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命を預けるもの


~~~〜〜

[side/カーバンクル]



「…やぁ。来たよ」

『…なんだ。とうとう我を倒しに来たか?』

「違うよ…今のボクじゃ、まだキミには適わないのは分かってるでしょうに…ただ会いに来てみただけ」

『ふむ…ならば手土産の1つでも持ってくれば良いものを』

「…自分からお土産要求するってどうなの…」

『ケチくさいのぅ…』

「供物を捧げよーってか?
ボクはキミの庇護が欲しい訳じゃないし。

…ただボクは、


【その時】になったら、
《全力で》戦って欲しいだけだよ」



『…我の全力が見たい、とは…酔狂なことよ…』

「自分の力で手に入れなきゃ、意味が無いんだよ」

『冒険者とやらの考えることはさっぱり解らん』

「分からない?じゃあやっぱりボクらは相容れない存在なのかな?」

『馬鹿を言え。お前が特殊なのだろうが』

「バレてら。…ふふっ」

『…何が可笑しい。…言っておくが、
我はお前達以外にヒトと交流するつもりは無いぞ』

「知ってる」

『我が討伐されたとしても、
我が認めて力を貸すのは…「ねぇ、」



「もう手遅れだよね」



『…………』

「…まぁいいよ。
ちゃんと戦ってくれるなら問題ないから」

『……』

「ボクは、キミを越えなくちゃいけないから」

『…』

「これはキミに会いに来る為の建前。
ちゃんと持ってきてやったんだから感謝してよね」

『…む?』


「…長居はしないでおくよ。
じゃあね雷竜。

…情に流されないでよね?」



『…』

『…酒?』

『…土産、あったのだな…』

『……』

『…美味い。』



ーーーもう手遅れだよね

『…そうだな……手遅れ…か…』

ーーーボクは、キミを越えなくちゃいけないから

『…竜の子と、並び立つ為…だろう?』

ーーー情に流されないでよね?

『…分かっている。お前の望むようにしてやろう』


…あの小さき者が、


『…全てが終わったら、酒でも一緒に呑もうじゃないか』


…我を越える時が、楽しみだ。



【星詠みの願い事】




(その時は、文句を言いつつ付き合ってくれるのだろう?)





~~~〜〜

[side/シグ]


「……」

『…』

「……」

『…おい、』

「……」

『ちょっといい加減に我を無視するのはやめようか?!』

「うるさい…静かにしろ…」

『えぇ…、ぁ、あのー…我が“何”かは…分かってる?』

「昼寝の邪魔する変な竜」

『変とか言うな!我は氷竜!
氷嵐の支配s「昼寝の邪魔」 ア、ハイ。』

「……」

『…』

「……」

『…じゃなくてだな!!!』

「ふぁ…、…もう何なんだよ…」

『氷竜だよ!“竜”!ドラゴン!!
なんで隣で寝ちゃってんの?!』

「先に寝てたのは僕で、お前が後から来たんじゃん」

『そうだけども!』

「じゃあ譲れよ」

『いやいや無防備すぎん?!』

「えー、だって…


お前、絶対攻撃してこないじゃん」


『ぅぐ。』

「今の僕じゃお前には絶対勝てない。
無防備だと思うなら攻撃しないのか?
毎回昼寝の邪魔だけして勝手に帰ってくお前は『変』以外の何物でもない。はい論破」

『うぐぐ…正論だ…正論だけどな…
こっちにも事情があるんだよ…
もう言っちゃうぞ?言っちゃうからな?よし言うぞ!

