
陽が落ち、夜がきたことを知らせる夕闇が広がり、街頭に明かりが灯り始めた頃。
その灯りから逃げるように街の路地を移動する2つの影。
「見つかったか?」
「いや…見失った…。けど、そう遠くには行っていないはずだ。」
そうはっきりと断言した影はふっと笑みを浮かべた。
「…朱い髪に、翡翠色の目は」
続く
※TOVは箱派なのでおさげっこはでません…すみません!