第30話
思ってもみなかった答えにルーは目を大きくさせ目を瞬かせる。
「ローレライは元々オールドラントにいました。また、その地殻といわれる場所に封じられていた。その呪縛を打ち払いあの地から解放したのはルー、あなたであると聞いています。」
「え、あ、う、うん…」
「解放されたローレライは音譜帯へとかえることができ、自由の身となりました。その後、ローレライはあなたをこの世界に送ったんです。それからですよ、よく姿を見せるようになったのは」
「そ、うなのか???」
それはローレライが解放されて自由の身になったからなのかなとルーは首を傾げていると、ユーリは僅かに呆れの含んだ声で捕捉する。
「…ルーを送ったはいいが、心配でちょくちょく様子を見に来てるっつーことか。」
「そう考えてよいと思います。…ただ、やはり精霊とはいえ、世界の行き来はそう容易ではないようですが。」
確かに精霊と呼ばれるものであっても星と星との移動は相当大変だろうと思う。
けど、そこまでしてでもわざわざ来ているというのは、ルーに対しての思いがそこまで強いということなんだろう。
過保護という言葉で済ませてしまえばそれまでだが、どれだけローレライに愛されているかが分かる話だ。
ユーリはルーを見ると、ルーは口を半開きにした状態でぽかんとしていた。
「じゃ、あ、イオンが俺の事やオールドラントの事を聞いたっていうのは、全部ローレライからか?」
「はい」
そこまで聞いて、ルーの事を心得ているイオンの発言に二人は妙に納得した。
ローレライがどこからどこまで話をしたのかはわからないが、それでもその理由の信憑性は物凄く高い。
「なるほどな。…にしても、ほとんどいなかった精霊をよく信仰できたな。」
いろいろ納得は行くが、そもそもほとんどいなかった精霊を一国の国教クラスで信仰していることに今更ながら驚く。
しかも(失礼だが)あのローレライだということを聞けば益々ユーリはそう思った。
「ローレライは力のある精霊だと、僕は思います。音の属性は、他の属性と密接に関わっているようです。地が躍起するとき、水が流れるとき、風が吹くとき、火が吹き上げるとき…様々な場面で必ず“音”が存在します。このことから他の精霊を凌駕する力を秘めている可能性が高いのです。」
言われてみれば確かにどんな時も音がある。
以前ローレライがユーリ達の前に現れた時、セルシウスが驚愕した様子でローレライを見ていた。もしかしたらセルシウスはあの時感じていたのかもしれない。
「…じゃあ、ルーがこの世界に来たのも、お前らみたいにローレライを信仰している奴らがいたからっつーことか?」
「いえ、ルーをこの世界に送った理由は別にあります。」
「別?」
「はい、それは…」
本題に入ろうとしたその時だった。
ぴくりとイオンが何かに反応し口を閉ざすと扉の方に視線を向ける。
すると突然バンッと大きな音を立て部屋の扉が開かれ、そこにいたのはファブレ家の警備をしていた数人の騎士達の姿。
「…いたぞ」
「え?」
何が?とルーが口を開こうとしたその時、騎士の一人が持っていた剣を抜くと、他の騎士たちも剣を抜いた。
「あいつだ、捕らえろ」
「!!」
騎士は剣でルーを指し、それを合図に多数の騎士たちが部屋の中へと割り込んできた。
ルーは大きく目を見開き驚愕する。
すると即座にルーの前に武器を手にしたユーリとイオンが立ちふさがる。
「!ユーリ、イオン!」
「おいおい、いきなり何なんだよ。こっちは取り込み中だ」
軽い口調とは裏腹に突き刺さんばかりの鋭い視線で牽制するユーリ。
騎士達は僅かに戸惑いを見せたが、先頭にいた騎士の一人が一歩前に出る。
「我々は、“聖なる炎の光に似た、朱毛で短髪の女”を探している。」
騎士の言葉にびくりとルーは反応する。ジェイドが言っていたことと同じだったからだ。
ユーリはルーを隠すように一歩前に出る。
「人違いじゃねえか?こいつは男だ」
「男だとしても他の点は特徴と酷似している。ルーク様ではない…が、ルーク様にそっくりなお前は誰だ。」
「そ、それは…」
たじろぐルーに、騎士達は剣を構え引く気はないと臨戦態勢に入る。
ユーリも武器を抜刀する。
「誰が渡すかよ」
「あなた方にルーは渡せません、下がってください」
ぴしゃりと言い切ったイオンに数名の騎士が互いの顔を見合わせるが、先頭の騎士は首を軽く振る。
「導師イオン、あなたの指示でもそれは受けることは出来ません。その者はこれからのライマの繁栄に必要なのです。…それでも、渡せないというのであれば」
剣を構え直す騎士に、ユーリとイオンも構えた。
