12.偽物恋愛トラッパー
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ー…チッ…チッ…
『…もう八時…。』
ぐらぐらと重い頭を抱え早数時間。
仕事をとうに終えた佐奈はヒナの帰りを待ち、事務所で時計とにらめっこしていた。
ー…ガチャ
「…お前まだいたのか!?」
『…和泉さん。』
「ったく…何も食ってねえんだろ?ほら、これやるよ。」
そう言うと、和泉は持っていたコンビニの袋からプリンを数個取り出した。
一度帰宅したかに思われた和泉だったが、事務所に点く灯りが気になり舞い戻って来ていたのだった。
『あ…りがとうございます…でもこれ…和泉さんのお気に入りのやつじゃ…。』
「いーんだよ、俺コンビニ3軒分買い占めて来たから。」
『あはは、それは買いすぎですよ…!!』
和泉の言葉に少し佐奈は笑顔を取り戻し、和泉にもらったプリンを口に運んだ。
『おいしい…。』
「だろ?俺が散々食べまくって決定した歴代1位プリンだから…な…」
ー…ポタ…ポタッ…
『…ひっく…うっ……おいひいです…!!』
「…バカ………泣くくらいなら何で笑って送り出したりすんだよ…。」
『だって…仕事ですもん…それに私…何の関係もないし…!!』
佐奈はプリンを口に頬張りながらポロポロと涙を流していた。
それはヒナを思うあまりの涙。
堰を切ったように流れる涙をか細い手でぬぐい続ける佐奈に、和泉は思わず手を伸ばした。
『…い…和泉さん…?』
「…お前の気持ち…俺も嫌ってほど分かるよ…。」
『…え…?』
ー…プルルルルルル
二人の空気を割るように鳴り響いた事務所の電話に、佐奈はハッと我に返った。
『和泉さん!!電話…仕事かも…!!』
「……そんなのほっとけよ。」
和泉はそう言うと、佐奈を抱きしめる手にぐっと力を込めた。
和泉が首筋に口付けると佐奈の体はびくっと反応し、佐奈はそれにまた顔を赤らめた。
『和泉さん…離し…』
「…嫌だ。ほっとけって言ってんだろ。」
『…!!』
だが、鳴り止まない呼び出し音がどうしても気になった佐奈は、その場で和泉を振り切り強引に立ち上がった。
『ほ…ほっとけってそんな訳にはいきませんっ!!』
ー…ゴンッ!!!!!!!!!!
『はいっ、南在探偵事務所ですっ!!』
『え?あ、はい、はいっ…分かりました!!』
「…。」
電話口から聞こえる声に嬉しそうに返事をする佐奈。
佐奈の顔を見れば、その電話の相手がヒナであることは容易に見てとれた。
『分かりました!じゃあヒナさんが戻るまで電話番しておきますから心配しないで下さい!!じゃあ…またあとで…!!』
ー…ガチャン
『和泉さん、ヒナさん今戻ってるみたいです!!……あれ…和泉…さん…?』
佐奈が電話を終え振り返った先には和泉の姿はなかった。
その代わりにもう二つ、和泉のお気に入りのプリンが置かれていた。
『ヒナさんと食べろって…事かな…?』
"…お前の気持ち…俺も嫌ってほど分かるよ…"
(さっきのはどういう意味なんだろう。)
回された腕のぬくもりがまだ背中に残っているようで、佐奈は赤くなる頬をぎゅっとつねった。