第13話
突然すぎるこの展開について行けず、ルーは目をぱちぱちと瞬かせる。
「フレンの料理ってそんなにすごいのか?」
一緒にいたロイドとクレスに問うと、フレンの料理を食べたことのある二人は何かを思い出し遠い目をする。
「…まぁ、凄いっちゃ凄いよな。」
「うん…、料理って奥が深いなって改めて思う料理だったよ…」
「????」
一体どんな料理なんだろうとルーは首を傾げる。
そしてふと時計を見ると、歓迎会が始まってから大分時間が経っていることに気付き、ここにまだ顔を見せないルークの存在が気になった。
「…ルーク、大丈夫かな…?様子見に行きたいな…」
「そうだね、そろそろ起きてもいい頃だし、料理でも持って…」
ルークに会いに行こうかと言いかけたクレスだったが、それを遮るように突如物凄いスピードで何かが横切る。
そしてそのままの勢いでルーにしがみ付いたのは、話の渦中にあったルークだ。
「!ルーク!」
ルーは突然のルークの登場に驚いたが、ようやくその姿が見られてホッとする。
だが、ルークはといえばルーにしがみ付きながらキョロキョロと周囲を警戒しながら見渡している。
不審過ぎるその行動にルー達は首を傾げる。
「??どうしたんだ?」
「どうしたも、こうしたもねぇよ!もう平気だっつってんのにガイとアッシュが今日は寝てろだの安静にしてろだの言いだして、ドアの前で待ち構えてやがるし!挙句の果てにはトイレにまでついて来ようとすんだよ!なんなんだよあいつら!意味わかんねぇーんだよ!うぜぇ!!!ジェイドも笑ってるだけで全然助けねぇし!つーかあれは完全に楽しんでやがった!!!」
なんとか隙を作って逃げ出してきたのだと言うルークはイライラ全開で、ルー達はお互いの顔を見合わせる。
きっとルークにとっては突然訪れた災難以外の言葉は見つからないのだろうけれど、ルークの話を聞いたルー達は、ルークが大切にされていることを感じ取り思わず笑顔を浮かべる。
「な、なんだよ!?」
「なんでもないよ、それより体の方はもう大丈夫なのか?」
「ん?ああ、つーかただ寝てただけだし」
「そっか、よかったな!」
ロイドとルークの会話を聞いていたルーは今度こそ安堵し、笑みを零す。
それを見たルークは僅かに頬を赤らめ、隠すようにふいっとそっぽを向く。
そんなルークにルーは不思議そうに首を傾げていると賑やかな声が聞こえてくる。
見ると、スタンがいて笑顔でこちらへ向かってくるのが見える。
「お、いたいた!ちゃんと食ってるかー?」
「うん。あ、でもルークはこれからだよ」
「なんだ、まだ食ってないのか?ちゃんと食えよ~!あと、ほらこれ!ちょーうまいらしいぞ!」
そう言ってスタンが差し出してきたのはピンク色の飲み物が入った瓶。
「それどうしたんだ?」
「リオンから貰ったんだ、皆で飲もうぜ!」
スタンは適当に皆のコップに注ぐ。
ルーはそれを手に取るなり、すんすんと香りを嗅ぐと甘い香りがした。
見ればロイド達は既に飲み始めていて、ルーも一口飲んでみるとそれはとても美味しいが、とても甘かった。
そういえば、リオンと言えばユーリに並ぶ甘党で、このギルドで甘党会らしいものを結成していることを思い出す。
いつもこういうの飲んでるのかなと考えながらこくこくと飲み進める。
スタンも自分のコップに注いで飲もうとした。すると、すっと目の前にリオンが現れる。
「ここにいたのか。ほら、持って来てやったぞ」
「ん??何を?」
「何をって…お前が言ったんだろ、僕が前に言っていたジュースを持って来いって」
「え?それってそこに置いてあったこれのことだろ?ピンクのジュース!」