一触即発という空気が漂う、その時だった。
「昂龍礫破!!」
「!!!」
途端地面が隆起し岩石を噴出させながら騎士達が空中に打ち上げられる。
そしてそのまま地面に叩き付けられるように騎士達は落下し、その衝撃に耐えられなかった者たちは気を失う。
ルーはバッと扉の奥の方を見ると、そこにいたのはシンクだった。
「一撃でこれって、ちょっと弱すぎじゃない?」
「シンク!」
「うう…くそ…っ」
なんとか意識のあった騎士は僅かによろつきながら体を起こす。
その様子を見てシンクは笑みを見せ、騎士に近づく。
「さあ、どうしようか?もう一発いっとく?それとも…」
かちゃりと音を立てながら騎士の頭に銃が当てられる。
「私の弾丸でも受けてみるか?」
「!!!」
そこにいたのは銃使いのリグレットで、ルーは目を見開く。
リグレットは冷たい目で引き金をゆっくりと引く。
それに騎士は死への恐怖に体が固まる。
前を見ればユーリとイオン、背後と横にはシンクとリグレットに囲まれた状態に弱々しく降参した。
「本当、あっけないね。もう少し教育しておいた方がいいんじゃない?」
シンクは嫌味全開で後ろにいるアッシュに問うと、アッシュは転がっている騎士に近づき仮面をとる。
その顔を見るなりアッシュは眉を寄せ舌打ちでもしそうな表情を見せる。
「…こいつらはここの奴らじゃねぇ」
「へぇ、じゃあ侵入されたってこと?結局ダメじゃない?」
「……」
ぐうの音も出ないアッシュは黙り込むが、ルーは呆然と目の前の光景を見ていた。
「ルー、大丈夫か?」
「あ、うん…」
ユーリの問いかけにルーはハッと我に返り頷いているとリグレットはアッシュの方へと歩み寄る。
「奴らが動き始めた。」
リグレットの言葉に皆が反応する。
「!ルークは!?」
「…わからない。城にいるラルゴの合図があったことは確かだ」
ルーは思わず声を上げたが、リグレットは淡々とした様子で答えた。
ラルゴという単語にルーはぴくりと反応する。
やはりこの世界にも六神将のメンバーが存在する
そして、この世界ではルーク達との関係が大分異なることも。
…けど、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
ルーはユーリやアッシュ達を見るなり、皆静かに頷いた。
続く
「ローレライは元々オールドラントにいました。また、その地殻といわれる場所に封じられていた。その呪縛を打ち払いあの地から解放したのはルー、あなたであると聞いています。」
「え、あ、う、うん…」
「解放されたローレライは音譜帯へとかえることができ、自由の身となりました。その後、ローレライはあなたをこの世界に送ったんです。それからですよ、よく姿を見せるようになったのは」
「そ、うなのか???」
それはローレライが解放されて自由の身になったからなのかなとルーは首を傾げていると、ユーリは僅かに呆れの含んだ声で捕捉する。
「…ルーを送ったはいいが、心配でちょくちょく様子を見に来てるっつーことか。」
「そう考えてよいと思います。…ただ、やはり精霊とはいえ、世界の行き来はそう容易ではないようですが。」
確かに精霊と呼ばれるものであっても星と星との移動は相当大変だろうと思う。
けど、そこまでしてでもわざわざ来ているというのは、ルーに対しての思いがそこまで強いということなんだろう。
過保護という言葉で済ませてしまえばそれまでだが、どれだけローレライに愛されているかが分かる話だ。
ユーリはルーを見ると、ルーは口を半開きにした状態でぽかんとしていた。
「じゃ、あ、イオンが俺の事やオールドラントの事を聞いたっていうのは、全部ローレライからか?」
「はい」
そこまで聞いて、ルーの事を心得ているイオンの発言に二人は妙に納得した。
ローレライがどこからどこまで話をしたのかはわからないが、それでもその理由の信憑性は物凄く高い。
「なるほどな。…にしても、ほとんどいなかった精霊をよく信仰できたな。」
いろいろ納得は行くが、そもそもほとんどいなかった精霊を一国の国教クラスで信仰していることに今更ながら驚く。
しかも(失礼だが)あのローレライだということを聞けば益々ユーリはそう思った。
「ローレライは力のある精霊だと、僕は思います。音の属性は、他の属性と密接に関わっているようです。地が躍起するとき、水が流れるとき、風が吹くとき、火が吹き上げるとき…様々な場面で必ず“音”が存在します。このことから他の精霊を凌駕する力を秘めている可能性が高いのです。」
言われてみれば確かにどんな時も音がある。
