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第14話





その後、ルーはユーリが持って来てくれた食事をとっていると、ロックスや他の仲間達が見舞いにきた。
心配させてしまって申し訳ないと思いつつも嬉しくて、思わず笑みが零れた。
そして賑やかな部屋で談笑していく内に時間は経っていった。

「あ」
「みゅ?ご主人様どうしたんですの?」

皆とも別れ暫し休息を取って大分調子も戻ってきた頃、水を飲もうかと水のボトルを見ると、既に空になっていた。
ルーはベッドから出るなり、ボトルを手にする。

「水貰いに行ってくるよ」
「みゅ!ミュウも行くですの!ご主人様に何かあったら大変ですの!」
「もう大丈夫だって」

苦笑いを浮かべるルーだが、ミュウはぴょんと跳ねながらルーの肩に乗る。
降りる気配のないミュウに小さく息をつきつつ、ルーは部屋を出る。

体は確かに楽になった。
けれどなんとなく自分の中でもやもやしたものが残っているのをルーは感じていた。

ユーリ大丈夫だったかな…。

考えれば考えるほど気持ちが落ち込んでいく。
ユーリは優しい。
だが、何をやっても上手くいかない自分に、その内愛想をつかしてしまうのではないかとも思う。
それに自分はレプリカで中身はまだ子供の大罪人だ。
その事実が明らかになった後もユーリは、変わらないと、傍にいてくれると言ってくれた。その言葉を信じていないわけじゃない。
けど…。
脳裏を巡るのは仲間から見捨てられたあの時の光景。
今では仲間達とのわだかまりはないものの、どうしても消すことのできない記憶のひとつ。

自分が悪いのに、本当に俺はどうしようもないな…。

一度考え始めると限りなく悪い方へ考え込むルーの悪い癖が発動し、俯きがちに歩いていると賑やかな話し声が聞こえてきた。
ルーは首を傾げそちらの方を壁越しで覗き込むとルビア、コレット、イリアが廊下でおしゃべりをしていた。

「昨日のユーリ凄かったわよね、ルーを軽々お姫様抱っこしてたもの!」

興奮したようにその時を思い出しながら話すルビアは目がキラキラと輝いていた。
だが、ルーはと言えばとんでもないことを聞き、目を丸くする。

お、お姫様だっこ!?

全く身に覚えがない。ということはお酒で自分が倒れたあの時のことなのだろう。
皆のいる前でそんな情けない姿を見せていたのかと思うと、ただただ羞恥心しかない。
ルーが顔を赤くし、恥ずかしさに耐えていると、そういえばとにやにやしながらイリアが話し始める。

「ユーリといえば、今日クエストで指名入ったらしいわ。しかも、どこぞのお嬢様が絡んでるらしいって」

ピクリと反応するルー。
それに対してルビアは更に興奮気味にそうそう!と続ける。

「あたしも聞いた!絶対ユーリ狙いよね!」
「?そうなの?」
「だってクエストの内容も全然大したことのない採掘なのに、メンバー指定をしてきたらしいわ。しかもその受け渡しもユーリからってところまでが依頼内容なんだって。アンジュは一度断ったみたいなんだけど、今回だけ!って頼み倒されたらしいの。」
「そうなんだ、凄いねユーリ」

素直に感心するコレット。
それとは対照的にルビアの熱は上がっていく。

「ユーリってかっこいいし、強いし、器用でいろいろできるし、引く手あまたよ、きっと!それに比べてカイウスなんて…」
「…」

ルーは俯き、静かにその場を離れる。
その間にブツブツとカイウスの愚痴をこぼし始めるルビアに、イリアはまーた始まったと呆れ顔を浮かべる。
にこにこと笑顔を浮かべなら聞いていたコレットは、でもと口を開く。

「でも、ユーリはルーが大好きだから、関係ないんじゃないかな?」
「確かに…あんなにわかりやすくルーしか眼中にないって感じは凄いわよね。しかも意外と嫉妬深いし」
「そうそう!でもルーもモテるのに、ルー自身全然気づいてないみたいだし、ユーリも大変よね」

でもそれはそれで面白いからと3人の恋話は尽きなかった。











「ご主人様…?」

ミュウは心配そうにルーの顔を覗き込む。
それにルーは眉を下げ、力なく笑い大丈夫だと言う。
ユーリが人気者なのは今に始まったことじゃないし、自分がどうこう思うのはお門違いだ。
そう思うのに心は重くなっていくばかりで、ルーは深くため息をつく。
ルーは俯き、先程聞いた会話をグルグル考え込みより一層沈んでいく。
その時だった。

「うおっ!?」
「!」

角を曲がろうとした直後、突然ドンッと勢いよく何かにぶつかる。
それにルーはよろめきつつも咄嗟に身構えなんとか倒れず踏みとどまることができた。
思いがけない衝撃に目を閉じていたルーだったが、バッと顔を上げ見るとそこにいたのはルークだった。

「!ルーク…」
「ああ?!って、ルー?」
「ご、ごめん!大丈夫か!?」

焦りながら怪我はないかとルークの体を忙しくと見ていると、そのルークの背後からティアが現れた。

「ルー、大丈夫?ごめんなさい、ルークがちゃんと前を見てないから」
「はあ!?俺のせいかよ!」
「る、ルークは悪くないって!俺が前見てなかっただけなんだ。ルークごめんな、ケガは…」
「この程度別になんてことねぇよ」

手をひらひらさせ、特に怪我はないアピールをするルークに、ホッと安堵する。
そんなルーにルークはぴくりと反応し、じっと見つめる。
それに気づいたルーは首を傾げていると、ルークは近づいてくる。
なんだろうと思って見ていると、ルークはすっと手を伸ばし、肩に乗っていたミュウを掴み持ち上げる。

「みゅ?」

首を傾げるミュウをルークは突然ぽいっとティアに放り投げた。

「みゅっ!!?」
「!ルーク!そんな乱暴に扱って、ミュウが可哀想だわ!」

なんとかミュウをキャッチしたティアはルークに非難の声を上げる。
だが、ルークはそれに全く聞く耳を持つことなく、ガッとルーの腕を掴む。

「ルーと話しあっからそいつ連れて部屋戻ってろよ。行くぞ」
「え?え?」

予想外の展開について行けず困惑するルーの腕を掴んだまま、ルークはずかずか歩き始める。
その後姿を見て、ティアは小さくため息をついた。


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