12.偽物恋愛トラッパー
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ー…ガチャ
『ヒナさん、お茶お持ちしました。』
「ん、ああ…ありがと…。」
孝之助への報告を終えたヒナは再び部屋にこもり、パソコン関連の中断していた仕事の続きを片づけていた。
最近はずっとデスクで仕事をしていたのに、集中するためか今日は一日部屋に籠って作業をしていたヒナ。そんなヒナを佐奈は寂しそうにじっと見た。
『…今日はずっとこっちで作業するんですか…?』
「…何で?」
『昨日もずっとヒナさんいなかったので…何か…寂しなあと…思いまして…あ、でも忙しいなら…いいんですが……。』
言葉を濁らせながら俯く佐奈に、ヒナは手招きをして佐奈を呼び寄せた。
「こっち来て。」
『え?あ、はい…え、えっ??』
ヒナは驚く佐奈をひょいと持ち上げ膝に乗せると、そのままぎゅっと佐奈を抱きしめた。
『…ヒナさん…?』
「あったかい。」
そう言って佐奈に抱き着くヒナが何だかどうしようもなく可愛く見え、佐奈はヒナに少しいじけたように尋ねた。
『ヒナさん…昨日楽しかったですか?』
「…さっきの話聞いてた?」
『聞いてましたけど…可愛い女の子とデートしたんだから楽しかったのかな~とか…。』
佐奈がそう言ってヒナを見ると、ヒナは笑って佐奈のほっぺたをむにっとつまんだ。
「楽しくない、全く。」
『いたいれす…ヒナひゃん…。』
ほっぺたをひっぱられ眉を下げた佐奈にヒナは少し微笑むと、どちらからともなく唇を重ねた。
熱を帯びた温かい手、唇。
そのどれもが心地よくて、愛しくて。
込み上げてくる想いに胸がいっぱいになる。
『ヒナさん…』
「…ん?」
『私…ヒナさんの事…好…』
ー…バッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
『……え?』
ヒナへの想いを告げようと佐奈がヒナの首筋に触れた瞬間、佐奈はヒナの手によって突き離されていた。
「…ごめん…。」
『…え……あ、いえ…』
状況がよく分からず呆然とする佐奈に、ヒナは背を向け立ち上がった。
「仕事の続きするから…。」
『そ…そうですよね、お邪魔してすみませんでした…!!』
ー…バタン
『…。』
ヒナの部屋を出た佐奈は、心臓の嫌な動悸を押さえその場に立ちつくしていた。
(今のって…………拒絶…された…?)
付き合おうとも好きだとも言われたことは無かったけど、嫌われてはいないかなぁなんて思ってた。
そのうち付き合えるのかなぁなんて…思ったりもしてた。
でも、さっきの拒絶はもしかして…私が告白しようとしたから?
本気になられるのは…困るって思ったから…?
ー…ガシャーン!!!!!!
「二度と来るなこのクソババア!!!!!!!!」
応接室から響き渡る孝之助の罵声に、皮肉たっぷりの依頼人の声がこだまする。
そんな声さえ今の佐奈の耳には、少しも届いていなかった。
【12】偽物恋愛トラッパー -END-
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