以前ローレライがユーリ達の前に現れた時、セルシウスが驚愕した様子でローレライを見ていた。もしかしたらセルシウスはあの時感じていたのかもしれない。
「…じゃあ、ルーがこの世界に来たのも、お前らみたいにローレライを信仰している奴らがいたからっつーことか?」
「いえ、ルーをこの世界に送った理由は別にあります。」
「別?」
「はい、それは…」
本題に入ろうとしたその時だった。
ぴくりとイオンが何かに反応し口を閉ざすと扉の方に視線を向ける。
すると突然バンッと大きな音を立て部屋の扉が開かれ、そこにいたのはファブレ家の警備をしていた数人の騎士達の姿。
「…いたぞ」
「え?」
何が?とルーが口を開こうとしたその時、騎士の一人が持っていた剣を抜くと、他の騎士たちも剣を抜いた。
「あいつだ、捕らえろ」
「!!」
騎士は剣でルーを指し、それを合図に多数の騎士たちが部屋の中へと割り込んできた。
ルーは大きく目を見開き驚愕する。
すると即座にルーの前に武器を手にしたユーリとイオンが立ちふさがる。
「!ユーリ、イオン!」
「おいおい、いきなり何なんだよ。こっちは取り込み中だ」
軽い口調とは裏腹に突き刺さんばかりの鋭い視線で牽制するユーリ。
騎士達は僅かに戸惑いを見せたが、先頭にいた騎士の一人が一歩前に出る。
「我々は、“聖なる炎の光に似た、朱毛で短髪の女”を探している。」
騎士の言葉にびくりとルーは反応する。ジェイドが言っていたことと同じだったからだ。
ユーリはルーを隠すように一歩前に出る。
「人違いじゃねえか?こいつは男だ」
「男だとしても他の点は特徴と酷似している。ルーク様ではない…が、ルーク様にそっくりなお前は誰だ。」
「そ、それは…」
たじろぐルーに、騎士達は剣を構え引く気はないと臨戦態勢に入る。
ユーリも武器を抜刀する。
「誰が渡すかよ」
「あなた方にルーは渡せません、下がってください」
ぴしゃりと言い切ったイオンに数名の騎士が互いの顔を見合わせるが、先頭の騎士は首を軽く振る。
「導師イオン、あなたの指示でもそれは受けることは出来ません。その者はこれからのライマの繁栄に必要なのです。…それでも、渡せないというのであれば」
剣を構え直す騎士に、ユーリとイオンも構えた。
一触即発という空気が漂う、その時だった。
「昂龍礫破!!」
「!!!」
途端地面が隆起し岩石を噴出させながら騎士達が空中に打ち上げられる。
そしてそのまま地面に叩き付けられるように騎士達は落下し、その衝撃に耐えられなかった者たちは気を失う。
ルーはバッと扉の奥の方を見ると、そこにいたのはシンクだった。
「一撃でこれって、ちょっと弱すぎじゃない?」
「シンク!」
「うう…くそ…っ」
なんとか意識のあった騎士は僅かによろつきながら体を起こす。
その様子を見てシンクは笑みを見せ、騎士に近づく。
「さあ、どうしようか?もう一発いっとく?それとも…」
かちゃりと音を立てながら騎士の頭に銃が当てられる。
「私の弾丸でも受けてみるか?」
「!!!」
そこにいたのは銃使いのリグレットで、ルーは目を見開く。
リグレットは冷たい目で引き金をゆっくりと引く。
それに騎士は死への恐怖に体が固まる。
前を見ればユーリとイオン、背後と横にはシンクとリグレットに囲まれた状態に弱々しく降参した。
「本当、あっけないね。もう少し教育しておいた方がいいんじゃない?」
シンクは嫌味全開で後ろにいるアッシュに問うと、アッシュは転がっている騎士に近づき仮面をとる。
その顔を見るなりアッシュは眉を寄せ舌打ちでもしそうな表情を見せる。
「…こいつらはここの奴らじゃねぇ」
「へぇ、じゃあ侵入されたってこと?結局ダメじゃない?」
「……」
ぐうの音も出ないアッシュは黙り込むが、ルーは呆然と目の前の光景を見ていた。
「ルー、大丈夫か?」
「あ、うん…」
ユーリの問いかけにルーはハッと我に返り頷いているとリグレットはアッシュの方へと歩み寄る。
「奴らが動き始めた。」
リグレットの言葉に皆が反応する。
「!ルークは!?」
「…わからない。城にいるラルゴの合図があったことは確かだ」
ルーは思わず声を上げたが、リグレットは淡々とした様子で答えた。
ラルゴという単語にルーはぴくりと反応する。
やはりこの世界にも六神将のメンバーが存在する
そして、この世界ではルーク達との関係が大分異なることも。
…けど、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
ルーはユーリやアッシュ達を見るなり、皆静かに頷いた。
続く