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番外編2

※メインはユーリ視点。視点切り替え時に表記あり。



その日、ユーリはギルドの恒例行事である買い出しに駆り出されていた。
今日の買い出しは観光客も集まるほどとても大きく賑やかな街。
お陰で買い出しという骨の折れる仕事ではあるが、街の雰囲気に買い出し当番の面々は買い出しをさっさと済ませ、嬉々として自身の買い物をと街の中へ繰り出していった。

その中ユーリは、全く心が浮かれることなく、むしろ機嫌が悪くなっていく一方だった。
買い物にも興味なく、とりあえず待ち合わせ近くのベンチに腰を落ち着かせていると、ふと背後に気配を感じる。

「そんな顔していると幸せが逃げて行っちゃうかもよ?」

へらへらしながら茶化してくるレイブンにイラッとしつつも相手するのも面倒で、振り向くことなく反応も返さずにいると、それに対してレイブンは特に怒ることもなく、そういえばと呟く。

「長期のクエストだったよねルーちゃん。」

“ルー”という言葉にピクリと耳が反応する。
そう、なぜここまで気分が乗らないのかというと、その理由はルーのことだった。
ルーはこのギルドで大の人気者で、誰もがルーとクエストに行きたがる。
それが発展し偶にルー争奪戦が起きるほど。
その人気者のルーは今長期のクエストで1週間ほど不在している。
しかもアンジュの話だと本当であれば昨日帰ってくるはずだったらしいのだが、スケジュールが押しているらしくまだ帰ってきていない。

…他のクエストとダブってなきゃ行けたんだが。

ここまで長期間顔を見れなかったことがなかっただけに悔やまれる。
ふと脳裏をよぎるのはルーの笑顔。
エステルに言われたこともあるが、ルーに好意を持っていることを自覚している今は気が気でない。




>>レイブン視点

悶々としているユーリにレイブンは感慨深そうに頷く。

「青年、変わったよね〜」
「あ?」

眉を寄せ怪訝そうな表情で振り向かれ、へらっとした笑みを見せる。
ユーリはこれまでの人生経験からか若者にもかかわらず、妙に達観していて自分というものを確立している。
その反面、良くも悪くも物事や人に無関心で感情の起伏が殆ど無かった。
アドリビトムに来てからは大嫌いな貴族ではあるがルークというからかい相手ができて少し変わったかと思ったこともあったが、ここまで大きく変わったのはルーと出逢ってからだ。
あの子といる時のユーリは普段から想像つかないほど感情が豊かになる。
声を上げて笑うことも、穏やかな表情を見せることも、わかりやすくムキになったり、怒り出すことも。
当人は気づいていないようだが、それは露骨に出るものだから微笑ましく思う。
…のだが、このイライラは最終的に自分に向くし、しかも容赦がない。
レイブンとしてはまずは自分の安全が最優先事項なのだ。
どうしたものかと考えていると、2人の女の子が近づいてくるのが見える。
ああ物凄く嫌な予感がする。

「あの、良かったらお茶でもしませんか?」

かわいい系と綺麗系の女の子が話しかけに来た。

ああやっぱり…。

レイブンは心の中で落胆する。
これが例えばゼロスのような女性好きだったら考える必要なく即答OKを出すだろう。
だが…
へらっと笑いつつもレイブンはチラッとユーリを見る。
想像通りイライラが増した様子のユーリは興味無さげに視線をずらした。
実にわかりやすい。ここまで露骨にできるのは流石と言ったところか。
変なところで感心しているレイブンに対して、そのユーリは不機嫌真っしぐらだった。
無言を押し通そうとしていたが、徐々に近づいてくる二人に面倒そうに口を開く。

「いや、俺は今忙しいんで。代わりにおっさんが付き合うってよ」
「えー!お兄さんがいいんですー!」

女子達はユーリがいいのだと食い下がる。
それにイラッとしたユーリは不機嫌オーラを隠すことなく剥き出しで発する。
レイブンでさえ思わず体がビクつく程の圧だが、女子達はめげていない…いや、ユーリを誘うのに一生懸命で気づいていないようだ。
それが更に機嫌を悪化させるだけなのだが。
ただでさえ、今のユーリは沸点が低い。
いつ爆発してもおかしくない状況にどうしたものかとレイブンは本気で考え始める。
だがその時、イライラがMAXに到達する寸前のユーリは視界の端に飛び込んできたものにピクリと反応し、バッとそちらの方に顔を向けた。


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