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第28話

「………ユーリとルークって、仲良いし、な…って思って…」

思わぬ発言にユーリはポカンとする。
ほぼ常と言っていいほどルーを取り合っている二人はお世辞にも仲が良いとは思えない。
それはユーリだけではなくアッシュも同じ認識で、眉を寄せていた。
だが、今の会話の流れとルーの様子から察するに、これは…。

「なんだ、嫉妬か?」
「っ!?し、嫉妬なんかじゃ…!!!」

ハッとし、かあああっと顔を赤くしながら必死に否定するルーを見て、ユーリは思わず口元がにやける。

「どこをどうとれば俺とあいつが仲良いように見えんのかわかんねぇが、お前が懸念してるようなことにはなんねぇよ。俺にはお前だけだ」

そうはっきりと事実を告げると、ルーは更に顔を赤くし、目を泳がせ口をもにょもにょとさせる。
恥ずかしがりつつも嬉しそうにも見える様子に、ユーリは一層笑みを深め、距離を縮める。

「耳まで真っ赤だな、あんま煽んな」
「っっっ!!?」

キスが出来そうなほどの至近距離でそう告げられたルーはびくぅっと体を震わせ狼狽するが、いつの間に腰に腕が回されていてそれ以上離れられず、それに目を大きく見開く。
その時視線を感じたルーはハッとし、そちらの方を見ると、眉を寄せつつも呆れたような荒んだような顔のアッシュがこちらを見ていて、声にならない悲鳴を上げながら、そのあまりの恥ずかしさに真っ赤な顔で口をパクパクさせる。
そんなルーを見て吹き出し笑いをするユーリが目に入り、ルーは憤慨する。

「~~~ユーリのバカバカっ!!」
「はいはい。本当、お前可愛いな」
「っ!?か、可愛くなんかねぇ!!」

突如いちゃつき始めた二人に、付き合ってられんとアッシュは深くため息をつき、毛布を肩までかけさっさと横になる。
目を閉じ仮眠の体制に入るが、ピクリと眉が動く。

…妙な胸騒ぎがする…。



































次の日、昼を過ぎ夕刻となろうとした頃。
ルー達は途中魔物に遭遇しつつも、順調に足を進めていたのだが、突如森から抜け開けた場所に出る。
そしてその先に突如現れたのは城とは違う大きな建造物で、年季が入っているように見えるが、同時に堂々とした印象を持つ。
その建物を囲う様に大きな塀がそびえ立っていた。

「…ついたな」

そう言いながらもアッシュはなんとも複雑そうな顔を浮かべる。
だが、ルー達は目の前にある建物からの威圧感に圧倒されていた。

「なんかすげーな」
「うん」

感嘆とした声で呟いたユーリにルーも頷く。

3人はその建物へと引かれるように向かう。
すると、突然アッシュがぴたりと足を止め、ルーはそれに首を傾げながらが、アッシュの視線の先を追うとそこは多くの人たちが行きかう大きな門があり、そこには警備している兵士たちの姿があった。

「…あれは違うな」
「え?」
「行くぞ」

そう言うなりスタスタと真正面を突っ切るアッシュに慌てながらついていく。
ここにくるまで常に慎重だっただけにまさか真正面からとは思わなかったのだ。
塀の中に入るとそこはアッシュの服に描かれている紋章やルーのローブを身に着けている人達が大勢いて、以前ルーが訪れたガルバンゾの街とは違った賑わいを見せていた。
アッシュは足を止め、ルー達の方に振り返る。

「ここはライマ領の教団特区。ライマの一部だが国の管轄外地域になる。」
「…つーことは、ここを警備してるあいつらは教団の奴らってことか?」
「そうだ。ここにいる連中は国とか政治などよりも教団の教えが全てだと考えてる奴らが大半を占める。」
「だからクーデターなんかに加担するような奴もいねぇってわけか」
「そういうことだ」

アッシュとユーリの会話を聞いて、ルーは納得した様子で周囲を見る。

そうか…だから…

「ルー?」

どうしたと不思議そうに問いかけてきたユーリに、ルーはなんでもないと首を振った。
すると、アッシュはルー達が圧倒された建物の方を見る。

「行くぞ、あいつの協力者はあの中にいる」
「うん」

ルーは改めて気を引き締めながら大きく頷いた。







大きな建物の中へと足を踏み入れると、目の前には大きなスタンドガラスと左右にある階段が広がり、その天井が吹き抜けている大きなホールに出る。
そしてそのスタンドガラスの前には信者と思われる多くの人たちが手を合わせお祈りをしていた。

「ここで待っていろ」

アッシュはそういうなり、左奥にある小さな扉の方へと向かっていく。
そしてその扉横にいる教団の人間と思われる人物に話しかけ、一言二言話しをすると振り返り、ルー達の方を見るなり目で来いと合図を送る。
それを受けたルー達がアッシュの元へと向かうと扉が開かれると長く続く廊下が現れた。
廊下に窓はなく、あまり人が通ることがないのか、人気のない殺風景な印象を覚える。
無言のまま足を進めるアッシュにルー達も続き、長く続く道をひたすら歩いていくと、突き当たりに複数扉が現れる。
アッシュはその内の一つのドアノブに手を掛け開いた。

そこも天井が吹き抜けている広い部屋で、先程のホールのものよりは小さいが立派なステンドガラスと祭壇のようなものがあった。
ルーは引き寄せられるようにふらりとそれに歩み寄る。
独特で、だがどこか神聖な空気が部屋を支配しているのを感じたルーは、すっと肩の力を抜く。

ここも…。

「…なんか…似てる」

ぽつりと呟かれたルーの言葉に、ユーリは首を傾げ何がだと問いかけようとしたその時だった。
ルー達が入ってきた扉とは別の扉がキィっと音を立て開く。
それに目を向けたルーは目を見開き呼吸を忘れる。

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