短編集
時刻は午後22時。
自室のお風呂場でお湯を沸かしている。
ふと、シャンプーに目を向けると、目視で1mmあるかないか。
「あ~、そうだ。昨日お風呂入ってて、買いに行こうと思ってたのに……」
今から買いに行くのも正直めんどくさい。
ドラッグストアは高専の寮から走って15分くらい。
誰かに貸してもらおうと考えた時、まず同性の野薔薇の顔が浮かんだ。
けれどすぐに、イマジナリー野薔薇の
「ふっ、貸し一つね。そのシャンプー美容室専売品だから」
という声が脳内で再生される。
(……前に野薔薇に貸し作った時、休み一日連れ回されたっけ。やめとこう)
じゃあ異性に切り替えて、虎杖はどうだろうか。
脳内にイマジナリー虎杖を呼び出す。
「お、全然い~よ! でも俺、せっけんで全部洗ってるわ!」
(……酷い偏見だけど、言いそう)
最後に伏黒の顔が浮かぶ。
彼は何て言うだろうか。
脳内にイマジナリー伏黒を呼び出すも、まったくイメージが湧かない。
(……ええい、イチかバチかだ)
自室を出て廊下に出る。
なぜか、その足は恐る恐る、音を立てないようにしていた。
「コンコン」
控えめにノックする。
程なくしてドアが開いた。
お風呂上がりだろうか、少し髪が濡れていて、頬はほんのり上気している。
伏黒は虎杖か野薔薇だと思ったのだろう。
私だと確認すると、目をぱちくりさせた。
「どうした、こんな時間に」
「ごめん。もう寝る前だったよね。
あの……ヘアシャンプー、お借りできないでしょうか……」
伏黒は少し間を置いてから、
「それは、別にいい。…今持ってくる」
そう言って踵を返し、バスルームへ向かった。
(意外にあっさりだったな)
――――――――――
(伏黒視点)
夜にドアを叩く音で、虎杖か野薔薇だと思った。
だから、扉の向こうに立っていたのが彼女だった時、
一瞬だけ、頭の中が空白になる。
虎杖や野薔薇だっていただろうに、こんな時間に、わざわざ俺のところに。
その理由を深く考えるのは、やめた。
考えたところで、余計なことしか浮かばない。
――――――――――
戻ってくると、何か言いたげな伏黒の顔。
私が首を傾げると、伏黒は言った。
「俺は良いけど、他のやつの所行くときは、夜遅い時間はやめとけ」
そう言って、シャンプーを差し出される。
小さく礼を言って、自室に戻る。
シャワーの中、頭で泡立てた瞬間、
さっきまで伏黒の部屋にあった匂いが、ふわりと立ち上った。
(サンダルウッドかな。伏黒らしい、落ち着く香り……)
髪を乾かして布団に潜り込む。
けれど、どうも落ち着かない。
ふわりと香るそれが伏黒のようで、
包み込まれているような感覚がした。
翌日。
私と伏黒から、同じシャンプーの香りがしていることに気づいて、胸の奥が、理由もなく落ち着かなくなる。
自室のお風呂場でお湯を沸かしている。
ふと、シャンプーに目を向けると、目視で1mmあるかないか。
「あ~、そうだ。昨日お風呂入ってて、買いに行こうと思ってたのに……」
今から買いに行くのも正直めんどくさい。
ドラッグストアは高専の寮から走って15分くらい。
誰かに貸してもらおうと考えた時、まず同性の野薔薇の顔が浮かんだ。
けれどすぐに、イマジナリー野薔薇の
「ふっ、貸し一つね。そのシャンプー美容室専売品だから」
という声が脳内で再生される。
(……前に野薔薇に貸し作った時、休み一日連れ回されたっけ。やめとこう)
じゃあ異性に切り替えて、虎杖はどうだろうか。
脳内にイマジナリー虎杖を呼び出す。
「お、全然い~よ! でも俺、せっけんで全部洗ってるわ!」
(……酷い偏見だけど、言いそう)
最後に伏黒の顔が浮かぶ。
彼は何て言うだろうか。
脳内にイマジナリー伏黒を呼び出すも、まったくイメージが湧かない。
(……ええい、イチかバチかだ)
自室を出て廊下に出る。
なぜか、その足は恐る恐る、音を立てないようにしていた。
「コンコン」
控えめにノックする。
程なくしてドアが開いた。
お風呂上がりだろうか、少し髪が濡れていて、頬はほんのり上気している。
伏黒は虎杖か野薔薇だと思ったのだろう。
私だと確認すると、目をぱちくりさせた。
「どうした、こんな時間に」
「ごめん。もう寝る前だったよね。
あの……ヘアシャンプー、お借りできないでしょうか……」
伏黒は少し間を置いてから、
「それは、別にいい。…今持ってくる」
そう言って踵を返し、バスルームへ向かった。
(意外にあっさりだったな)
――――――――――
(伏黒視点)
夜にドアを叩く音で、虎杖か野薔薇だと思った。
だから、扉の向こうに立っていたのが彼女だった時、
一瞬だけ、頭の中が空白になる。
虎杖や野薔薇だっていただろうに、こんな時間に、わざわざ俺のところに。
その理由を深く考えるのは、やめた。
考えたところで、余計なことしか浮かばない。
――――――――――
戻ってくると、何か言いたげな伏黒の顔。
私が首を傾げると、伏黒は言った。
「俺は良いけど、他のやつの所行くときは、夜遅い時間はやめとけ」
そう言って、シャンプーを差し出される。
小さく礼を言って、自室に戻る。
シャワーの中、頭で泡立てた瞬間、
さっきまで伏黒の部屋にあった匂いが、ふわりと立ち上った。
(サンダルウッドかな。伏黒らしい、落ち着く香り……)
髪を乾かして布団に潜り込む。
けれど、どうも落ち着かない。
ふわりと香るそれが伏黒のようで、
包み込まれているような感覚がした。
翌日。
私と伏黒から、同じシャンプーの香りがしていることに気づいて、胸の奥が、理由もなく落ち着かなくなる。
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