いいかよく聞け!!我はお前の』



「…すー…」


『寝るなーーーー!!!!』

「んー… …なんだよー…」

『こっちが何なんだよ!!
なんで我の話聞いてくれないの?!』

「聞く義理は無い」

『ある!!だから我は…』

「…ぁ、」




『うん?この辺りにいるのは珍しい…』

「…赤竜…」



『…通りかかっただけのようだな』

「…今日は竜をよく見かけるなぁ…」


『……』

「で、何?」

『…ぇ、』

「目、覚めちゃったから聞いてやるってことだよ。何?」

『あ、あぁ…、……。』



『……なんでもない…』



「は?」

『我は…帰る。…じゃあな…』


「…なんだアイツ。」



~~~


『……』

“あれ”の、あの腕は…赤竜殿の…


『…通りかかっただけ、ではない、な…』

見に来た、のか。我と、同じく、


『我と、同じ…か…』


ーーー今日は竜をよく見かけるなぁ…


…言って、しまったら、


『…あんなふうに、
敵意を向けられるのだろうか…』


空を睨みつける左目の紅に、

赤竜の影を見た。



【竜の子は竜殺しの夢を見る】



(そして、我を見やる右目の蒼に
確かに我の血を感じたのだ)




~~~〜〜

[side/アミティ]



「…あ、」

『あら…珍しいわね…』

「…今の…氷竜さん?」

『そうね。…どうしたの?』

「ん…なんか…、…哀しそう…だった…」

『判るの?』

「うん。氷竜さんには何回か会ったことあるから…」

『ぇ、何それ聞いたこと無いんだけど』


「え?」

『え?』


「…氷竜さん、会ったこと、あるよ?」

『う、うん。今聞いたわよ?いや聞いてなかったわよ。うん、ちょっと待って、』

「ら、ラミアさん落ち着いて…?」


『いや待って、うん、ちょっと…
そういやアイツロリコンとかいう噂もあったような…最近は1人の少年にご執心とかなんとかていうかこの子に会いに来て何の意味が?そういえばあの少年はこの子と…ということは少年繋がりで会ったことがあるということで…』


「…ラミアさん、考え込んじゃった」

『…(?)』

「あ、ヘビさん、ラミアさん今忙しいって。こっちおいで」

『…(♪)』

「ねぇヘビさん、なんで氷竜さんは哀しそうだったのかな」

『…(?)』

「シグの所にいたのかな?
…ケンカしちゃったのかな…
……それとも何かあったのかな、」

『…(??)』

「…うん、ごめんね。あたしもわかんないや…
…元気になったら、また会えるよね?」

『!(♪)』

「うん!ありがとうね!」




『なるほど把握したわ!!』

「ふぇっ!びっくりした…どうしたのラミアさん」

『つまり氷竜は“お舅”ってことね!』

「おしゅーと…?」

『“お姑さん”の♂バージョンのことよ。
というかそれよりも、まものに不用心に近づいちゃダメじゃない』

「お姉ちゃんで慣れちゃってて…ってそれはラミアさんが言っちゃダメな気が…」

『私はよいのです』



「『 ……… 」 』



「…よいので『よいのです』



「………そ、そうなの、です?」

『なのです』


「…は、ハイ…」

『…だって、』



私は絶対に貴女の味方だもの




「…?ラミアさん?」

『…ねぇ…今、幸せ?』


幼かった頃の貴女の
記録と記憶を全て消して、


「…うん!」



…貴女の居るべき場所に、


届けて、良かった



【蛇に攫われた巫子】



(貴女に嫌われてしまったとしても
その答えだけで、私は満足なの)





~~~〜〜

[side/アルル]


「…謎だなぁ…」

『…。』

「うーん…なんだろう…」

『…。』

「…ね。謎なんだよ?」

『…。』

「…聞いてる?」

『…どうシタ、の、?』

「だから……謎なんだよぅ…


…君の行動が。」


『…ワタシ、は、オカシイこと、してない、』

「いやいや……じゃあ何でボクはお花に埋もれてるのかな…?」

『ミダシ、なみ、』

「身だしなみ?!」

『コのあト、かいおう、に、アウ、でショう?
ミダシなみ、ちゃんト、シナいと、』

「…えっと…」

『…。』

「…つまりこのお花は…蟲獣キミなりのおしゃれ…ってこと…?」

『…。』

「…会うでしょう…って…
ボク、このあとは帰るだけだけど…」

『…。』

「……。


…… “海王” ?」


海王ケトスを倒した事と、関係あるの?


『…。』

「…謎だなぁ…」

『…。』


