第7話
ルーはゼロスに言われた通りルークとユーリを探す。
今日は二人とも掃除当番だったはずだが、如何せんこの艦内は広い為、しらみつぶしに探していくしかない。
キョロキョロと見渡しながら探していると、共有スペースを掃除しているユーリとフレンの姿を見つける。
傍から見た二人は対照的で、フレンは隅々の塵まで逃さないようにホウキを使ってきっちり丁寧に掃除しているのに対し、ユーリはといえばモップを持って適当に掃除をしていた。
そんな二人にルーはぱたぱたと駆け寄り声を掛ける。
「ユーリ!フレン!」
ルーの呼び声にまず反応したのはユーリで、反射的に顔を向ける。
遅れてフレンもルーに気付き、手を止める。
「掃除中のとこ悪いんだけど、今いいかな?」
「ああ、どうした?」
「何かあったのかい?」
笑顔で出迎えてくれた二人にルーは実はとこれまであったことを伝える。
「…で、俺たちもやろうって話になったんだけど、ユーリ達はどうかな?」
話を聞いた二人は首謀者がゼロスということですぐに何かあるなと思ったが、純粋に楽しみにしているルーを目の前にし、自然と頷いた。
「ああ、いいぜ」
「うん、僕も」
「本当か!?よかった!」
にこにこと嬉しそうなルーに二人も笑みを浮かべる。
裏表のないルーの純粋な笑顔は、見ていて穏やかな気持ちになるのだ。
じゃあまた後でなと嬉しそうにその場を後にするルー。
それを見送っていたユーリは、ふと横からの視線を感じとり、そちらを見ると、先程とは異なり意味深な笑みを浮かべたフレンと目が合う。
「…なんだよ」
「いや…。ユーリ、本当に変わったね」
「は?」
「以前の君ならこういう類はなんだかんだはぐらかして絶対参加しなかっただろ?」
「・・・・」
そう言われると確かにその通りなため返す言葉がない。
幼馴染であり親友でもあるフレンにはいろいろとバレている、気がする。
だからこそフレンが何を言いたいかを察したユーリはなんとも言い難い顔をする。
反論してこないユーリを見てフレンは笑みを浮かべる。
今回の件については、単純にルーがいるから参加するだけなんだろう。
それでもユーリにとっては良い兆候だ。
ユーリは何かと単独行動が多いし、誰かに頼ろうとはあまりしない。
そして思っていることや感情をあまり表立って見せようとしない。
そんなユーリに近付こうするひとは多いが、ユーリはそれを許さない。
ある一定の距離を置いてしまうのだ。
まるで一人でいる方が楽なのだと。
それもそれで個人の自由だと思うが、親友としてはこのまま彼が一人でいるより誰かが傍にいてほしいと思う。
以前、ユーリが自分のベッドでルーの添い寝をしたと聞いた時は驚いた。
あの自分のテリトリーには人を一切近づけようとしないあのユーリが。
それは誰とも馴れ合うつもりがなかったユーリがルーに対しては心を許していることの裏返しだと言えるだろう。
ルーならユーリの心の拠り所になってくれるはずだ。
フレンはこれからの二人の関係に期待を寄せていた。
「ルーク様には悪いんだけどね…」
「あ?」
「なんでもないよ。さ、早くここの掃除を終わらせようか」
これ以上話すことはないと掃除を再開するフレンにユーリは小さく息をつき掃除を再開した。