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第28話

そこにいたのは、独特な形をしたロッドを持ち、白いローブを身にまとった緑色の髪の少年。

「イオ、ン…?」

無意識に零れた名前に、その少年は優しい笑みを浮かべる。
ルーはただただ呆然と食い入るように見つめていると、少年はルーに近づく。

「はい、イオンです。お待ちしておりました」

そして一礼するなり嬉しそうな笑みを浮かべた。

「お会いできて光栄です。ずっと、あなたにお会いしたかったんです。」
「え?」
「僕はここで日々祈りを捧げています。以前…その祈りを捧げていた時、精霊の力を通して、もう一人の僕の事を、あなたの事を知る機会がありました。あなたが、もう一人の…オールドラントのイオンの恩人で、大切な友人であったことを」

驚きから目を瞬かせ、声の出ないルーにイオンは笑顔を見せる。

「こうして、あなたに会えて嬉しいです。ルーク」

イオンが見せたその笑顔に、以前の名前を呼ばれたその声に、ルーは顔をくしゃりと歪め思わずイオンに抱き着いた。
ボロボロと止めどもなく流れる涙はその白い服を濡らす。

「イオ…っ…ごめ、ん…っ俺…、お前を、守れなかったっ!助けられなかった…っ!」

我儘で無知だった自分に友人だと言ってくれた、寄り添ってくれた。
ガイとは違う、初めての友人だったイオン。
そんな彼にどれだけ助けられたか、支えられたか。
でもその存在を自分は守ることが出来なかった。
己の非力さ故、自分の腕の中で消えていく姿をただ見ていることしか出来なかった。
最後の最期まで自分を信じ、繋げてくれたのに。
肩を震わせながら苦しそうに泣くその体を、イオンは優しく背中を摩りながら語りかける。

「自分を責めないでください。あなたのせいではないんです。」

泣きながら首を振るルーにイオンは目を閉じ優しく諭すように繋ぐ。

「本当ですよ。あなたがいてくれたから、希望を失わずにいられた。自分を自分らしく貫くことが出来たんです。…オールドラントの僕を不幸だと思う人もいるかもしれません。ですが、僕は…あなたの傍にいられたこと、あなたの支えになれたこと、あなたの友になれたこと…例えそれが短い時であったとしても、きっととても幸せだったと思います。」

ぴくりと反応し、そろそろと顔を上げたルーにイオンは誇らしげに微笑む。

「そして、そんなもう一人の僕を…僕は誇りに思います。」

そう力強く言ったイオンに、ルーは堰を切ったように涙を流す。
そんなルーをイオンは受け入れるように抱きしめた。



少しずつルーが落ち着き始めた頃、イオンはルーの背中を摩りながら、自分に視線を送り続けているユーリの方を見る。

「あなたが“ユーリ・ローウェル”さんですか?」
「…何で知ってんだ?」

初対面の人物に言い当てられたユーリは怪訝そうな表情を見せるが、イオンは対照的にふふっと笑みを見せる。

「ルークからあなたの話を聞いたことがあるんです。」
「お坊ちゃんから?」

思ってもみなかったあいての名前が挙がり、ユーリは訝しげる。
一方ルーはルークという単語に反応し、体を起こす。
そんな二人にイオンは嬉しそうな笑みで頷く。

「はい。『長髪の全身真っ黒なやつで、いつもルーにくっついてて邪魔ばっかりするいけ好かない野郎!!』」
「・・・・・。」
「『…けど、まぁまぁ強くて、芯がうぜーくらいぶれなくて、ルーを任せてやってもいいと
思ってる奴』、だと」

最後の言葉にユーリは僅かに目を開き瞬かせる。

「ルークと僕は小さいころからの友人で、よく文通をしているんです。その手紙にはあなた方の事もアドリビトムの仲間の事も沢山書かれていました。直接話しをしたわけではありませんが、それでも文字を通してルークの感情や思っている事、そしてルークが見つけた温かな居場所を知ることが出来、それに僕も勇気づけられました。…世界には、縛られず自由に自分らしく生きることが出来る、そんな場所があるのだと。」

そう話すイオンの表情はとても明るく、嬉しそうな笑みを浮かべていた。
すると、それまで様子を見守っていたアッシュがルーとユーリに近づく。

「…こいつがライマ国の国教最高指導者の導師であり、あいつの協力者だ」

アッシュの紹介を受けたイオンはそれに答えるようにしっかりと頷き、そして改めてルー達の方へ向き合うと手を自らの胸に当てた。

「ルークの大切な仲間であるアドリビトムのあなた方々に、僕たちが協力させていただきます。」











続く



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