~~~

『……デきた…!』

「…ん、寝ちゃってた……できた?」

『やりトゲた、カンぺきに、カわいイ、』

「ありがと… …でも…ちょっといい?」

『?』

「コレ、立てないよね?」






『…ナンてこト…
イドウのこト、かんゼンニ、わスレていタ…』

「うぅ…ん……勿体無いけど…足元と膝の上の、どかしてもいい…?」

『…ウゥ、しカタなイ、…』



「…ねぇ蟲獣さん…君はボクの事、知ってるのかな?」

『カオウ…でショう?』

華王アルルーナとは…またちょっと違うけど…」

『…?』

「うーん…まぁ、魔物ってことは分かってるんだね、うん。
どうしてボクを着飾ろうとするの?」

『おう、ニは、キカザる、ギム、』

「義務?」

『イゲン、』

「あぁ、そういうことね」


『…デきた。さア、いきナさイ、』

「あ、花かんむり…」

『もウ、いかナけれバ、』

「え?あ!もうこんな時間…帰らなくちゃ」

『…』

「お花、ありがと。
またね?蟲獣さん」

『…、』


『マ 、 タ … ね、』


ワタシのミトめタ、モリのヒメは

サイこウに、かワいいノでス



【華姫の嫁入り】


(もりト、うみノ、はしワタし)






~~~〜〜

[side/シェゾ]


「…平和だなぁ」

『…』

「…少し前まで、ここで死闘を繰り広げていたのにな」

『…』

「まさかお前とこんな風に穏やかに過ごせるとは思わなかったよ…

なぁ、ケトス」


『……

我は、予感していたぞ…』


「なんだ。起きてたのか」

『…動くな…くすぐったい…』

「あぁすまんすまん…
いやー、ひんやりして良い枕だなぁ〜」

『…海王を捕まえて…枕呼ばわりするのは…
世界広しと言えども…汝だけだろうな…』

「黙って枕になってくれる優しい海王様が居るから仕方ないよな」

『…汝以外に…こんなこと許す訳が無かろう…』

「そうなのか?」

『…そうなのだ…』

「…何でこんなに好かれてるんだろうなぁ…」

『…自らを下した強き者に…従うのは道理であろう…?』

「それは皆の力があってこそだが…」



『…今後…我の力を扱うのは…汝であろう…』

「…?」


『…』

「……、」


~~~

ーーー出来たぞ。

ーーー海王ケトスの素材から作成した、

ーーー『禁制砲剣』…

~~~


「…… “ 富嶽ふがく ” の事…か?」

『…我の力は…気に入らぬのか…?』

「あ?…何でそうなる?」

『…今…身に付けて…おらぬだろう…』

「え?…あぁ…まぁ、高いからなぁ…」

『…“高い”、』

「あれだけ凄い砲剣だからな。
作り上げた職人には、それなりの対価を支払わないといけないだろう?」

『…そういうことか…


……煩わしい…』


「…ん、なんか落ち込んでる?」

『…我の力は…既に汝という…強者の力の、一部に…なっていると…』

「…それ、そんなに嬉しい事なのか?」

『…我にとっては、な……それに…この考えを持つ者は…それなりに居ると思うぞ…』

「一度倒されるのに、か?」

『…明確な“死”の無い…我ら特有の考えかも…しれぬ、な…』


「…そういうもんか」

『…』

「…なぁケトス、」

『…』



「“ 富嶽おまえ ” と一緒に戦うの、

俺も楽しみだよ」

『…。


…なるべく早く、手に入れるのだぞ…』



我の力が

汝の歩む道を照らす

光にならんことを



【海王と共に】


(歓びの時は、すぐそこに)

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