第32話
「も~~~~!!!倒しても倒しても数減らないし~!!!いい加減にしろっつーの!!!」
アニスはトクナガに乗りながらイライラを露わに大声を上げる。
そのアニスの前にはどこからともなく湧き出てきた野蛮そうな賊たちの姿。
相手は下劣な笑みを浮かべながら近づいてくる。
ここは城内にある廊下。
アニス達がライマに到着し城に入ると既にライマの兵士同士が戦闘しており、その光景に驚いたが、その戦闘スタイルを見て交戦している片方の方はライマの兵士と同じ鎧を身に着けているだけで正規軍ではないと一緒にいたジェイドはすぐにそれを指摘した。そのジェイドはやることがあるとその場から姿を消し、アニス達はライマの正規軍の方に援護に回り、拳を振るっていた。
だが、相手は数が減るどころか、よくわからない賊みたいな者たちまで現れ冒頭に至る。
キレ気味のアニスは怒り任せに攻撃を繰り出すが、前衛一人の状況はきつく流石にその顔には疲労も見える。
その近くには一緒にいたナタリアとティアの姿もあり、二人は息を僅かに切らしていた。
「早くルーク様のところに行きたいのに~!!」
「数が増えていく一方ですわ…。」
「…」
弓矢を巧みに使っていたナタリアにもその数に徐々に疲れが見え始める。
ティアも譜術を休まずにで使っており、体力の消耗が激しい。
徐々にその数に押され始め、いよいよマズイと3人の脳裏に不安が過る。
すると、いきなり大きな爆発音がその場に響き渡る。
「「「!!」」」
3人は反射的にそちらの方を見ると、そこには大きな魔物の姿があった。
「げぇっ!!!マジ!!?」
ただでさえきつい状況なのに、まさかの魔物の登場にアニスは声を上げる。
それはナタリアたちも同じ様で、その顔に絶望感が走る。
だが、その直後突如強い光が辺りを包み込み、同時にものすごく強い突風が発生する。
3人は思わず悲鳴を上げ、その場に膝をつき耐える。
しばらく続いていたそれだったが、徐々にそれが収まっていく。
「い、いったい何事ですの…?」
「!ナタリア危ない!!」
呆然としているナタリアの背後に魔物の姿が見え、ハッとしたティアが叫ぶ。
それに気づいたナタリアは振り返り、弓を構えるがスピード的に間に合わない。
ナタリアは覚悟を決め、ぎゅっと目を閉じた。
「爪連龍牙昇!!」
「!」
突然聞こえてきた声と共に魔物は吹き飛ばされ、大きな音を立てながら瓦礫のほうへを叩きつけられる。
動けずにいたアニス達はいったい何が起きたのかと、その声の方を見るなり思わず目を見開く。
そこにいたのは、トクナガに乗った少し成長し大人になりかけのアニスの姿。
よく見ればその背後には同じく少し大人の雰囲気をもつナタリアとティアの姿もある。
「へばるのはまだ早いよ!!」
強気の笑みを浮かべながら、そう言い放つ、目の前の自分にアニスは口をあんぐりさせながら吐露した。
「・・・・・マジ?」
「…お、前は…っ」
ルークとアッシュの二人の視線の先には突然現れたオールドラントのアッシュ。
一体どういうことだと考える余裕もないほどの衝撃に二人はただ呆然とする。
その中、オールドラントのアッシュは、周囲を軽く見渡し状況を確認していたが、ふと目の前にいるアッシュを見る。
そしてその背後にいるルークの方を見ると途端ピクリと反応し、目が合う。
ルークは驚愕と困惑が入り混じった目を向けていたが、大分顔色が悪い。
多量の出血に加え、傷口から細菌が入り込んでしまっていたのだ。
暫しルークの様子を見ていたオールドラントのアッシュは懐に手を入れるなり袋を取り出しルークに投げ渡す。
「使え」
「!」
ルークは驚いた表情を見せながら、咄嗟にそれを受け取る。
な、なんだ…?
ルークは恐る恐るそれの中を見ると、そこには大量のグミ等のアイテムが入っていて、思わず呆気にとられる。
オールドラントのアッシュは剣を手にすると、背後から攻めてくる賊の方を向く。
「さがっていろ、邪魔だ」
そういうなり、剣を振るい始めた。
その姿を見たアッシュはハッと我に返ると、訳が分からずに呆然としていたルークの腕をガッと掴み急いで部屋の端へ連れていく。そして、すぐさまルークの手にある袋からレモングミを取り出すとルークの口にぶち込んだ。
「!?」
突然の事に反応できずにいるルークにアッシュは続けてパナシーアボトルや他のグミを容赦なく口へ放り投げていく。
すると、見る見るうちに傷がふさがっていき、流血も止まり、顔色が回復していった。
その様子を見て、アッシュはようやく安堵した表情を見せる。
ルークは展開の速さについていけず、暫し呆然としていたが、ふとオールドラントのアッシュの方を見る。
オールドラントのアッシュは剣を巧みに使い、続々と向かってくる敵を倒していた。
中には賊などの人間もいたが、手慣れた様子で切り倒しておく。
その戦闘力はこちらのアッシュよりも遥かに上だということは遠目で見てもわかる。
また剣を振るう動きに無駄がなく綺麗で、ルーを彷彿させるような強さだった。