第7話
※微々たるものですが下ネタ含みます。苦手な方は見ない方がよいかもしれません。
「は~…暇だなぁ…」
軽くため息をつきながらルーはバンエルティア号内を歩いていた。
オールドラントからルミナシアという別の世界にきたばかりの時は、どうなるか不安でいっぱいだったルーだが、今ではバンエルティア号での生活にも大分慣れ、ギルドの仕事も順調にこなしていた。
実力も折り紙付きのルーは今やギルドのメンバーとして欠かせない人物となっていたのだが、つい先程アンジュから今日は必ず休むようにと軽い説教を受けてしまったのだ。
ここ最近立て続けにクエストに出ていたのが良くなかったらしい。
それならせめて何か艦内でのお手伝いをと考えたが、アンジュに先回りされて「ルーを休ませたいから絶対手伝わせるな」とギルドメンバー内に通達が入っており、手伝わせてもらえない。
仕方ないので勉強でもと思ったのだが、今日に限ってあまりやる気が起きず、結果として暇を持て余していた。
部屋で大人しくしていることができないルーは、特に目的もなくふらふらと歩いていると、食堂から賑やかな声が聞こえてきた。
なんだろうとそちらの方へ足を向けるとそこにはギルド内の女子達が大勢集まっていた。
何かあったのかな?
首を捻りながら考えていると、その女子の集まりにいたコレットがルーの存在に気付く。
「あ、ルー!」
コレットの呼びかけに、他の女子達もルーに気付き、皆一様に笑顔で手招きする。
…なんだろう、すげー怖い…。
とはいえ無視もできず、恐る恐るその集団に歩み寄る。
「みんなでなに話してたんだ?」
取り敢えず疑問に思っていたことを問うと、コレットは笑顔で実はねと続ける。
「今日皆でパジャマ女子会をしようって話をしてたの」
「パジャマ女子会?」
なんだそれ?と首を捻ると、補足するようにしいなが説明する。
「みんなで同じ場所に集まっておしゃべりしながら寝る、要はお泊り会みたいなもんさ。折角同じ屋根の下で暮らしているんだし、たまには皆で集まって親睦でも深めようって話になってね」
「へ~お泊り会か、いいな!」
「なんならルーも参加するかい?」
何事もないかのようにさらっと誘ってくるナナリーにルーは驚く。
「えっ!?い、いやだって、俺男だし…」
「ルーなら大歓迎です!ルーも一緒にパジャマ女子会やりましょう!」
目をらんらんと輝かせて拳を作りぐいっと身を乗り出すエステルにルーは怯む。
「い、いや、だから、何度も言うけど俺は男だって!女子会って、女子だけの集まりのことなんだろ?だから俺はむり…」
「ルーなら大丈夫です!」
何が大丈夫なんだ。根本的なところが一切何も解決してないぞ。
だが、ルーの気持ちとは裏腹に他の女子も満更でもないようで、むしろエステルに同調を見せている。なんでだ!
このよくわからない空気に焦りながらルーはどうやってここを切り抜けるか考えていると、それまで静かにルーを見つめていたティアが口を開く。
「…でも、ルーがもし女の子だったらとても可愛らしいと思うわ」
とんでもないことを言い出したティアにルーはぎょっとする。
「はあ!?なに言っ」
「それ面白そうね」
「えっ!?」
目を光らせ、舐めるようにルーを見るハロルド。
その目の本気具合に、冗談で言っているものではないことを感じ取り、思わずぞわっと鳥肌が立つ。
ここにいては危険だと本能が察知する。
「お、俺、そろそろ行くなっ!!」
ルーはすぐさまその場から逃げるように足早に離れる。
あっという間にいなくなったルーにエステルは落胆の声を上げる。
「あっ!…行ってしまいました。折角ルーにユーリとルーク、どちらが好きなのか聞ける良い機会だと思ったのですが…残念です。」
「ふふ、じゃあそれはまた別の機会のためにとっておきましょ」
とびきりのお楽しみはとっておきましょうと提案するジュディスにエステル達は頷いた。
ルーは食堂からうんと離れた所まできてようやく立ち止まった。
「はぁ…」
なんだかよくわからないが、危ないところだった。
あのまま流されていたら何をされていたかわからない。
数分前の事を思い出し、身震いする。
「あ、ルー!」
背後から聞こえてきた呼びかけにびくりと体を震わせ、恐る恐る目を向けると、そこにはロイドとゼロスがいた。
二人の存在に安堵し、思わず大きなため息をつく。
その様子を見た二人は不思議そう首を傾げる。
「お?どうしたんだ?」
「随分ぐったりしてるじゃない?」
「えっと…実はさ…」
先程あったことを二人に説明すると、それを聞いたロイドはあー…と納得し、ゼロスはえーっ!と声を上げる。
「なにそのうらやましい状況…っ!」
「いや、どこがだよ」
「あんなに沢山の可愛い女の子の中とか、まさにハーレム状態じゃない!」
「いや…なんかそんな感じはしなかったけど…。なんつーか、…怖かったし…」
「ん~ま、ハニーは逆に喰われちゃいそうだしなぁ、でひゃひゃひゃ」
「くわ…?」
「でもなんかそのパジャマなんとかって楽しそうだな!」
「だよな!俺そういうのやったことないけど面白そうだよな」
純粋にやってみたいというルーとロイドの会話を聞いて、ゼロスはニヤッと笑みを浮かべる。
「んじゃ、俺様達もやろうぜ?」
「え!いいのか?」
「もっちろん!なんなら他の奴らも誘って皆でやるのはどうよ?」
「うん!それいいな!」
「じゃあハニーはルーク様とユーリの野郎辺り頼んでもいい?他のメンツは俺様の方が適当に見繕ってくるから。」
「うん、わかった」
あっさりと承諾したルーは早速二人の元に向かう。
その後姿を笑顔で見送っていたゼロスにロイドは怪しむように目を向ける。
「…ゼロス、お前何か企んでないか?」
「さっすがロイド君、気付いた?野郎同士でなんて、最初は興味なかったけど、ハニーいるし…それにこんな面白い機会ないっしょ」
「?」
にやにやと悪い笑みを浮かべるゼロスにロイドは訳がわからず、ただ首を捻った。