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第33話









その頃。
ルーとユーリは森の中を歩いていた。

今日の誕生日会で出すデザートのリクエストをさりげなく聞き出そうと、ユーリは何か食べたいデザートはないかとルーに問うと、「イチゴのショートケーキ!」と目を輝かせながら返ってきた。
思わず丁度いいと声に出てしまい、何がだ?とルーに不審に思われてしまったが、それならば自分で摘んだイチゴを使うのはどうかと話題を変えると、ルーは嬉しそうに二つ返事でOKした。
そんなルーの手元には空のバスケットがあり、これに摘んだイチゴを入れるつもりだ。
ユーリもバスケットを持っているが、こちらはお弁当一式が入っている。
材料も手に入るし、何より難なくルーを誘い出せたことに一石二鳥とはこのことを言うんだろうなと思いながら、ユーリは少し前を歩くルーを見ると、ルンルンと鼻歌が聞こえてきそうなくらいご機嫌の様子で思わず笑みが零れる。
可愛い。

「機嫌いいな」
「だって、ユーリと出掛けるの久しぶりだし!」

くるりと振り返り、元気一杯に返答する。
二人は同じ部屋でよく一緒にいるが、こうして仕事を抜きにして外へ出かけることは意外と少ない。自然と心もウキウキと上がってくる。
にこにこと嬉しそうな笑顔のルーに対してユーリはそういやそうかと返す。

「なら、今度は泊りがけの遠出でもすっか」
「!本当か!?」
「ああ。どっか行きたいとこ考えとけよ」

ユーリの提案にぱぁっと目を輝かせるルー。嬉しいが全体からあふれ出ているルーを見て思う。
本当可愛いなこいつ。

暫く歩き、ユーリが以前見かけたイチゴの群生地に到着すると、そこは赤いイチゴが沢山実っていて甘酸っぱい香りが広がっていた。

「すげー!いっぱいあるな!」

軽く興奮状態ではしゃいでいる姿に、ユーリは連れてきて正解と笑みを浮かべる。
2人は早速イチゴを摘み始める。
小さいものから大きいものまでいろいろとあり、どれが食べ頃のものかをユーリに教えてもらいながら摘んでいく。
途中、ユーリがつまみ食いをし始め、それを見たルーも真似してイチゴを口の中へ放り込む。
口いっぱいに広がる甘酸っぱさに、幸せそうな笑顔を浮かべた。
他愛のない会話をしながら摘み続け、気づけば大きなバスケットいっぱいにのイチゴを収穫していた。
ずっしりと重みを増したバスケットを両手で持ちながら、若干の後悔をし始めるルー。

「なんか摘み過ぎたかも…」
「まぁ余ったらジャムにでもすればいいんじゃねぇか?」
「ジャムかーそれいいな!」

なるほどと感心しているルーだったが、横からすっと手が伸びてくるのが視界に映るとバスケットが宙に浮く。
代わりに手渡されたのはお弁当のバスケット。

「お前はこっち」
「え」

明らかにこちらの方が軽い。ルーは目をパチパチさせ焦りながら見れば、ユーリはケロッと何事もなかった様子で手元にあるイチゴのバスケットを見ながら確かに結構摘めたなと呟く。

「こんだけありゃ充分だな。」
「ユーリ、それ…」
「そろそろ昼にすっか。セッティング任せたぞ」

俺が持つと言いかけたルーに、ユーリは笑みを見せながらそう促す。
ルーはきょとりとし、互いのバスケットを交互に見て首を傾げた。
いや、そうじゃなくて…とも思ったのだが、知らず知らずのうちにユーリから甘やかされ続けているルーはとりあえず最後のセッティングを任せたという言葉に従うことにし、こくりと頷いた。

早速ゆっくりと休めそうな場所を探し、近くに小川が流れる木陰を見つける。
二人は腰を下ろし、お弁当を広げた。
お弁当は今日ユーリと一緒に朝作ったもので、その中身はルーの嗜好に合わせてエビとチキンが多い。
二人は手を軽く合わせるなり食べ始める。
ルーは嬉しそうにユーリお手製のチキンサンドを口に頬張る。
ピカイチな味にご満悦だ。
その様子を見ながらユーリはルーの作ったエビマヨおにぎりを手にする。
一生懸命に作ってくれたそれはユーリにとって何より御馳走で、それをゆっくり味わいながら口に運んだ。
美味しい料理に舌鼓を打っていた二人だったが、ふとユーリは何か思いついた様子で先程摘んだイチゴを数個手にする。

「どうしたんだ??」
「ちょっとな」

そういいながらユーリは慣れた手つきで何かを作り始めた。
モグモグと頬をリスのように膨らませながら不思議そうに首を傾げているとピンク色の飲み物が差し出される。
見ればそれは先程摘んだイチゴを使ったイチゴミルク。

「?なんだこれ」
「イチゴミルクだよ。」

ミルクという単語にルーはびくりと体を震わせる。
周囲よりも苦手な食べ物が多いルーにとってミルクも極力避けて通りたい食べ物の一つだ。
分かり易くしかめっ面になるルーにユーリは笑う。

「うめーから飲んでみろ」

ルーはミルクにびくびくしながらも折角ユーリと一緒に摘んだのだからと覚悟を決めて一口飲む。
ミルクという単語に身構えていたルーだったが、それは練乳が多く入っているせいか、ミルク感は少なく、むしろとても甘くておいしい。

「!!これすげーうまいな!!」
「そりゃよかった」

ルーはそのあまりの美味しさに感動しながら、ごくごくと飲み進めた。
何をするにも可愛過ぎるルーに、見守っていたユーリは顔には出さないものの内心はこの場で押し倒してやろうかと激しい葛藤を繰り広げていた。



その後、食事を終えた二人は食休みを取ることにした。
ユーリは仰向けの状態で腕を枕にするようにして寝転がり、ルーはその隣で足を延ばし座る。
聞こえてくるのは、近くの小川で水が流れる音や鳥のさえずりだけで、ルーはふと目を閉じる。
気持ちの良い風が吹き、大きく深呼吸すると、草原と淡い花の甘い香りが胸いっぱいに広がる。

なんか気持ちいいな

ゆっくりとした時間が流れ、それに身を任せているとき、ふとライマでの出来事を思い出す。






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