眠る膝上、覚めぬ想い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
13-息抜き
高専近くの静かな飲食店。
学生や術師がよく使う店だが、今は夕食には少し早い時間帯で、客はまばらだった。
「ここでいい?」
美鈴がそう聞くと、五条は珍しく即答した。
「うん、ここがいい」
見せつけたいからという理由は口にしない。
向かい合って座ると、五条はサングラスを外し、
テーブルの端に置いた。
その瞬間、教員でも、最強でもない顔に戻る。
「……ふー」
大きく息を吐いて、椅子の背にもたれる。
「やっぱり美鈴と一緒だと、落ち着く」
独り言のような、でも確実に聞こえる声。
「またそんなこと言って」
美鈴はくすっと笑いながら、おしぼりを差し出す。
「はい」
「ありがと」
素直に受け取る。
からかいも芝居もない。
料理が来るまでの間、五条はぼんやりと美鈴を見ていた。
(……本当、何なんだろうね)
心の中でだけ呟く。
高専にいると、誰もが距離を測る。
恐れ、期待、依存、線引き。
でも美鈴だけは違う。
近づきすぎず、離れすぎず。
求めないのに、拒まない。
「今日さ」
箸が届く前に、五条が口を開いた。
「伊地知くんに無理やり仕事押し付けられそうになった時、美鈴が来てくれたでしょ」
「うん」
「あれ、何か嬉しかった」
「…だって先生、声色はいつもの調子でしたけど、
顔が疲れてるように見えて…」
「……誰にもああいう顔、見せたくないんだよね」
美鈴は黙って聞いている。
「弱いとか、疲れたとか、そういうの全部」
一瞬だけ視線を落とし、
「美鈴の前なら、別にいいかなって思える」
料理が運ばれてくる音が、会話を区切った。
「……はい、お待たせしました」
店員が去り、再び静かになる。
美鈴は箸を持ち、少し考えてから言った。
「五条先生は、頑張りすぎですよ」
叱るでもなく、諭すでもなく。
「甘えていい人、ちゃんと選んでるだけだと思います」
五条は一瞬、目を見開いた。
それから――
ふっと、力が抜けたように笑った。
「……それ、ズルいよ」
声が低い。
完全に気を許した時の声。
「そんなこと言われたら、
もう離したくなくなるじゃん」
冗談めかしているのに、
冗談じゃない。
美鈴は気づかないふりをして、スープを一口飲む。
「はいはい。冷めちゃいますよ」
「はいはいじゃないし」
そう言いながらも、五条は嬉しそうに微笑む。
(独占欲、隠す気ないって自覚はあるけど)
(……美鈴が無自覚すぎるんだよなぁ)
視線を逸らしながら、心の中でため息。
でも今はいい。
こうして同じ夕飯を食べて、
同じ時間を過ごしている。
それだけで
五条悟は、少しだけ“最強”を脱いでいられるから。
高専近くの静かな飲食店。
学生や術師がよく使う店だが、今は夕食には少し早い時間帯で、客はまばらだった。
「ここでいい?」
美鈴がそう聞くと、五条は珍しく即答した。
「うん、ここがいい」
見せつけたいからという理由は口にしない。
向かい合って座ると、五条はサングラスを外し、
テーブルの端に置いた。
その瞬間、教員でも、最強でもない顔に戻る。
「……ふー」
大きく息を吐いて、椅子の背にもたれる。
「やっぱり美鈴と一緒だと、落ち着く」
独り言のような、でも確実に聞こえる声。
「またそんなこと言って」
美鈴はくすっと笑いながら、おしぼりを差し出す。
「はい」
「ありがと」
素直に受け取る。
からかいも芝居もない。
料理が来るまでの間、五条はぼんやりと美鈴を見ていた。
(……本当、何なんだろうね)
心の中でだけ呟く。
高専にいると、誰もが距離を測る。
恐れ、期待、依存、線引き。
でも美鈴だけは違う。
近づきすぎず、離れすぎず。
求めないのに、拒まない。
「今日さ」
箸が届く前に、五条が口を開いた。
「伊地知くんに無理やり仕事押し付けられそうになった時、美鈴が来てくれたでしょ」
「うん」
「あれ、何か嬉しかった」
「…だって先生、声色はいつもの調子でしたけど、
顔が疲れてるように見えて…」
「……誰にもああいう顔、見せたくないんだよね」
美鈴は黙って聞いている。
「弱いとか、疲れたとか、そういうの全部」
一瞬だけ視線を落とし、
「美鈴の前なら、別にいいかなって思える」
料理が運ばれてくる音が、会話を区切った。
「……はい、お待たせしました」
店員が去り、再び静かになる。
美鈴は箸を持ち、少し考えてから言った。
「五条先生は、頑張りすぎですよ」
叱るでもなく、諭すでもなく。
「甘えていい人、ちゃんと選んでるだけだと思います」
五条は一瞬、目を見開いた。
それから――
ふっと、力が抜けたように笑った。
「……それ、ズルいよ」
声が低い。
完全に気を許した時の声。
「そんなこと言われたら、
もう離したくなくなるじゃん」
冗談めかしているのに、
冗談じゃない。
美鈴は気づかないふりをして、スープを一口飲む。
「はいはい。冷めちゃいますよ」
「はいはいじゃないし」
そう言いながらも、五条は嬉しそうに微笑む。
(独占欲、隠す気ないって自覚はあるけど)
(……美鈴が無自覚すぎるんだよなぁ)
視線を逸らしながら、心の中でため息。
でも今はいい。
こうして同じ夕飯を食べて、
同じ時間を過ごしている。
それだけで
五条悟は、少しだけ“最強”を脱いでいられるから。
