第32話
数年ぶりの再会に涙と笑顔が溢れるルー達を、少しだけ離れたところからユーリは見守っていた。
ミュウもユーリの足元で嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。
「ご主人様、とっても嬉しそうですの!」
「そりゃそうだろ」
「みゅ?」
ミュウはユーリを見上げると、ユーリはルーに視線を向けたまま続ける。
「…あいつらはルーにとって初めてできた仲間だからな」
出会いや経緯がどんな形であれ、ルーにとって特別な仲間たちだということは変わらない。
そんな仲間たちとの再会で嬉しくないはずがない。
ただでさえ、もう会えることはないと思っていたのだから。
とても嬉しそうに笑うルーを優しい眼差しでユーリが見守っていると、ミュウは目を輝かせる。
「みゅー!それはミュウもですの~!!!」
ミュウは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねると、すぐにルーの肩へと飛び移る。
いきなり飛んできたミュウに、ルーは驚いたがすぐに笑みを浮かべる。
すると、ぱちりとルーはユーリと目が合うと、あ!と大きな声を上げる。
「そうだ!皆に紹介したい人がいるんだ!」
「紹介したい人??」
「うん!ユー…」
「「あーーーーーーーーーっ!!」」
嬉しそうにルーがユーリに手を振ると、それを目で追っていったアニスとガイはユーリを目にした途端、驚いた表情でユーリを指を指しながら大声を上げる。
アッシュやティア達も大声は出さなかったものの驚いた様子を見せる。
その反応に、ルーは目を瞬かせる。
「え?みんなユーリの事知ってるのか??」
「知ってるってゆーか、ローレライがルークからの伝言って見せてくれた映像の中にいた…ルークとめっちゃイチャイチャしてた人じゃない?」
「へ?!?」
ルーはアニスの発言に目を大きくさせる。
イチャイチャなどした記憶は…と思いつつも記憶を辿ると、そういえばローレライが現れた時途中で記憶を失って、目を覚ました時にみんなの前でユーリに抱きしめられているところを見られて…そこまで思い出したルーは仄かに顔を赤くさせる。
一方で、ガイは顔を青ざめさせる。
あんなに嬉しそうに自分たちに紹介したいと言い出し、イチャイチャという言葉に顔を赤らめたルー。しかもその後の否定が返ってこない。
この流れは…まるで…、いやいやいやいや…、…いやいやまさかそんな…!!!
「る、ルーク」
「ん?」
「そ、そのユーリ…さんと、ど、どういう関係なんだ…?」
恐る恐る問うガイにルーはきょとりとさせたが、どういう…と呟きながら考えた仕草をした後、見る見るうちに顔を真っ赤にさせる。
「え、えっと…その…わっ!」
いつの間にかルーの隣に来ていたユーリは見せつけるように、ぐいっとルーの肩を抱きよせる。
驚いたガイに向かってユーリはニヤリと笑みを浮かべた。
「見ての通り、ルーと俺は恋人同士」
「「「「!!!!」」」」
「ゆ、ユーリ!」
恋人という言葉を強調すると、ガイは卒倒する勢いでショックを受け、アニス達は驚き、ルーは顔を真っ赤にさせ思わず声を上げた。
が、ルーは口をパクパクさせるだけでやはり否定の声はない。
それは事実だと言わんばかりの物で、衝撃は相当なものだった。
「こ、恋人って…ど、ど、どこまで…」
「そりゃあ、できるとこまで一通りは」
「!ユーリっ!!」
一番の大打撃を受けたガイは果敢にも問いかけるが、ユーリはサラッと答える。
それにはさすがにルーは大きな声を上げる。
が、その顔はトマトのように真っ赤で、やはり否定の声はなし。
「おやおや、いつの間にかルークに追い抜かされてしまいましたね、ガイ」
「大佐、それ以上ガイを追い詰めないでやってください…」
笑みを浮かべながらガイにトドメの一言を浴びせるジェイドに、流石に可哀想になってきたティア思わず止める。
ショックを隠し切れず崩れ落ちそうになっているガイは、顔を引きつらせながらもユーリの方を見る。
その顔は勝ち誇り意地の悪そうな笑みを浮かべていて、ガイは思わずユーリからルーを引き剥がし、その肩を掴む。
あまりの速さにルーは目をパチパチと瞬かせる。
「え!?どうし…」
「る、ルーク!こ、この人のど、どこがいいんだ!?」
「え?」
突然の問いにルーはきょとんとし、無意識にユーリの方を見る。
そしてユーリを見ながら少し考えていているようにも見えたが、すぐにガイの方へと向き直る。
「全部かな!」
えへへと少し照れながらも嬉しそうに満面の笑顔を見せる。
それは純真無垢そのもので、可愛さも破壊力も抜群。
出た!7歳児スマイル!!と思わずアニスは声をこぼし、アッシュ達は絶句し、ガイはその場に崩れ落ちる。
一方でそのユーリはと言えば、緩む口元を手で隠し必死に平静を装っていた。
その後、興味津々なアニスはルーへ質問攻めを開始し、最初こそ恥ずかしそうにしていたルーだったが、途中からユーリって凄いんだぜ!と目をキラキラさせながら、ユーリの自慢話を始める。
その自慢話を聞かされているガイはグサグサと精神攻撃を受け、ユーリはポーカーフェイスを必死に見繕う。
そんな二人を面白そうにアニスは見ながらルーを煽り、ナタリアはルーの話に耳を真面目に聞いていた。
「…辛くないですか?」
少し離れたところから様子を見守るジェイドがぽつりとつぶやくと、近くにいたティアは嬉しそうに話すルーを見つめながら小さく首を振る。
「…いいえ。…あんなに嬉しそうに笑うルークに会えましたから。」
オールドラントでは見ることが出来なかったその姿が見れただけで充分だと、痛む胸に手を当てながらティアは微笑んだ。
ジェイドはそうですかと返すと、先ほどまでいたはずの人物が姿を消していることに気づく。
どこに行ったんでしょうかねぇ…?