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第8話





「…っ」

深夜 皆が寝静まった頃、ルークは持病の頭痛に頭を抱えていた。
何の前触れもなく襲われるそれに、軽く舌打ちし、常に持ち歩いている頭痛薬を飲む。
原因がわかっていないため気休め程度でしかないが、飲まないよりはマシだ。
飲み終えたルークは、のろのろとベッドに横になる。
だが、未だ収まらない痛みのせいで眠れそうにない。
ちらりと時計を見るが、まだ朝まで大分ある。
それに小さくため息をつき、布団を頭まで被った。

こういう時は嫌な事ばかり頭の中を巡る。

「…くそっ」

























その日、ルーはクエストを受けるため、同行する仲間との待ち合わせ場所であるバンエルティア号の出入口に向かっていた。
今日一緒に依頼を受ける仲間は、クレス・ミント・アニスだ。
若干バランスは悪いが、回復術が使えるミントとこの前衛3人の実力があれば問題ない。

待ち合わせ場所についたルーは辺りを見渡すが、3人の姿はなく、早朝ということもあり人影がなかった。
どうやら少し早く着きすぎたらしい。
まぁ遅刻よりはいいかと思い直すと近くの壁に寄りかかり、3人の到着を待つことにした。

窓から外を見れば、真っ青な青空が広がっていて、ルーはそれをぼんやりと眺めていた。
実は少し前にあったパジャマ会という集まりがあって以来、ルーは浅い眠りを繰り返しており、しっかりと睡眠がとれないでいた。
以前のようにアグゼリュスやレムの塔の夢を見たわけでもなく、己の体の不安があるわけでもない。
原因を特定することができず、ルーは小さくため息をついた。
ユーリに添い寝をしてもらうべきだろうかとも思ったが、全く眠れないわけでもない。

それに…。

ぼんやり考えていると遠くの方からこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。
ハッとしたルーは軽く頭を振り、足音の方を見るとアニスがいた。

「アニス、おはよう」
「おはよ。ルー早いね~」

ふあっと欠伸をしているアニスを見ていると、そういえばと切り出される。

「聞いたよ~、男子たちもこの前パジャマ会したんだってねー。しかも、ルーク様とユーリの好きな人の話になったとか!」
「う、うん。よく知ってるな、アニス」
「アニスちゃんの情報網を侮っちゃ困るな~!」

自慢げに話すアニスにルーは苦笑いを浮かべる。
それに対してなんとなく覇気のないように感じ、アニスは首を傾げる。

「?なんか元気ないね?」
「え、そうかな?」

ルーはきょとんとして首を傾げる。
それはいつものルー。
気のせいかなとアニスは考えていると後ろから声がかかる。

「ルー、アニス、お待たせ!」

見るとクレスとミントがいて、こちらに向かってくる。
今もそうだが、この二人からは常に仲睦まじさが溢れ出ていて、見ているこちらがなんとなく気恥ずかしくなるほどだ。
そんな二人をぼんやり見ているとミントが笑みを浮かべて軽く会釈をする。

「今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくな!」

ルーは笑顔で返事をすると、また別の方向から足音が聞こえてくる。
そちらに目を向けると、ユーリとカイルとリアラがいた。
ユーリもルー達に気付いたようで、近づいてくる。

「おはようユーリ!」
「おはようさん。ルー達もこれからクエストか?」
「うん、ユーリ達もか?」
「ああ。つっても俺はカイルが後先考えずに引き受けたクエストの人数の埋め合わせだけどな」
「そうなんだ?」

だがそのカイルはといえばまだ眠気眼でリアラに支えられながらなんとか歩いているといった様子だ。
…あれは大丈夫なんだろうかと思わず心配になる。
ルーの考えを察したユーリは優しい笑みを浮かべて補足する。

「俺達は近場の採掘の簡単なクエストだから問題ねぇよ。」
「そっか」

まぁユーリがそういうのであれば大丈夫なんだろうなとルーは納得する。
そんなルーを見ていたユーリは違和感を覚える。
どことなく元気がないように感じた。

「ルー、具合でも悪いのか?」
「へ?別に大丈夫だけど…」

ルーは不思議そうに首を傾げる。

申し分ないほどの実力を持つルーだが、如何せん自分の事になると、驚くほど無頓着で危ういところがある。
見たところ今日はクレスとミントがいるようだから、無茶をしそうになっても止めてくれるだろうし、万が一体調に何かあっても大丈夫だろう。
…と頭では理解しているのだが、それでも心配になるのだ。

「…なら、いいんだが。あんまり無茶すんなよ」
「う、うん」

至極真面目な顔をしたユーリからの言葉にルーは小さく頷く。

「ユーリ、そろそろ行こう?」

クエスト先まで行けばカイルも起きるはずだと急かすリアラに、へいへいとユーリは適当に答える。

「じゃあな。気を付けて行って来いよ」
「うん、ユーリ達も」

ルーがしっかりと頷いたのを見て、ユーリはリアラ達の後をついていく。

その後ろ姿が見えなくなるまでルーは見つめていた。

「僕たちも行こうか、準備はいいかな?」
「うん」

クレスの一声にルー達は頷き、クエストへと向かう。



そんなルー達を離れた所でルークは静かに見ていた。
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