眠る膝上、覚めぬ想い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
15-七海の考察
教員室の一角。
机を挟んで、七海建人と鷲尾美鈴が向かい合っていた。
「以上が、本日の任務の詳細です」
美鈴は報告書を差し出しながら、淡々と説明を終える。
七海は書類に目を落としたまま、ペンを走らせていた。
「被害もなし。判断も適切ですね」
そう言って、静かに顔を上げる。
「一級相当の呪霊でしたが、問題なく対処できています」
「ありがとうございます」
美鈴は少しだけ微笑んだ。
短い沈黙。
七海は報告書を整え、机の端に置くと――
ふっと、小さく息をつく。
「……ところで」
美鈴が顔を上げる。
「最近、やけに五条さんと一緒にいる姿を見かけます」
あくまで業務連絡の延長のような口調。
「そうですか?」
「ええ」
七海は眼鏡を押し上げる。
「任務後の食事、移動、休憩時間。
それに――周囲の反応も含めて」
一拍置いて。
「外堀が、随分と埋まってきましたね」
静かな声。
だが、逃げ場のない指摘だった。
美鈴は一瞬だけ瞬きをしてから、少し困ったように笑う。
「……そう、見えますか?」
「見えます」
即答。
「本人が無自覚なのも含めて、です」
美鈴は小さく息を漏らす。
「先生は……放っておくと無茶をするので」
「ええ。知っています」
七海は淡々と頷く。
「ですが今回は、五条さんの方が“放っておかない側”でしょう」
美鈴は、少しだけ考えるように視線を落とす。
「……私、何か迷惑をかけていますか?」
「いいえ」
七海は首を横に振った。
「むしろ逆です」
そして、静かに付け加える。
「五条さんが、あそこまで素を見せる相手は稀です」
ペンを置き、七海は美鈴を見る。
「覚悟があるなら、止めません」
「覚悟……ですか」
「教師であること。
周囲の目。
それらを承知の上で、です」
美鈴は少しだけ考え、いつもの穏やかな笑みを浮かべた。
「……難しいことは、よく分かりません」
七海は目を伏せる。
「でしょうね」
「でも」
美鈴は、柔らかく続けた。
「五条先生が疲れてる時に、隣にいるのは嫌じゃないです」
その言葉に、七海はほんの一瞬だけ口元を緩めた。
「……そうですか」
椅子から立ち上がり、書類を整える。
「では、この件は私の方で処理しておきます」
去り際、ふと思い出したように立ち止まり、
「――ちなみに」
振り返らずに言った。
「五条さんは、外堀どころか本丸を落とす気でいますよ」
美鈴は少し驚いたように目を見開き、
それから、くすっと笑った。
「……相変わらず、先生らしいですね」
七海は何も言わず、静かに教員室を後にした。
残された美鈴は、
胸の奥に小さなざわめきを感じながら、
ゆっくりと息を整えた。
――外堀が埋まっているのなら。
あとは、いつ気づくか、だけなのだろう。
教員室の一角。
机を挟んで、七海建人と鷲尾美鈴が向かい合っていた。
「以上が、本日の任務の詳細です」
美鈴は報告書を差し出しながら、淡々と説明を終える。
七海は書類に目を落としたまま、ペンを走らせていた。
「被害もなし。判断も適切ですね」
そう言って、静かに顔を上げる。
「一級相当の呪霊でしたが、問題なく対処できています」
「ありがとうございます」
美鈴は少しだけ微笑んだ。
短い沈黙。
七海は報告書を整え、机の端に置くと――
ふっと、小さく息をつく。
「……ところで」
美鈴が顔を上げる。
「最近、やけに五条さんと一緒にいる姿を見かけます」
あくまで業務連絡の延長のような口調。
「そうですか?」
「ええ」
七海は眼鏡を押し上げる。
「任務後の食事、移動、休憩時間。
それに――周囲の反応も含めて」
一拍置いて。
「外堀が、随分と埋まってきましたね」
静かな声。
だが、逃げ場のない指摘だった。
美鈴は一瞬だけ瞬きをしてから、少し困ったように笑う。
「……そう、見えますか?」
「見えます」
即答。
「本人が無自覚なのも含めて、です」
美鈴は小さく息を漏らす。
「先生は……放っておくと無茶をするので」
「ええ。知っています」
七海は淡々と頷く。
「ですが今回は、五条さんの方が“放っておかない側”でしょう」
美鈴は、少しだけ考えるように視線を落とす。
「……私、何か迷惑をかけていますか?」
「いいえ」
七海は首を横に振った。
「むしろ逆です」
そして、静かに付け加える。
「五条さんが、あそこまで素を見せる相手は稀です」
ペンを置き、七海は美鈴を見る。
「覚悟があるなら、止めません」
「覚悟……ですか」
「教師であること。
周囲の目。
それらを承知の上で、です」
美鈴は少しだけ考え、いつもの穏やかな笑みを浮かべた。
「……難しいことは、よく分かりません」
七海は目を伏せる。
「でしょうね」
「でも」
美鈴は、柔らかく続けた。
「五条先生が疲れてる時に、隣にいるのは嫌じゃないです」
その言葉に、七海はほんの一瞬だけ口元を緩めた。
「……そうですか」
椅子から立ち上がり、書類を整える。
「では、この件は私の方で処理しておきます」
去り際、ふと思い出したように立ち止まり、
「――ちなみに」
振り返らずに言った。
「五条さんは、外堀どころか本丸を落とす気でいますよ」
美鈴は少し驚いたように目を見開き、
それから、くすっと笑った。
「……相変わらず、先生らしいですね」
七海は何も言わず、静かに教員室を後にした。
残された美鈴は、
胸の奥に小さなざわめきを感じながら、
ゆっくりと息を整えた。
――外堀が埋まっているのなら。
あとは、いつ気づくか、だけなのだろう。
