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第15話



「…やっぱり、女の子の方がいいのか…?」

体を縮こませしょぼんとするルー。
ユーリはといえばルーの予想外の発言に豆鉄砲を食ったようにぽかんとする。
だが、次の瞬間理性が振り切れそうになるのを感じる。可愛すぎる。
再び顔に熱が集まるのを感じたが、今は妙な方向に勘違いし始めているルーの誤解を解く方が先決だ。
そう考えなんとか自制することができたユーリは、俯いたままのルーの頬に手を当てる。
それにぴくりと反応したルーがそろそろと顔を上げると、不安げに揺れる目が見えた。
そんなルーにユーリは優しく諭すように自分の思いを伝える。

「俺はお前がいいんだよ。男だろうと女だろうと、お前だったらどっちでもいい。性別なんかは二の次だ」
「ほ、本当か…?」
「ああ」
「そっか…よかった!」

ルーはホッと安堵し、照れながらも嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
それを直視したユーリは衝動のままルーを引き寄せて抱きしめる。

やばいやばいやばいやばい可愛い可愛い!

完全にどツボに入ったユーリはいつもの飄々とした冷静さはなく、自分の中で込み上げてくる衝動を僅かに残された理性を総動員して必死に抑え込もうとしていた。

こんなところで、理性を切らせるわけにはいかねぇ…!耐えろ俺!

だが、そんな壮絶な葛藤を繰り広げているユーリに追い討ちをかけるように、ルーは安堵感からかすりっと自ら体を摺り寄せる。

プチンとユーリの理性がキレるその寸前、突然ガラッと浴場の扉が開く。

「あー、疲れ…」

ぐったりとしながらタオル一枚で浴場へ入ろうとした買い出し組のゼロスとアスベル。
だが、浴場の扉が壊れるのではと思うほどの勢いで閉めたユーリに二人は目が点になる。

「え?…ユーリ?」
「…入ってくんじゃねぇ」

アスベルが恐る恐る声を掛けると、目の据わったユーリが扉を背にした状態で立ちふさがるなり、地を這うように低い声でぼそりと呟く。
その威圧感に思わずビクリと二人が体を震わせる。そして思う。
え、何事?





浴場に残されたルーはきょとんと扉の方を見る。
あまりの速さに全く頭がついていかず、暫し呆然としていたが、ルーはハッとする。
ここが共同で使っている男湯であること、そして自分が今女の体になっていることに。
その重大な誤りに今更ながら気付いたルーは慌てふためく。

どどどどどどうしよう!!?こんな体見せらんねえっ!!

オロオロとしながらも、なんとか自分の体を隠すものを探す。
だが、ここはお風呂場。あるとすれば、今使っていた薄めのタオル一枚と桶くらいなものだ。
とりあえずそれでなんとかならないか試行錯誤していると、ふと目に入ったのは大きな浴槽。

そうだ!ここなら!!









「あれ?どうしたんだい?」
「皆、お風呂入らないの?」
「クレス!ガキんちょ!いいところにきた!急いでルーかフレン呼んでこい!俺らじゃどうにもなんねぇよ!」
「え?」

ユーリ達同様に買い出し組であるクレスとジーニアスは言葉の意味が理解できず首を傾げる。
だが、それもすぐに理解することになった。
ふと視線をゼロス達からずらすと、そこには禍々しい黒いオーラを纏うユーリがいたのだ。

「!?」
「うわっ、え、何!?どうしたの!?」
「こっちが聞きてぇよ!!俺達は風呂入りたいだけだっつの!」
「何か見せたくないものが中にある、とか…?」

アスベルの言葉にピクリと反応するユーリ。
今日の買い出し組は帰って来たばかりでルーの体が女になっていることを知らない。
知ってしまった場合、このギルド1女ったらしであるゼロスは絶対に見たがるはずだ。

ぜってー見せねぇ…!

「あれ?これルーの服じゃない?」

ほらとジーニアスが指さす先にあるのは、ルーの服。

「あ、本当だ」
「は~?まさかお前、ハニーの体見せたくねぇから入んなって言ってんの?それともイチャイチャしたいからとか?」
「両方だよ」
「マジかよ…。イチャつくのは自分たちの部屋でやれよ!ハニー!ユーリの野郎をどうにか…うおっ!!??」

ゼロスが扉に手をかけ開けようとした次の瞬間、ユーリの回し蹴りが炸裂する。
それを寸でのところで避けることができたゼロスだったが…

「入んじゃねぇっていっただろ」

そこには完全にキレ気味のユーリがいて、目の当たりにしたゼロス達は顔を引きつらせる。

あ、これ、やばい。

そう皆が思った次の瞬間、突然浴場の方でバッシャーンと物凄い大きな水飛沫の音が響く。

ハッと我に返ったユーリは勢いよく扉を開け、ダッと浴場に駆けこむと、そこには熱い湯に浸かりのぼせたルーが目を回した状態で倒れていた。
ユーリはすぐにルーを抱き上げると、急いで涼しい場所へ移動する。

「ルー!!おい、しっかりしろ!」
「えっ!?ハ、ハニー…ぶっ!!」

ユーリ同様に駈け込んで来たゼロス達はルーの姿を見て思わず目を疑うほど驚愕した。が、ユーリがぶん投げた桶がゼロスの顎に命中し、ゼロスはそのまま床に突っ伏す。

「…見たな…?」
「!!!??」

その後、フレンが駆けつけるまでブチ切れたユーリの制裁により、男風呂は悲鳴と轟音で騒然とする事態となった。









続く



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