眠る膝上、覚めぬ想い
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25-漏れる本音
夕方の校舎。
人の気配が引いた廊下は、やけに音が響く。
自販機の前で、五条悟は缶コーヒーを傾けていた。
「……珍しいね、恵から声かけてくるなんて」
サングラス越しに、軽い調子。
「何?相談?愚痴?それとも俺に勝てる算段できた?」
伏黒は答えず、数秒沈黙したまま立っていた。
逃げ道を探すように視線を彷徨わせてから、ようやく口を開く。
「……話が、あります」
その声音がいつもより低く、硬い。
五条は一瞬だけ瞬きをしてから、缶をゴミ箱に放り投げた。
「ふーん。じゃ、聞こっか」
壁にもたれ、腕を組む。
逃げない姿勢。
伏黒は、覚悟を決めたように息を吸った。
「俺は」
一拍。
「美鈴先輩の幸せのために、身を引きました」
その言葉が、廊下に落ちる。
五条は――
すぐには笑わなかった。
「……へえ」
静かな声。
「それ、どういう意味?」
伏黒は、目を逸らさない。
「先輩の中で、あなたがどれだけ大きい存在か……分かりました」
淡々と。
でも、確かに痛みを含んで。
「安心する基準も、判断も、居場所も。
全部、五条先生が基準です」
五条の口元が、わずかに歪む。
「だから?」
「俺が入り込む余地はない」
はっきりと。
「先輩はきっと、無自覚なままでもあなたを選ぶ。
……それなら」
伏黒は、拳を握った。
「俺が踏み込むのは、先輩の幸せじゃない」
沈黙。
風が吹き抜け、遠くで窓が鳴る。
五条は、しばらく何も言わなかった。
そして。
「……優しいね」
ぽつり。
「それ、誰に教わったの?」
伏黒は即答する。
「教わってません」
「だよね」
五条は小さく笑った。
「俺だったらさ」
サングラスを押し上げ、伏黒を真っ直ぐ見る。
「奪える可能性が1%でもあったら、踏み込むけど」
一切の誇張も冗談もない。
「でも、恵は違う」
一歩、近づく。
「“相手の幸せ”を優先した」
伏黒は少しだけ目を伏せる。
「……楽な選択じゃないのは、分かってます」
「だろうね」
五条の声が、低くなる。
「じゃあ一つ、聞いていい?」
伏黒は頷く。
「本当は」
一拍。
「諦めたくなかったでしょ」
伏黒の喉が、わずかに鳴る。
「……はい」
それだけ。
五条は、それを聞いて満足したように笑った。
「そっか」
そして、伏黒の肩に手を置く。
強くはない。
でも、確実に。
「その気持ち、俺が預かる」
伏黒が顔を上げる。
「……は?」
きっぱりと。
「それは、俺の役目だ」
「恵が身を引いた分まで、俺は離さない」
伏黒は、静かに頷いた。
その言葉に、五条は少しだけ目を細める。
「ほんと、厄介な教え子だよ」
軽く頭を撫でて、踵を返す。
「でもさ」
背を向けたまま、付け加えた。
「それでも気持ちが消えなかったら」
一瞬だけ、振り返る。
「その時は、俺を倒してから来な」
伏黒は、小さく息を吐いた。
「……無理ですね」
「でしょ?」
笑い声が遠ざかる。
廊下に残った伏黒は、
胸の奥の痛みを、静かに受け止めた。
——これは、選んだ結果だ。
そして五条悟は、確信していた。
恵がもし踏み込んでいたら、
間違いなく“脅威”になっていた。
だからこそ。
覚悟は、もう迷いなく固まっていた。
夕方の校舎。
人の気配が引いた廊下は、やけに音が響く。
自販機の前で、五条悟は缶コーヒーを傾けていた。
「……珍しいね、恵から声かけてくるなんて」
サングラス越しに、軽い調子。
「何?相談?愚痴?それとも俺に勝てる算段できた?」
伏黒は答えず、数秒沈黙したまま立っていた。
逃げ道を探すように視線を彷徨わせてから、ようやく口を開く。
「……話が、あります」
その声音がいつもより低く、硬い。
五条は一瞬だけ瞬きをしてから、缶をゴミ箱に放り投げた。
「ふーん。じゃ、聞こっか」
壁にもたれ、腕を組む。
逃げない姿勢。
伏黒は、覚悟を決めたように息を吸った。
「俺は」
一拍。
「美鈴先輩の幸せのために、身を引きました」
その言葉が、廊下に落ちる。
五条は――
すぐには笑わなかった。
「……へえ」
静かな声。
「それ、どういう意味?」
伏黒は、目を逸らさない。
「先輩の中で、あなたがどれだけ大きい存在か……分かりました」
淡々と。
でも、確かに痛みを含んで。
「安心する基準も、判断も、居場所も。
全部、五条先生が基準です」
五条の口元が、わずかに歪む。
「だから?」
「俺が入り込む余地はない」
はっきりと。
「先輩はきっと、無自覚なままでもあなたを選ぶ。
……それなら」
伏黒は、拳を握った。
「俺が踏み込むのは、先輩の幸せじゃない」
沈黙。
風が吹き抜け、遠くで窓が鳴る。
五条は、しばらく何も言わなかった。
そして。
「……優しいね」
ぽつり。
「それ、誰に教わったの?」
伏黒は即答する。
「教わってません」
「だよね」
五条は小さく笑った。
「俺だったらさ」
サングラスを押し上げ、伏黒を真っ直ぐ見る。
「奪える可能性が1%でもあったら、踏み込むけど」
一切の誇張も冗談もない。
「でも、恵は違う」
一歩、近づく。
「“相手の幸せ”を優先した」
伏黒は少しだけ目を伏せる。
「……楽な選択じゃないのは、分かってます」
「だろうね」
五条の声が、低くなる。
「じゃあ一つ、聞いていい?」
伏黒は頷く。
「本当は」
一拍。
「諦めたくなかったでしょ」
伏黒の喉が、わずかに鳴る。
「……はい」
それだけ。
五条は、それを聞いて満足したように笑った。
「そっか」
そして、伏黒の肩に手を置く。
強くはない。
でも、確実に。
「その気持ち、俺が預かる」
伏黒が顔を上げる。
「……は?」
きっぱりと。
「それは、俺の役目だ」
「恵が身を引いた分まで、俺は離さない」
伏黒は、静かに頷いた。
その言葉に、五条は少しだけ目を細める。
「ほんと、厄介な教え子だよ」
軽く頭を撫でて、踵を返す。
「でもさ」
背を向けたまま、付け加えた。
「それでも気持ちが消えなかったら」
一瞬だけ、振り返る。
「その時は、俺を倒してから来な」
伏黒は、小さく息を吐いた。
「……無理ですね」
「でしょ?」
笑い声が遠ざかる。
廊下に残った伏黒は、
胸の奥の痛みを、静かに受け止めた。
——これは、選んだ結果だ。
そして五条悟は、確信していた。
恵がもし踏み込んでいたら、
間違いなく“脅威”になっていた。
だからこそ。
覚悟は、もう迷いなく固まっていた。