そう言ってスタンはテーブルを指差しながら手元にある瓶をリオンに見せる。
リオンはそれを見るなり、眉を顰める。
「……僕は知らないぞ」
「……え?」
まさかのリオンの答えにスタンはピタリと固まる。
その姿を見たリオンは眉間の皺を深くした。
なんだろう、物凄く嫌な予感がする…。
「「・・・・・」」
二人は顔を見合わせたまま動けず、しんとその場が静まり返る。
すると。
「ローイド君!ハニー!楽しんでるー?」
突然現れたゼロスはがばりとロイドの肩に腕を回し、寄りかかる。
だが、いつもならすぐに反応を返してくれるはずのロイドから一向に反応がない。
不審に思い、顔を覗き込むと、顔を赤くしぼんやりと遠くを見てるロイドがいた。
「!?ロイド君!?」
ぎょっとしたゼロスだったが、ふとロイドの手元にあるコップに目が留まる。
それを取り上げ、おもむろに香りを嗅ぎ、ぺろりとそれを舐める。
「ちょっ!これ酒じゃん!!」
しかもそれは普通は水とかで割って飲むタイプの濃度の濃いものだった。
ハッとしてゼロスは周囲を見ると、クレスはなぜかしくしくと静かに泣いており、ルークは空腹状態でのアルコールにノックアウト状態で机に突っ伏し、ルーはぽやんとした表情でふらふらと体を揺らしていた。
なにこの状況…。
ほろ酔い状態だったはずのゼロスだったが、目の前のカオスな状況に一気に酔いがさめるのを感じた。
「あちゃ~…」
「あちゃ~…じゃねぇよっ!根源はてめぇか!!どうすんだよこの状況!ロイド君しっかり!!」
スタンは頭を掻きながらどうしたものか考えていると、突如背後に冷気のようなものを感じ取る。
「誰?未成年にお酒を飲ませたのは?」
「「・・・・・・・。」」
地を這うようなその声にスタンとゼロスは恐る恐る声のする方を見る。
そこにいたのは仁王立ちで二人を絶対零度の目で見降ろすリフィルがいた。
恐怖のあまりぶわっと冷汗が流れる。
「え、あ、あの、これは…!」
「り、リフィル様…!俺様は無関係…」
「おい…病み上がりのこいつに酒を飲ませたのは誰だ?」
隠すことのない怒気を含む声ととてつもない威圧感に、二人はびくりと体を震わせ、ちらりとそちらの方を見る。
そこにいたのはこめかみに青筋を浮かべて腕を組み睨んでいるアッシュ、そしてどす黒いオーラを漂わせたクラトスがいた。
クラトスはロイド達をちらりと見やるなり更に目を鋭くさせる。
「…やはりお前か」
「ちょっ!!?だから俺じゃねえって!これはスタンの野郎が!!」
「ほう…?」
クラトスのギラリとした目がスタンの方へと向けられる。
その目はどうしてくれようかと語っており、スタンは汗をダラダラ搔きながら思わず後退りするが、アッシュがぼきぼきと拳を鳴らせながらスタンとゼロスとの間を詰めていく。
「…覚悟はできてるんだろうなぁ…?」
「!?だから、俺様は関係ねぇって!!!」
「り、リオン!助け」
「「問答無用!!!!」」
「「ぎゃーーーーーっ!!!」」
ルーはふわふわした心地の中、ぼんやりと周囲を見る。
ゼロス達の悲鳴やアッシュ達の怒声もあるが、それでも殺伐とした空気はなく賑やかで楽し気な笑い声が聞こえてくる、その暖かなで心地よいと感じる空間にルーは小さく微笑みを浮かべる。
そして徐々に襲われる睡魔に今のルーが敵うはずもなく、うとうとし始める。
すると、ふわっと鼻を掠めた安心できる香りを感じ、ルーはそれに身を任せるようにして、そのまま意識を手放した。
続く
