13.引きかえに、守りたいもの
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「どうも。」
「……しつこいですね。」
ヒナは心底うんざりしているような目で依頼人を見ると、男はそんなこと気にも留めないようにヒナに近づいた。
「どうしてもうちへの入社の件、考えて頂きたいものですから。」
「他を当たって下さい。」
「うーん、つれないねぇ。」
相変わらずのつれない態度のヒナに男はニッと不適な笑みを浮かべると、
去っていく佐奈の後姿を見ながら一本のUSBメモリーを取り出した。
「可愛らしい方ですよね、さっきの…橘佐奈さん…ですか。」
「………?」
「朝比奈さん、彼女の今日の下着の色、知ってます?」
男のその一言と手に持ったUSBで全てを理解したヒナは、堪えきれない程の怒りに満ちた目で男を睨み付けた。
「………佐奈は…関係ない……!!!!」
「機械のようなあなたがこれほど心を傾けているんだ、関係ない事は無いでしょう。」
男の言葉一つ一つでヒナの表情からはあっという間に余裕が消えていった。
そして男は追い打ちをかけるようにニッと笑い、ある提案を持ちかけた。
「あなたがうちに来てくださればこのUSBの中身は私が責任をもって誰の目にもつかぬよう保管致しましょう。ですが来てくださらないならば……お分かりですよね?」
「……。」
「勿論このUSBはコピーですのでお渡しします。偽物かどうか…ご自分の目で確認されて下さい。」
男はそう言って持っていたUSBをヒナに手渡すと、呆然と立ち尽くしていたヒナに耳打ちをした。
「インターネットの怖さはあなたが一番よく知っているはずだ…この中身が流出したりでもすれば彼女の人生、台無しになりますよ?」
「……!!」
「ではよい返事、期待しております。」
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ー………ザザザ……
『すみません、立ち入った事まで聞いて…でも、迷惑に思われてないって分かっただけでも十分です…!!』
「………。」
ー…ザザザ…
真っ暗な部屋の中、パソコンに映し出されたのは紛れもない昨日自分と電話していた佐奈の姿。
そして、自分が直接聞くことのなかった佐奈の本音だった。
『良かったぁ…嫌われてなかった…!!!!』
『ヒナさん…大好きです…。』
「…………!!!!!!!」
ー…ガシャーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ー…バキッ…ガシャン!!!ガンッ…ガンッ…ガシャン!!!!!
「な…何!?ヒナ…どうしたの!??」
夜も更け静まり返った事務所の中で突如聞こえた破壊音に、残って作業をしていた九条は驚きヒナの部屋に駆け込んだ。
「…ヒナ?ヒナ!!!!!!!」
部屋に飛び込んだ九条はパソコンの画面とUSBを執拗に壊し続けていたヒナを止めに入った。
素手で機械を壊し続けたせいでヒナの手は血で真っ赤に染まり、その様子と表情からはいつもの冷静なヒナの姿はどこにも見当たらなかった。
「ヒナ落ち着いて…何があったの…!?」
「九…条…さん…。」
九条の姿を見て我に返ったヒナは、力が抜けたようにその場に顔を押さえて崩れ落ちた。
「ヒナ…?」
「九条さん…お願いがあります…。」
「え…?」