このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第5話





結局、突然始まったユーリを驚かせよう作戦は、ユーリが現在一人部屋で且つ今は風呂で不在だということを利用することにした。
ユーリの部屋にあるベッドにルーが忍び込んで待機し、風呂から帰ってきたユーリが近づいてきた所を驚かすという、至極シンプルなものだった。
この程度であのユーリが驚くとは到底思えないし、そもそもなんでベッドに隠れる必要があるのか。
だが、レイブン曰くこれはルーだからこそ有効でかつ効果的なのだという。
どういうことなのかさっぱりだが、特に難しいことでもないのでまぁいいかと承諾した。

ルー達は恐る恐るユーリの部屋に入ると、レイブンの言う通り誰もいなく、ホッと安堵する。
ちなみにこの場にいるのはルー以外に言い出しっぺのマオとレイブン、カイルの3人だけで、ルカとジーニアスは何かを悟りそろそろと帰ってしまった。

「じゃあルー、ユーリがきたら思いっっっきり驚かせちゃって!」
「う、うん」
「おっさんたちはそこにいるから、安心してね」

クローゼットを指差すと、既にカイルがごそごそと入っていくのが見える。
わかったと頷くとマオとレイブンはクローゼットに向かう。

ルーも言われた通りユーリのベットの中に潜り込む。
本当にうまく行くのだろうか?
いくら考えても疑念しか湧かないが、ここまで来たなら腹をくくろう。
落ち着かせるために何度か深呼吸を繰り返す。
そこで、ふと気づいたことがあった。

「…ユーリの匂いだ…」

シーツに鼻をあてすんすんと嗅ぐとほのかに香るそれに安心感を覚える。
同時にふっと体から余分な力が抜ける感覚と心地よさに、目を閉じる。
ベットの柔らかい感触と温かさ、そしてその香りに包まれたルーは徐々に意識を手放していった。







暫くして風呂上がりのユーリは、タオルで髪を拭きながら戻ってきた。
ガチャリとしたドアノブの音に、マオとカイルは「きた!」クローゼットの中で息を殺し僅かな隙間からユーリの動向を見つめる。

ユーリは入ってきて早々にベッドの異変に気付く。

なんだあのこんもりしたものは。

大方こういうのはマオ辺りの悪戯だろうと算段する。
面倒なやつに目をつけられたかと肩を落としつつ、ベッドへ近づく。

あれ?とマオとカイルは首を傾げる。
本当であれば驚かし役のルーが出てくるはずなのに、なかなか出てこない。
それに対してレイブンはなんとなく嫌な予感がし始め、顔を引きつらせる。
ユーリもあまりにも無反応なそれに首を傾げ、布団を手に取るなり躊躇なくそれをはぎとる。

「!?」

ルーが丸まって眠っている。その予想外すぎる展開に衝撃が走り固まる。
意中の相手が自分のベッドで眠っている。
そのことに暫し呆然としていたユーリだったが、ハッとしてルーを起こしにかかる。

「ルー。起きろ」

軽く揺すってみるが、すぅすぅと寝息を立て起きる気配がない。
あまりにも気持ちよさそうに寝ているその姿に起こすのが惜しくなる。
だがこの状況は状況であまりよろしくない。
あどけない寝顔はとても可愛らしく、無防備すぎる。
ユーリも成人しているとはいえ、まだまだ若いのだ。
それなりに自制心はあると思っているが、全く欲が湧かないかといえば答えはNOだ。
顔に出さないものの内心本能と理性がぶつかり合い、大分混乱していた。
なんとかして起こさなければと何度か揺すると、ルーはごそっと身じろぎする。
あともう少しだと、葛藤しながらも声を掛ける。

「ルー、起き…」
「ん…ゆーり…」

小さい声で呟かれた言葉とともにふにゃっとした笑みを浮かべる。
そしてまたすぐに規則正しい寝息を立てる。寝言のようだ。
だが、ユーリの理性を揺さぶるのには充分すぎるほどの威力。
本能のまま、自然と体が動きベッドの上に乗り上げる。
そしてルーに覆いかぶさり、距離を縮めた。

2/4ページ
web拍手