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「フレンの料理ってそんなにすごいのか?」
一緒にいたロイドとクレスに問うと、フレンの料理を食べたことのある二人は何かを思い出し遠い目をする。
「…まぁ、凄いっちゃ凄いよな。」
「うん…、料理って奥が深いなって改めて思う料理だったよ…」
「????」
一体どんな料理なんだろうとルーは首を傾げる。
そしてふと時計を見ると、歓迎会が始まってから大分時間が経っていることに気付き、ここにまだ顔を見せないルークの存在が気になった。
「…ルーク、大丈夫かな…?様子見に行きたいな…」
「そうだね、そろそろ起きてもいい頃だし、料理でも持って…」
ルークに会いに行こうかと言いかけたクレスだったが、それを遮るように突如物凄いスピードで何かが横切る。
そしてそのままの勢いでルーにしがみ付いたのは、話の渦中にあったルークだ。
「!ルーク!」
ルーは突然のルークの登場に驚いたが、ようやくその姿が見られてホッとする。
だが、ルークはといえばルーにしがみ付きながらキョロキョロと周囲を警戒しながら見渡している。
不審過ぎるその行動にルー達は首を傾げる。
「??どうしたんだ?」
「どうしたも、こうしたもねぇよ!もう平気だっつってんのにガイとアッシュが今日は寝てろだの安静にしてろだの言いだして、ドアの前で待ち構えてやがるし!挙句の果てにはトイレにまでついて来ようとすんだよ!なんなんだよあいつら!意味わかんねぇーんだよ!うぜぇ!!!ジェイドも笑ってるだけで全然助けねぇし!つーかあれは完全に楽しんでやがった!!!」
なんとか隙を作って逃げ出してきたのだと言うルークはイライラ全開で、ルー達はお互いの顔を見合わせる。
きっとルークにとっては突然訪れた災難以外の言葉は見つからないのだろうけれど、ルークの話を聞いたルー達は、ルークが大切にされていることを感じ取り思わず笑顔を浮かべる。
「な、なんだよ!?」
「なんでもないよ、それより体の方はもう大丈夫なのか?」
「ん?ああ、つーかただ寝てただけだし」
「そっか、よかったな!」
ロイドとルークの会話を聞いていたルーは今度こそ安堵し、笑みを零す。
それを見たルークは僅かに頬を赤らめ、隠すようにふいっとそっぽを向く。
そんなルークにルーは不思議そうに首を傾げていると賑やかな声が聞こえてくる。
見ると、スタンがいて笑顔でこちらへ向かってくるのが見える。
「お、いたいた!ちゃんと食ってるかー?」
「うん。あ、でもルークはこれからだよ」
「なんだ、まだ食ってないのか?ちゃんと食えよ~!あと、ほらこれ!ちょーうまいらしいぞ!」
そう言ってスタンが差し出してきたのはピンク色の飲み物が入った瓶。
「それどうしたんだ?」
「リオンから貰ったんだ、皆で飲もうぜ!」
スタンは適当に皆のコップに注ぐ。
ルーはそれを手に取るなり、すんすんと香りを嗅ぐと甘い香りがした。
見ればロイド達は既に飲み始めていて、ルーも一口飲んでみるとそれはとても美味しいが、とても甘かった。
そういえば、リオンと言えばユーリに並ぶ甘党で、このギルドで甘党会らしいものを結成していることを思い出す。
いつもこういうの飲んでるのかなと考えながらこくこくと飲み進める。
スタンも自分のコップに注いで飲もうとした。すると、すっと目の前にリオンが現れる。
「ここにいたのか。ほら、持って来てやったぞ」
「ん??何を?」
「何をって…お前が言ったんだろ、僕が前に言っていたジュースを持って来いって」
「え?それってそこに置いてあったこれのことだろ?ピンクのジュース!」
そう言ってスタンはテーブルを指差しながら手元にある瓶をリオンに見せる。
リオンはそれを見るなり、眉を顰める。
「……僕は知らないぞ」
「……え?」
まさかのリオンの答えにスタンはピタリと固まる。
その姿を見たリオンは眉間の皺を深くした。
なんだろう、物凄く嫌な予感がする…。
「「・・・・・」」
二人は顔を見合わせたまま動けず、しんとその場が静まり返る。
すると。
「ローイド君!ハニー!楽しんでるー?」
突然現れたゼロスはがばりとロイドの肩に腕を回し、寄りかかる。
だが、いつもならすぐに反応を返してくれるはずのロイドから一向に反応がない。
不審に思い、顔を覗き込むと、顔を赤くしぼんやりと遠くを見てるロイドがいた。
「!?ロイド君!?」
ぎょっとしたゼロスだったが、ふとロイドの手元にあるコップに目が留まる。
それを取り上げ、おもむろに香りを嗅ぎ、ぺろりとそれを舐める。
「ちょっ!これ酒じゃん!!」
しかもそれは普通は水とかで割って飲むタイプの濃度の濃いものだった。
ハッとしてゼロスは周囲を見ると、クレスはなぜかしくしくと静かに泣いており、ルークは空腹状態でのアルコールにノックアウト状態で机に突っ伏し、ルーはぽやんとした表情でふらふらと体を揺らしていた。
なにこの状況…。
ほろ酔い状態だったはずのゼロスだったが、目の前のカオスな状況に一気に酔いがさめるのを感じた。
「あちゃ~…」
「あちゃ~…じゃねぇよっ!根源はてめぇか!!どうすんだよこの状況!ロイド君しっかり!!」
スタンは頭を掻きながらどうしたものか考えていると、突如背後に冷気のようなものを感じ取る。
「誰?未成年にお酒を飲ませたのは?」
「「・・・・・・・。」」
地を這うようなその声にスタンとゼロスは恐る恐る声のする方を見る。
そこにいたのは仁王立ちで二人を絶対零度の目で見降ろすリフィルがいた。
恐怖のあまりぶわっと冷汗が流れる。
「え、あ、あの、これは…!」
「り、リフィル様…!俺様は無関係…」
「おい…病み上がりのこいつに酒を飲ませたのは誰だ?」
隠すことのない怒気を含む声ととてつもない威圧感に、二人はびくりと体を震わせ、ちらりとそちらの方を見る。
そこにいたのはこめかみに青筋を浮かべて腕を組み睨んでいるアッシュ、そしてどす黒いオーラを漂わせたクラトスがいた。
クラトスはロイド達をちらりと見やるなり更に目を鋭くさせる。
「…やはりお前か」
「ちょっ!!?だから俺じゃねえって!これはスタンの野郎が!!」
「ほう…?」
クラトスのギラリとした目がスタンの方へと向けられる。
その目はどうしてくれようかと語っており、スタンは汗をダラダラ搔きながら思わず後退りするが、アッシュがぼきぼきと拳を鳴らせながらスタンとゼロスとの間を詰めていく。
「…覚悟はできてるんだろうなぁ…?」
「!?だから、俺様は関係ねぇって!!!」
「り、リオン!助け」
「「問答無用!!!!」」
「「ぎゃーーーーーっ!!!」」
ルーはふわふわした心地の中、ぼんやりと周囲を見る。
ゼロス達の悲鳴やアッシュ達の怒声もあるが、それでも殺伐とした空気はなく賑やかで楽し気な笑い声が聞こえてくる、その暖かなで心地よいと感じる空間にルーは小さく微笑みを浮かべる。
そして徐々に襲われる睡魔に今のルーが敵うはずもなく、うとうとし始める。
すると、ふわっと鼻を掠めた安心できる香りを感じ、ルーはそれに身を任せるようにして、そのまま意識を手放した。
続く
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